岳行ノート

武奈ケ岳 1214m/大津市
2008年11月2日(日)


秋色祭り絶賛開催中!


 琵琶湖西に連なる比良山系の最高峰、武奈ケ岳は登りたい山の一つです。私がグズグズしていると2004年4月登山に便利なロープウェイとリフトが廃止されてしまいました。

 今は北側のガリバー青少年旅行村や東側のイン谷口から登るようです。しかしガイドブックを見ると歩行時間が6時間ほどかかっています。

 リンクいただいている近畿の方々のHPから5時間ルートを探しました。西側の坊村に登山口があり御殿山を辿るコースなら良さそうです。しかしそこは琵琶湖の向こう側‥

 愛知から行くと湖畔を半周廻らなければならない。ガソリンが130円台まで下がってきたので行ってみることにしました。単独です。



 教科書は「山好き的日々@京都北山」さん、「イチマル山のアルバム」さん、「我が道を行く!」さんのサイトです。
駐車場周辺図
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地主神社

明王院

登山口

窯跡鞍部

△御殿山

ワサビ峠

△武奈ケ岳
(ランチ)

△御殿山

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※色線は実測ではありません。

■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)


江南:5時35分発
    10℃/曇り後、薄日ときどき登山者
往路:3時間20分(小休止含)
復路:2時間35分


 
 琵琶湖に空から漏れた朝が輝いています。でも今日は、快晴予報が全天の高雲。あ〜予報官に見せてやりたいこの現実を。

 この言葉、先週も使ったか‥


木之本インターで下り、367号線の鯖街道を走ります。安曇川に架かる坊村の曙橋を渡り、大駐車場に車を停めました。2時間半なら意外と近い(8:20)


曙橋を戻って信号を渡り左折。公衆トイレで右折して集落に入ると高級料理旅館比良山荘です。正面の地主神社を左折します。


行く手の三宝橋を渡ると平安時代に開かれた明王院が全面工事中。そこを抜け石垣の中を進めば‥


杉の大木の間に登山口道標がありました。はるばる愛知から来ました。ではお邪魔します。(8:30)



 最初は、杉林に刻まれたジグザグ道の急登です。これがふくろはぎどころか、ヒラメ筋まで悲鳴を上げます。

 大勢の登山者が、私を抜いて行く。『マイペースでいきましょう』




 広葉樹林に変わると窯跡がある鞍部です。登り出して1時間で、もう足にきてます。等高線の旅は久し振りだからなあ。
(9:25)


 再び急登におののき、やっと解放されました。しばらく行くと正面が冬道、右手が道標のあるトラバース一般道です。
(9:55)

 どんどん盛り上がってきた紅葉の山腹道を回り込み、V字谷の底をゆるく登ります。すると‥
 


おもわずロッキーが拳を高く上げたガッツ・ポーズ‥は、しない。
明と暗、輝く美しさ‥素敵だ。突然、鈴鹿が懐かしくなりました。





 尾根に戻ると小腹が鳴り出します。ちょうど小広場に出たのでメロンパンをかじる。汗がひき寒くてのんびりできません。
(10:20)





 この山名は昔、ブナが多かったからです。優しくなった傾斜、樹林のトンネル、落ち葉を敷き詰めた登山道、そこを抜け‥



 御殿山1,097mです。切り開きからは、稜線の道と目指す山頂が、初めてお目見えしました。ここでも休憩を取りたくて取ります。
(10:40)

 一旦、降るとすぐにワサビ峠という鞍部に着き、また登りです。





 しかし、ここからは壮観な光景。周りの色彩に誘われ、立ち止まってばかり。シャッターを押すたび、陽が射して欲しいと願う。


斜面の色塊がなだれのように見えます。これから歩く道が全部わかる。
高原状のこの辺りには、樹木がほとんどありません。謎だ。
右のピークへ登り、そして若干降登すると山頂です。

 ケルンの丘に来ると鯖街道が、眼下に見えました。800mの高度差です。ここまで来ればもう頂上に着いたようなもの。
(11:25)







 しかし眼前、最後の斜面の直登がきつい、きつい。





 思ってもみなかった岩壁が行く手に立ちはだかっています。キョロキョロすると左にステップが刻まれていました。

山頂手前の右谷を見ると
葉々が、最後の命を燃やしつくすように美しさを競い合っています。
行く秋を武奈ケ岳でおすそ分け


『ついた〜』比良山系の朋主1214m山頂です。
琵琶湖は空に溶け、沖島は宙に浮かんでいるよう。
(11:45)〜(12:25)

 ランチしていると隣の人の話声『ロープウェイがある頃、もっとすごい人で芋を洗うようだった』

その廃止になったロープウェイ駅が、遥か遠くに小さくぼんやり見えます。

と、思っていたらもっと南の蓬莱山びわ湖バレースキー場リフトでした。※イチマルさんご教示感謝11/5

山頂にいる間、登頂する人を見ていると最短コースとなった坊村からが殆どです。
私が、普段登る山よりも若い人が多い‥紅葉デートかな。

下山の準備中『お〜!薄日が差してきた』
それでは、乳酸の溜まった筋肉に一杯の紅葉シャワーを浴びせましょう。


帰路、ケルンの丘から降りて行くと素晴らしい色の競演。
さあ、ヨレヨレのお魚が色彩の海に飛び込むぞ。


 窯跡の鞍部を過ぎ、斜面を降っていきます。ガサゴソ、キーキーと右下から小さな物音が耳に入りました。

 27m下でオス猿が、両手で何かをつまんで口に運ぶ。オスより小さな猿が右に‥嫁?。左に子猿がいます。

 オスは私と顔があっても食べるのを止めません。降りてきた方たちに指差しで教えてあげました。 



 そしてエレガントな旬の秋色にお別れの時が来ました。この先は植林になります。『今日一日ありがとう。お邪魔しました』

 お山に挨拶をし、カチカチの大腿四頭筋で明日へと続く筋肉痛の道を歩む。駐車場でストレッチ&ストレッチ。
(15:00)


