岳行ノート
土倉岳  1049m/東近江市

2007.10.28(日)6:00江南発
         晴れ  13℃
往路:3時間35分 (小休止含)
復路:3時間30分  


T字尾根に散乱する秋


 渇望という名の吐息‥振り返れば3月3日の鍋尻山以来、鈴鹿を歩いていません。ヒル出没便りも無くなり、8ケ月振りに鈴鹿に向かいます。

 心地よい二次林、岩や笹を分ける道、踏み跡を辿れば爽快な展望。そんな心に染み込む山行を求め、未踏の土倉岳(ハゼクラタケ)をT字尾根で周回します。



 教科書は、西内正弘著中日新聞社刊「地図で歩く鈴鹿の山」です。参考書は「pekeの山歩き日記」さんにお世話になりました。
駐車場周辺図



ノタノ坂

鉄塔
L193〜194

土倉岳

ランチ(御池岳

918mピーク

下山口




※黄線は林道
※色線は実測ではありません。
■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」





 八風街道から御池川沿いを走ります。君ケ畑の集落から3kmほど進むと林道左に駐車地がありました。

 滋賀、京都ナンバー車がすでに停車中です。マイカーにロックを掛け、キーをベストのポケットに入れ出発します。
(8:45)
 


 林道は足慣らしにいい距離です。ノタノ坂までの道はヒルのエリア。午後から20度以上の予報で午前にこちらのコースをとりました。

 15分も歩けば右手に‥

 盛り沢山の道標が、川へ誘導しています。(9:00)

 そして鉄橋を渡ると一気に山道です。



 終始、沢の右岸を登ります。道は湿っていていかにも‥という感じですが、おヒル休みで彼らはいません。

 やがて沢から離れ、薄暗い急斜面を喘いで登りきると‥

鮮やかな場面転換、ノタノ坂です。当然一息入れます。
秋陽に汗ばんだシャツを脱ぎ、ベストを着なおしました。
そして尾根をかわす左の巻き道を行きます。
(9:30)
 

 やがて好展望の鉄塔L193に着き、また休憩です。東方面に藤原岳天狗岩が見えます。そして写真左には、目指す奥の平です。
(9:50)

 ここで道なりに東へ降りてしまい、慌てて戻りました。鉄塔から直角に北へ降ります。4分で鉄塔L194天狗堂が東にかっこいい。
 


 やがて地形図の942mピーク避け、左へ巻きます。


 尾根を登り鉄塔L197への分岐を左折。イワカガミの尾根でやっと快適な斜度です。
 



 分岐から20分で頂に着き、少し左に歩きます。土倉岳山頂は、切り開かれスゲが点在しています。展望は望めません。ランチはまだ。
(11:20)

頂上から少し降ると大展望地、視野に広がる秋色のパノラマにため息が出ます。
迫り来る御池岳の仰角が大きい。周りの錦秋は言い尽くせません、撮りつくせません。
(11:30)
 



 踏み跡は薄くなり、御池の壁が立ちはだかります。強情な急斜面が30分も続くので何度も直談判しましたが、らちが明きません。

 やっと激斜度から開放され、石灰岩が彫刻のように立ち並ぶ平坦地に出ました。
(12:10)

 しかしこの台地は広大過ぎて、まばたきしても方向感覚が失われそうです。適当に笹原を横切り、下降地点がある向うの丘へ向かいます。

 ここで展望ランチを楽しみます。
ボタンブチには、賑わう大勢の登山者が見えました。
天気良し、紅葉良し、気分良しの素晴らしい秋の一日。
(12:20)〜(13:05)


 白い紐が下降地点を示しています。落ちていく感じで膨れた腹に気合を入れ突っ込む。

 右も左も天井も極上のパラダイスですが、それどころでないひよこさん。踏み跡は薄くヌル道です。
 必死で降りていき、方向をMr.ガーミンに確かめると違う尾根で×。『ごめん、ごめん』少し登り返し事なきを得ます。それ以後、確認作業を怠りないよう務めました。ここの降りは真正の尾根がわかりにくく、逆周りで周回した方が、よいかもしれません。いずれにしろ地形図、コンパスは必携で山慣れた人と同行しましょう。

 



 967mピークは、少し登ると左に巻くルートがあります。頂点まで這いつくばる厳しい道です。
(14:10)



 やがて樹の窓から紅葉袴をはいた御池岳の深く落ち込む崖が見えます。

 05年春、夕日のテラスで「鈴鹿の山風」さんにお会いしたとき、このT字尾根を『いい所ですよ』と教えていただき念願叶いました。
 



 その時、抱いたイメージで尾根は広々したなだらかものと思っていました。実際は痩せ尾根、アップダウンと変化に富みます。
 




 しかし広い森のような所もあり、ブナが立ち並びとてもいい感じです。













 やっとT字の接合部の918mピークです。赤テープのマークで左折します。
(15:00)

 右植林、左ブナ林で分けられた楽勝の尾根道を行けば、878mピークです。右カーブに合わせます。
(15:30)

どっこい、最後の尾根降りは植林地で、切り落とされた枝で道が見えません。
夕暮れに向かう速さは秋仕様、17時が日没で残り1時間半です。
ここでススキの中を強引に進みましたが、道は左端にありました。
 フラフラで下山すると向う側に君ケ畑営林署の看板がたってます。(16:20)

