岳行ノート

日向山 1660m/山梨県北杜市
2009年9月7日(月)


雁ケ原の大明神
(一番高い所に石標が見えます)



 去りゆくナツ 美味しいカツ。いよいよ食欲の秋‥には、ちょっと気が早い。今回の日向山(ヒナタヤマ)は珍しく3ケ月前に決定していました。

 元の勤め先の契約保養施設が山梨県清里にあります。私たちはそのリーゾート地へ行ったことがありません。一度、訪れたいと思い予約しました。

 条件があり休日前は対象外。それで旅行日を日・月とし、どちらか天気の良い日に登ろうと考えたのです。一応、日曜に清里の清泉寮で遊び、月曜は山と決めしました。



 教科書は「四季のトレッキング倶楽部」さんです。参考書は、多くのHPにお世話になりました。

駐車地周辺図
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矢立石登山口P



▲日向山

雁ケ原

分岐

錦滝

矢立石登山口P


 ※赤線はGPS軌跡
※錦滝〜登山口は林道

■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」


清里:午前8時55分発  18℃
   晴れ、時々歓声
往路:1時間35分(小休止含、雁ケ原まで)
復路:1時間50分     [歩行時間:3時間25分]


 嬉しい初めての清里。中央道の小渕沢インターで降り、八ケ岳高原ラインを東へ走ります。3時間ドライブしました。

 東沢大橋の展望地で下ります。北に牛首山2280m、その後ろの赤岳2899mは雲にお隠れです。

 さあランチは、清泉寮でカレー&ソフトクリームを食べましょう。

翌朝、どうですこの上天気!八ケ岳高原大橋東の展望地から見る八ケ岳
左ピークが三ツ頭2364m、右ピークが盟主赤岳2899mで火山活動と侵食作用の峻峰です。
この空で今日の山行は、結果オーライでした。今日は、この八ケ岳日向山から別角度で見るわけです。

 くねくねと上った尾白川林道の舗装が途切れると矢立石登山口。指定の駐車スペースには平日なのに10台近く停車中です。

 「ひなたやま」っていい山名。気温22℃に上がりました。登山口は明快、丸太階段を登り入山します。
(10:20)
 




 ハイキングコースの看板通り、整備された道です。危険な個所は無く、残暑に緑が映える広葉樹林の下、高度を上げます。




 しかし、残暑は汗を呼ぶのでで堪らず一本立てました。タクシーでやってきた中高年三人組に追い越されます。
(10:55)

から10分ほどで富士山展望地に着きます。唐松の樹間から何とか見える程度です。
杉林の下には植物は生え難いけど、唐松の林床は笹が賑やか過ぎます。
「ハイキングコース」の下のプレートは、登山口では“10/0”でした。もう少し汗をかけばいいわけです。




 勾配がなくなると国交省の雨量測候所。雨量観測だけのアメダスです。プレートは“10/9” この先の分岐を右へ‥
(11:45)




 標高差530mを稼いで三等三角点に到着。眺望が無いので分岐に戻ります。少し歩くと砂浜のような白い地面になり‥
(11:50)





木々の間を抜ければ‥







おぉ、ここは空中海岸か?

雁ケ原に飛び出た瞬間、登山者は『すごい』『素晴らしい』と歓声を上げます。







 八が岳ばんざ〜い!

 北へ行くと壮大な光景。歓喜の頂上、大晴れの青を一杯吸い込もう。
裾野には、牧場や高原野菜の農地が広がり、高速道路の車がキラキラ走る。
ホテルの朝食で残したパンを持参しました。ランチしましょう。
(11:55)〜(12:40)

左)トモエシオガマ:唇に似た花を上から見ると右旋回しています。   中)ハナイカリ:4裂の花弁で蜜を分泌し、昆虫を誘う。 右)カワラナデシコ:秋の七草

 花崗岩が風化した白砂の斜面に岩塔群。そこを見事にトラバースしている登山道で下山します。
 実はこの右、つまり山頂南側に富士山展望地があるのですが、うっかり失念しました。



 まるで砂時計のくびれ「蜂の腰」に吸い込まれるようなひよこさん。緑の中を登れば鞍掛山2037mにつながります。


 左手に甲斐駒ケ岳を見て、私たちは鞍部から錦滝へ下山しました。
(12:50)

 南アルプスだけに分布しているコバノコゴメグサ(小葉小米草)。

 葉全体が丸く、葉先やそのへりも丸いコゴメグサの種。

 南アルプスでは2000m以上でないと見られないタカネビランジ

 1600mのこの山で見られるのが不思議。名前も不思議。





 下山の最初は、谷をトラバースする道。楽だと思っていられるのは、ほんのわずか。往きと違いこちらは完全な山道です。





 尾根を約20分間、急降下。根っこ道、ロープ場と続き、慎重に足場を選びます。丸太階段を降りると‥





 大岩の間に架かる鉄梯子。これ、どうやってここへ運んだのでしょうか?
(13:30) 