東海岳行
  “礼服の処分”      

1.購入者(2007.6.21の道草の続編です)

 今、彼女は三歳の男の子と二人‥貧しかった。

 10年前、両親に勘当され男と夢を追って都会に出たのです。案の定、夢破れ離婚し古里の隣町で細々と暮らしていました。そして数年経ったとき、突然姉から連絡が入り父親が急逝した事を知ります。『ヨウコ、どうしているかな』と彼女のことを気遣っていたそうです。『明日、告別式よ』と電話は切れました。

 彼女は、小さい頃の父親との思い出に涙を流す。式には出席したい。しかし‥礼服が無い。給料は出たばかりだが、服を買えば今月食べていけない。しかしその夜、近くの大型店に行き婦人服売り場で礼服のスーツを現金で購入しました。黒い靴はある。バックは持たなければいい。

 翌日、子供と一緒に式場へ出向きトイレで礼服に着替えました。一般参列者として出席しお焼香したのです。幼子は練習したとおり小さな手を合わせてくれました。驚く身内の視線を一身に感じる。斎場に向かう車を見送り、再び彼女はトイレで着替えました。その後、あの大型店に向かったのです。

 売り場に行き、きちんと畳んだ礼服とレシートを差し出します。『昨夜、身内が危篤になり礼服を用意したけれど回復したのでもう必要なくなりました』と返品を申し出たのです。店員はいぶかった顔をしましたが、中身を確認し返金してくれました。その店で夜の食料品を買い、子供と家へ帰ったのです。

 数日後、姉から電話で『お母さんが、四十九日には孫と一緒に家族として来て欲しいと言ってるよ』と知らせてくれました。彼女は泣きました。しかしその日の‥礼服が無い!



2.販売店

 パートの雨慕さんは、あの時おかしいと思った。

 子供連れの小柄な女性が売り場にきて『身内が危篤になったので、万一の用意で礼服が欲しい』と言いったのです。そして7号の礼服を試着をして購入しました。しかし翌日の午後、その女性が来て『回復したので返品したい』と言うのです。

 雨慕さんは、商品とレシートを受け取りました。マニュアル通り折り畳まれた礼服をある程度確認、レジ係にレシートを渡して代金を彼女に返します。お客が帰ってから『ちょっと変ねえ』と思う。それは礼服に張りがなく、どうも一度着たような感じがしたからです。

 もう一度念入りに確かめると襟の所に化粧がうっすらと付いています。『やられた!』雨慕さんは、慌ててフロアー課長の源五郎さんを呼びました。課長に今までのことを話し『すみません。その時、汚れも見つけられなく返品を断るわけにもいかないので返金しました』と頭を下げます。

 源五郎課長は、汚れの箇所を何度も見て憤懣やるかたない様子です。『クリーニングに出せば、服地の光沢が失われるし‥う〜ん』課長は悔しいそう。雨慕さんも悔しい。『どうしましょう』『う〜ん、3割引で処分するか』そこで雨慕さんは値下げ伝票を発行し、値札に3割引きの価格をゴム印で押しました。

 源五郎課長が『値札に“少々難あり”と注意札を付けておいて』と指示し『あ〜ヤレヤレだなあ』とぼやく。



3.来店者

 7号のサイズは、売れ筋ではないのでなかなか処分できません。たまに『この“難あり”ってどういうことです?』と尋ねるお客さんにわけを話すと購入を止められます。源五郎課長も気にして一か月過ぎたとき『半額処分にしよう』と雨慕さんに再指示を出しました。また伝票を発行し値札を作り直します。

 数日後、二人の女性が売り場に来て年上の人が『実は、この子(妹)に聞いたのですが、一か月前にこちらで礼服を購入し翌日返品したようです。もしまだその礼服があるようでしたら買い戻させていただきたいのですが』『はい、ございます』『本当にご迷惑おかけしました。おいくらでしょうか?』

 
雨慕さんは、心中では正価で売りたいのですが、そういうわけにはいけません。一度、値下げしたものを値を上げて売ることは禁止されています。『一万円でございます』うつむいていたもう一人の女性‥そう返品した当人が顔を上げ不思議な顔をする。お金を受取り、レジ係に渡します。

 姉が、商品とレシートを受け取ると雨慕さんは『ありがとうございました』とマニュアル通りにご挨拶。そしてバックヤードに駆け込み『ぢぐちょ〜』と汚い言葉を叫び地団太踏む。今日はお休みの源五郎課長に明日すぐ伝えなければなりません。

 でも少し時間がたつと落ち着き、これで自分の責任が消えたような気がしました。課長はどんな反応をするのだろう‥と、雨慕さんは小さな余裕ができたのです。
2008.11.3(月)20:30