岳行ノート

大川入山 1908m/長野県阿智村

2009年10月23日(金)


稜線の燃えるコミネカエデ


 先週の南沢山の紅葉があまりにも素晴らしく、ひよこさんが『私も紅葉へ連れてって』とねだっています。紅葉の確実性、歩行時間、距離などを考えました。

 
大川入山に決めたのは、南沢山に近い山域で期待ができます。ここは6年前の夏、二人で治部坂(ジブザカ)高原から登りました。

 次はあららぎスキー場からのルートで辿ってみようと思っていたところです。しかし、私の持っているガイドブックは、そのスキー場からのものがありません。


 そこでヒデさんのブログを見て登山口までの詳しい情報を入手しました。ヒデさん、GPS・軌跡をありがとう。


 教科書は「名古屋近郊の低山ハイキング」さんです。そのほか沢山のHPにもお世話になりました。
駐車場周辺図
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センター前P

雪坊主

登山口

看板分岐

主尾根合流

恩田大川入山
分岐

山頂前ピーク

大川入山

恩田大川入山
分岐

主尾根合流

登山口

センター前P

 ※赤線はGPS軌跡
※青線はスキーリフト

■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」


江南:午前5時55分発  13℃
    晴れ晴れ晴れ、終日爽やか
往路:3時間50分(小休止含)
復路:2時間55分
◆歩行:6時間45分(小休止含)



 園原インターで下り、153号線の寒原峠を右折。あららき高原スキー場を目指し、その大駐車場に置車しました。

 センター左からゲレンデへ進みます。7℃風なし、最高のお天気です。
(8:10)





 第1リフト右の整備用の道を歩きます。6/13支柱から道は雪坊主へ向い、その上方が第2リフト乗り場です。
(15:35)

秋が深まり、まだ誰もいないゲレンデ。
その右尾根は、スキー客が決して見ない光景。まるで私たちを歓迎してくれるようです。
第2リフトの下から5本目(5/9)の支柱手前で道を外れ、左の森へとゲレンデを斜行すると‥





 新しい標柱が登山口を示します。期待は高まるばかりです。
(8:35)




 やがて森林開発公団の看板分岐に出て、右へジグザグと登ります。後はもう1本道です。
(8:40)
笹を分けた道を根性を入れて登ります。
周囲はどんどん盛り上がってきました。
たびたび立ち止まり『すごいなあ』とただ口を開ける二人です。


『ここは柿色が綺麗!』
枝尾根を登りつめると主尾根に合流し、なだらかな広い道です。
(9:20)

登りが3時間コースなので小休止は、いつもより長く取るようにします。
道中『今日、来て良かったなあ』のセリフを何度、口にしたでしょう。






 途中、左の開けた場所から大川入山を見ます。山頂手前にピークがあり、登頂前に一旦降ることが分かりました。


 


 標高が上がると金色のカラマツが主役になります。1700mまで秋色を楽しみ、針葉樹の森の1865m付近で‥




 恩田大川入山1921mとの分岐。右の藪の先にテープがぶら下がっています。大川入山へは左へ曲折し‥
(10:55)


 切ない大降りで100mの高さを失う。最低鞍部で休憩を取り、ドライフルーツで糖分補給しました。
(11:25)

 山頂手前の小ピークを乗り越え、もうひと頑張り。山頂への斜面では、カラマツの枝が東に偏って伸びています。





 好展望になり北に中央アルプス。左端が麦草岳、そこから二つ目のピークが木曾駒ケ岳、写真中央が空木岳です。
 『うわ〜!見て見て見て』
ひよこさんが歓声を上げ、西方の眼下を指差しました。
山のパレットは完全な秋仕様。明るい太陽、目に染む空の色、今日はついています。



 そして山頂1908m。お湯を沸かしてタマゴスープ‥あららコップを忘れた!大丈夫、鍋からでも飲めます。
(12:00)〜(12:50)

