岳行ノート

八千穂高原・丸山 2330m/長野県佐久穂町
2009年6月14日(日


美しい綾目模様の花びら-アヤメ
(八千穂高原自然園)



 2年前、蓼科でお泊まりしたとき、ホテル近郊の観光案内パンフで八千穂高原を知りました。白樺蓮華ツツジが一緒に写った写真は魅力的で『行きたい!』気持ちにさせます。

 また昨年、その近くのニュウに登ったとき、道迷いをして丸山高見石に寄られませんでした。ならば二つの好奇心を満たす旅を企画しましょう。

 梅雨の時期、雨の中休みを期待して出かけました。最初は右地図の麦草峠から10km東へ降った八千穂高原に向かいます。その後で丸山登山です。



 教科書は、信濃毎日新聞社刊「信州高原トレッキングガイド」、しなのき書房「信州日帰りでゆく山歩き 北信・東信」です。参考書は「八千穂高原」(高原は今)公式HPで咲き具合をチェックしました。
自然園駐車場周辺図
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@八千穂高原自然園
周遊


Aシラカバ群生地
(レイク北線)散策


B八千穂高原花木園
周遊


麦草峠公共駐車場


※色線はGPS計測

■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」



江南:5時50分発 22℃
    曇り、現地は13℃で凍ったお茶は失敗
八穂穂高原自然園周遊:1時間40分(小休止含)
        花木園周遊:0時間30分(小休止含)


 諏訪ICからメルヘン街道を東へ40km走り八千穂高原自然園に到着。出発時は22℃、ここは13℃標高差1500mです。

 営業が4/25〜11/4、入園料は大人300円。この高原には、他にスキー場、キャンプ場、釣湖等の施設が点在しています。
(9:40)



 管理棟でパンフをもらってコース案内を聞き、一番長い「緑の小径」80分コースを行くことにしました。

 入園すると整然と立ち並ぶ白樺が迎えてくれます。右回りで散策しましょう。





 10分ほどで渓流にもみじの滝を見ます。水量が少ないので二股の右の流れがありません。ここから5分ほど緩く登ると‥

ベニバナイチヤクソウ(紅花一薬草)が、直立して迎えてくれました。
名前からもわかるように全草を乾燥させ薬用すれば、脚気や利尿の効能があります。

左)ミヤマキンポゲ:(ウマノアシガタ)江戸時代に蹄鉄が無かった時、馬にぞうりを履かせました。その馬わらじに形がそっくりの花。  中)カラマツソウ:白い糸状は花でなく雄しべ  右)シロバナヘビイチゴ:花後に熟した実はとても美味しい。 

 木道の先には‥

 クリンソウ(九輪草)。群落があちこちにあります。





 やがて溜池の遊亀湖に出ます。ここで行程の半分過ぎました。溶岩のクマ穴に寄り道したら帰りましょう。
(10:35)

 周回の最後にスズランが、白い鈴を吊るしていました。このように葉より下に花が咲けば国産品です。

 右のように上に咲けばドイツスズラン(花木園)で舶来品。
(11:20)


駐車場から500m北へ走り、右折してレイク北線と呼ばれる道路に入ります。右も左も‥
日本一美しい白樺群生地。レンゲツツジが開花している場所にはカメラマンも群れをなす。
白樺の寿命は50〜60年。この地の白樺は昭和30年代に発芽したものが中心‥ということは。

左)アマドコロ             中)白樺レンゲツツジ         右)ベニバナイチヤクソウ

 再び戻り自然園と道を挟んだ花木園に入場しました。(5/1〜10/31:大人200円)入口に現在の開花状況が掲示してあります。花は14種類も咲いているのでデジカメのメモリーはフル稼働。しかし天気が悪くなってきました。“午後から晴れ”の天気予報に期待して、丸山登山口の麦草峠まで10kmほど走ります。
(12:00)〜(12:30)
麦草峠:13時00分着  11℃
      曇り、のち雷そして雹
往路:0時間50分(小休止含)
復路:1時間55分(高見石小屋休憩除く)
麦草峠
公共駐車場
(ランチ)

麦草ヒュッテ

△丸山

高見岩小屋

高見岩

池分岐

白駒池

白駒の奥庭

公共駐車場


※色線はGPS計測

■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」


 麦草峠の駐車場には30台とバス2台。車中でランチをしていると雨が降ってきました。
(13:00)

 団体さんが下山してきます。西方遠く雷鳴が聞こえる。『待とうか』とお昼寝しました。眼が覚めるとポッカリ青空が覗く。出発!
(14:00)



 麦草ヒュッテから草原を登って行きます。振り返えった北の茶臼山には雲が残る。けど南の丸山は雲が散り出しました。
(14:05)

 気温は13℃。ひよこさんはカッパの上着を着ます。これが後で役に立ちました。



 すぐに樹林帯へ突入。傾斜はあるけど15分ほどで緩みます。青空ホールも頭上で広がる。予報の“午後から晴れ”の通りです。

 頂上手前から再び急傾斜、急に空が暗くなりました。後方から雷鳴が聞こえます。戻ると雷と鉢合わせ、進めば急登。


 何とか稜線へ到着。そこの三角点を左に屈曲すれば山頂2330mです。長居はできません。追いかけてくる雷鳴に焦ります。

 高見石小屋へは、まだ20分ほど歩かねばなりません。走りだしたいけど山頂からは岩道の降りです。
(14:50)