 鎖のかかるトラバース道が現われ、変化に富み飽きません。すると滝音が下方から聞こえて‥

落差約15mの錦滝。マイナスイオンと滝風を撒き散らしています。
6月初旬には、岩肌に可憐なクモイコザクラなどのお花が一杯になるようです。
沢を少し降れば、東屋が上に見えます。そこへ登れば林道出合です。
(13:40)




 荒れた地道を緩く降りて行きます。すると山頂で見損なった富士山が望めるポイントがありました。山梨に来たら必見ですね。
(14:10)



 仲良くなった蝶がもっと仲良くなろうとしています。『励めよ励め』やがて林道ゲートを越えたら5分で駐車場に着きました。

 停車しているトヨタの大型ワンボックスは岐阜ナンバー。教科書にした「四季のトレッキング倶楽部」さんだと思います。
(14:30)


東海岳行

    “眩しい月”

 私は中学生の時、あるお菓子メーカーの懸賞に応募しました。運よく当選して、賞品の天体望遠鏡が送られてきたのです。それは屈折式で20倍の倍率があり、50pくらいの長さでした。鏡体は、直径5pほどで白色のボール紙製です。早速、窓からワクワクして遠くを見ると景色は逆様。

 翌日、中学校で親友(道草:遭遇の彼)と月や星を覗く約束をします。当時、彼の家の近くで新幹線の高架工事が行われていました。その夜、二人は工事現場に行き誰もいないことを確かめ、橋脚のはしごでコンクリート路に上がります。そこは、まだレールが敷設されてなく二階建の家よりも高い場所で360度の好展望です。

 もちろんそんな冒険は初めてで、しばらくそこではしゃぎ廻りました。それではと望遠鏡での天体観測会を開催します。三脚がないため高架のヘリに置き、月に照準を合わせました。遥かな月は、中々望遠鏡に捉えることができません。明るい光が、さっと目の前を横切る。レンズに月をピタッと止めるのが難しい。




 やりながら高倍率の望遠鏡は、少しづつ動かさなければいけないことに気付きます。すると月球が視野に入りました。眩しいほどの明るさです。その位置を保持するため、自然と腕に力が入ると像が小刻みに揺れます。『お〜クレーターが見える見える!』アポロは、まだ月面に降り立ってない時代でした。

 『替われ替われ』彼も初めて見る立体的な月面に興奮しました。後日、星座表を参考に二人で色々な星を見ます。ところが星は、どれも点にしか見えません。しかし惑星は違います。木星は、小さいのですが丸く見えました。火星は、もっと小さく赤みがかっています。土星は、ちょっと輪が出ている様子まで分かりました。

 そして私は「子供の科学」という雑誌に掲載された反射望遠鏡の自作を夢見るようになったのです。しかし、そんなことが中学生に出来るはずもなく、すぐ挫折して諦めました。天体に魅かれたころ皆既日食、月食、流れ星などを体験したり、七夕に天の川の彦星と織姫を見たこともあります。





 因みに東京では昭和45年以降、天の川は見られなくなりました。空気が汚れたからではなく、空が明るくなったためです。我が街も同様です。今回、清里のお宿にたまたま天体観測ドームがあったので夕食後、ひよこさんと行ってみました。

 ところがドームが故障したので回転できません。望遠鏡は、昨日満月だった月を向いて止まっています。その右手で輝く木星は、縞模様や四つの惑星が見えるそうですが、残念ながら捉えられません。

 60倍の屈折式望遠鏡は賞品のボール紙製と違い、月は明かる過ぎて眼を痛めるのでフィルターをかませなければいけません。10人ほどの泊まり客が、順番に覗きこみます。




 『お〜!』中学生以来、50年振りに月面クレータと再会できました。あの時、賞品の望遠鏡は色収差があり、像はにじんでいたのです。本格的望遠鏡で見る月は大きくとても鮮明で感激します。

 『眼が幸せだ!』覗き口にカメラのレンズを付けて写真を撮ってみました。ひよこさんは、生まれて初めてのクレーターで大喜び。終わって部屋に戻る途中も『すごく良かった』と興奮が冷めません。

 私は『そうか、こんな楽しみ方もあるんだ』と気付きました。どこかに天体観測ができるペンションがあるようです。今度は、子供のころに見た惑星をクリアに見てみたい。





            




2009.9.9/00:10