 ここで私が、ベストのポケットに入れたキーを捜すとありません。総毛立つ。JAFを呼ぶには携帯は圏外。

 再度リュック、全身を探ってみましたが、やはりありません。落とした場所はベストを脱いだノタノ坂か?ひよこさんガックリ。
 
窓ガラスを割ればひよこさんの予備キーがありますが‥。気落ちして駐車地へ歩きます。
今の車は、インテリジェントキーでイモビライザーの防盗性もあります。
失くしたキーの再作製費は5万円、ガラスは数万円はするでしょう。

『素晴らしい紅葉狩り山行も締めがこれでは‥トホホ』
駐車地に着くと私の車が一台だけ残っています。
(16:35)

身体のどこかにキーがあれば、ドアノブのボタンを触れば開くのですが‥
奇跡を期待してバックドアのボタンに指を当て‥『ピー』とは鳴りません。
『あ〜あ』  運転席側に回って‥


見るとサイドミラーにガゼット袋が、堅く縛られています。道路の反対側で人に見られない配慮。
『え〜』二人で顔を見合わせ、触るとキーの感触がします。
開けると『山の道でひろいました 京都山野山』とのメモが添えられていました。

この前、京都で見た千手観音を思い出し叫びました。
『この人は観音様だ!』 ひよこさんも『涙が出るね』と感激しています。
感謝の気持ちを伝えたくて帰宅してネットで調べたのですがわかりません。

ご存知の方がみえましたら、ご教示いただければ幸いです。
11/6(火)夜遅く突然驚きのメールが届きました。

私が、14時50分頃、駐車地に下りてまもなく、4〜5人のグループの方が
下りてきて、車のキーのリモコンを操作し、「これだ!」と叫びました。
何の事かと思ったら、山で車のキーを拾ったとの事でした。その人たちは、
ノタノ坂から土倉岳の往復だったそうです。
 
確か、日産の小牧ナンバーの車ですよね。 キーを拾った人は、
「車の持ち主は、予備のキーを持っているだろうから、キーを車の中に入れて
閉めこもうか」とおっしゃっていたので、私が、「予備のキーを持っていないと
困るので、見えない方の窓にでもぶら下げておいたらどうですか」
アドバイスしました。すると女性の方が、袋を出して、メモを書いて入れて
おられました。そうは、言ったものの、盗難に遭ったらどうしようなんて、
ちょっと心配でしたが、無事で良かったです。

車のキーを拾った人の写真を添付ファイルでお送りします。
車の前に立っているラグビー服の方です。
私も、山レポをホームページにアップしています。よかったら、見てください。
山レポの最後に、同じ写真があります。
 
イチマル:山のアルバム http://www.geocities.jp/senjiyu/


即、感謝メールを送らせて頂きました。


東海岳行
       犬山祭 秋の車山揃え     

 『元ちゃん、おはよう〜』と手子(テコ)さんが、8時前に迎えにきました。小学一年生の元ちゃんは、犬山祭車山(ヤマ)で太鼓を叩くのです。一週間前から練習してきました。絹に金糸で刺繍された金襦袢を着てお兄さんの肩車で車山蔵に向かいます。

 車山は、三層になっていて下山に元ちゃんは乗り込む。前と後ろに4人づつ中を向いて座ります。下の写真のように背中に作り物を背負う凝った金襦袢もあり、可愛い孫のためおじいちゃんが数百万円かけたようです。

 お囃子隊の笛は若衆、太鼓は小学生の受け持ちです。曳き、回し、からくり用など数曲を覚えなくてはなりません。各々の町内から出発した13台の車山は、犬山城針鋼神社前広場で勢ぞろい。

 12時から順番にからくりを奉納します。出し物は15分くらいでからくり人形は、中山に入った人が紐と刺し金で操作するのです。この紐は人形を傷めないために絹製ですが何と1m数千円もします。

 『あれ?子供たちの太鼓の音が聞こえないぞ』見ると元ちゃん達1年生は、待ちくたびれて睡魔に襲われこっくりこっくりしている。『おいおい、寝てるわ』寝顔が愛らしい。お昼時には手子さんが、また元ちゃんを家へ連れ帰ります。そして午後番の子供をまた連れて戻る。
(右写真:車山の天井)

 夜6時になると365個の提灯にロウソクを灯し、車山に下げていきます。全車山に灯が灯ると照明が消され幻想的な雰囲気が格別です。そして順番に車山が各町内へ戻るのは夜7時過ぎから。

 回しのとき提灯が大きく揺れ、左下の写真のように燃えることもあります。これも一丁数千円しますが、本体に類焼させては大変。見張り番は必死で消します。当夜は終わると9時過ぎになり、翌日の打ち上げは、遊び場へ出かけるので子供達は大喜び。こうして伝統行事を引き継いでいきます。

 この秋祭は1998年に開始したのですが、財政難で2005年中止されました。ところが昨年2006年に「犬山祭り車山行事」が、国の重要無形文化財に指定されたのです。

 今年は3年ぶりで10月27日(土)に10台の車山で復活したのですが、雨のためからくりは中止され、夜車山(ヨヤマ)だけ行われました。犬山祭は1635年から始まり、車山は1641年から登場しました。370年の伝統があるわけです。

 春の犬山祭は4月第1土日に行われとても盛大なので未見の方は、是非一度お越しあれ。(因みに愛知県下には100台以上の車山があります)

左)バッテリーでつないだイルミネーションを衣装につけています。
中)本町の車山   右)この太鼓の子は、背中に武者人形を背負っているので相当重いでしょう。

2007.10.30/01:11