稜線の樹林帯で雷をやり過ごしました。(上のルート地図での場所:詳細は道草で)
雷鳴が過ぎ去り高見石小屋へ向って行くと2人、3人と登山者とすれ違います。
ニコッと笑顔を交わし合いました。意味は『お互い無事で良かったね』です。

小屋に着きようやく緊張から解放されました。ホットコーヒーを頼みテラスで飲みます。
単独の方が来られ『白駒池から登る途中、雷が目の前に落ちた。怖くて倒木の下に隠れた』そうです。
やがて雷鳴は止み、小屋から高見石へ登ります。岩の赤丸が道案内です。
(15:20)

『私の視界に遠くの山を下さい』無理ですね。でも眼下に美しい白駒池が、黒駒池に変色していました。
昨年10月眺望した時、紅葉に縁取られた池とは違います。でも今日は見えただけで“良し”です。
高見石から降り、下山は白駒池へ登山道を辿ります。
(15:50)





 小屋からすぐ分岐。往きは、この正面奥からあられに打たれて来ました。水たまりを右へ折れて行くと、意外なことに‥



 傾斜がとても緩やかで、それがほぼ一定なのです。下山路としては超一級道。『ナイスミートソース』と英語でつぶやく。

 偶然、前から外国人の長身メンズ2人とスカートに長靴を履いた女子が登ってきました。『叶恭子かい』と心で突っ込む。


 やがて白駒池に着きました。ナイスな写真を撮ろうと昨夜は意気込んでいましたが、手の打ちようがありません。
(16:30)

 後は、駐車場の麦草峠まで戻るだけと薄暗い樹林を抜けた瞬間‥

『逆転満塁ホームランだ!!!』

ガイドブックには「シャクナゲが生える岩石庭園風の木道」と地図にさらっと書かれているだけです。
だから余計感動的でした。この白駒の奥庭は、低い灌木の間を縫って歩くので視界は360度だ!
シャクナゲは終わっていますが、雷で落ち込んでいた二人には、気分転換の別世界ウォークです。
(16:45)

この辺りは溶岩台地で土の層がとても薄く、背後の山斜面に比べると木々の高さは低い!
木道のある位置が、ほぼ地面なのです。
10分ほどゆっくり歩き再び樹林に入ります。そして駐車場へ着くと車は2台だけ。気温は10℃!
(17:15)


メルヘン街道をインターへ向かって走ると道は濡れていません。振り返ると山だけに雲がかかっています。
“午後から晴れ”の天気予報は、里では正解だったようです。山の天気は別世界だ、猛省。



東海岳行
  “チカ・バラ!”
      





































 登山中の雷を避けるには、朝早く登って午後3時までに下山すると出合う確率は低くなります。またテレビで雷に出合ったときの対処方法を先日見ました。

@建物や車に逃げ込む
A高い木から5m以上離れる
B丸くなってしゃがむ。


 この日の出発は午後1時、ガイドブックでは2時間で白駒池に下山できます。また向かう方向では青空が広がり、山中でも樹林の上で青空ホールが大きくなってきました。



 ところがその後、あっという間に雷が後ろから追いかけるように近づいてきたのです。「雷の進行方向と逆の低地に逃げる」ことが原則ですがそれができません。

 なんとか高見石小屋に逃れたいのですが、雷足は速く雷鳴が次第に大きくなる。樹林に囲まれた山頂に着きますが、一番高い場所にいることは常識的にできません。

 そこから小屋に向かって歩きにくい岩道をしばらく降る。しかし2m幅の登山道両側は、高い木の森の中です。木から5m離れたいのですができません。



 この時、今までと格段に違う雷鳴の大きさで間近に近づいたことを知る。先の登山道が、雷の通り道のように感じた。少し戻って道の大岩に二人で身を寄せる。

 離れた方が正解でしょうが、死なばもろともです。が、恐れていたことが起きる。轟音と同時に斜め左50m先の樹林で高さ3mの枝がチカッっと青白く光った。

 木に落ちて放電したのだ。この時が一番恐ろしかった。歯をくいしばって耐える。やがて雷鳴は登山道の左から右へと移り、次第に遠ざかった。しかしまだ油断はできない。



 突然、大粒の雨が降り出す。急いでリュックからひよこさんにカッパズボンを渡した。私がカッパの上を着ているとバラバラと音がする雨‥驚愕!あられだ。

 登山パンツが濡れ、慌ててカッパズボンを取り出す。立つと怖いので中腰で履く。そうするうちに稲妻は隣の山へ移る。それも見えなくなった頃手袋をはめ、あられの中を小屋へ向かいます。

 あの生きた心地のしなかった時間は、10分もなかったけどひよこさんを怖がらせたこと『本当に‥すまないと思う』

2009.6.16(火)19:50