 登頂は私たちを含め9名で、あららぎスキー場コースは内3名でした。



 先着の方に聞くと治部坂高原コースの紅葉も華やか。それなら両コースを縦走すれば倍楽しめます。

 南東には、スキー場のある蛇峠山1664m。でも眺望と紅葉の勝負は、紅葉の勝ちで決まり。さあ下山しましょう。

 見慣れた船底型の恵那山2191mが笠型です。その山頂から南南東の尾根がここまで伸びています。

 恩田大川入山1921mを経由し大川入山に至る稜線です。右端には、薄く遠い御嶽山3067m。

 すると後ろから『双眼鏡忘れましたよ』と追いかけてきた方が。私は急いで戻り、登降でふらふらになります。



 稜線を降っていくと太陽が出たり入ったりの天気になりました。日が照ればコミネカエデは、夕焼色です。

 やがて尾根の合流点につき最後の休憩を取りました。
(14:50)



 ひよこさんが落ちたての紅葉を拾う。今日ののような日は『私と一緒になり正解でしょ』と自慢したくなります。

 ささやかな人生の輝き。長い道を時を惜しむように歩きました。首にかけたカメラは、思い出の缶詰です。



 登山口に戻れば、日が随分低くなっています。今日は、ありがとうございました秋山先生。
(15:30)

 気温が18℃に上がった駐車場着
(15:45)


東海岳行

    “救助されたキノコ達”

 山中で可愛いキノコや不思議なキノコを見かけると思わず撮影します。ところがその後が大変、きのこ図鑑を1ページから最終ページまで探しても名前がわからない。『まあ、このあたりだろう』と妥協するか、名前なしで逃げるか‥常に悩みます。



 しかし、嬉しいことに「キノコの達人」大島君に出合ったのです。最近、同窓会があり旧友達と38年振りの再会。その達人である大島君は当時ガリガリでした。しかし、その名前どおり30キロ増量し、思い出がめまいするほど巨漢に変身しています。

 でも変わらないのは人の良さで大変な役目の幹事を引き受けていました。会場の旅館で再会して話をします。私はHPの案内をしていたのですが、彼は見てくれていました。『風越山のキノコは猛毒のドクツルタケ、岩籠山の密集キノコはツキヨタケだよ』

素晴らしい彼こそ達人だ!これでキノコ同定の悩みも消えます。と彼は突拍子もないことを言い始めたのです。『実はおれ、今日ここにいなかったかもしれない』私は『???』何を言ってるのと聞き耳を立てました。



 大島君は関東に住んでいますが、同窓会会場の長野県は実家のある所です。当日、朝4時半に車で家を出て実家にほど近い長野市の旭山(785m)登山口に9時半ごろ着きました。目的は何より最優先のキノコ採り、12年前もその山で採っています。登山道から獣道を登り、探すといいシメジがあちこちに‥

 さわやかな舌触りを想像し笑みがこぼれます。『これだからやめられない』1時間ほどで籠も一杯になったので下山します。目星をつけ降りてみるとやれやれ登山口が不明です。登山道もない。時刻は11時『山頂に行けば登山道がある』と12年前のことを思い出し、木の茂った斜面を登ります。

 頂上に着くと草が伸びた中に薄い踏み跡がありました。ほっとして降るといつか道は消え、登山口が分からない。『やいやい』もう一度振り出しに戻るため山頂を目指し、違う踏み跡で降りてみる。冷や汗が落ち、喉はからから。あんぱん2個とペットボトル1本は持っています。



 やっと‥いやいやダメでした。焦っても登山口は不明のまま。さまようこと2時間、これ以上はもう体力が続かない。同窓会にも間に合わない。見晴しの利く場所まで登ります。とりあえずケイタイで連絡事項を旅館に入れその後、生まれて初めて110番に‥

 警察は、彼の服装や目に入る景色を尋ねます。ヘリで救助に向うというので懸命に伝えました。そして周りの灌木を倒し発見しやすいように努めます。必死だ。それが1時20分、それから2時間後ようやく松本から飛んできた航空隊のヘリ音が聞こえてきました。

 ケイタイでヘリが見えたことを警察に連絡し、その位置を教えます。ちぎれんばかりに手を振って合図すると、やがて頭上でヘリがホバーリング。すざましい羽根風の中からロープにぶら下がった救助隊員が降りてきます。ハーネスをつけてもらい上がる時、採取したキノコ達の持込みはOKがでました。



 25年愛用したストックは、NGなのは止むを得ません。ヘリに搭乗すると、頭の中である心配事が巡ります。県警に行き遭難調書を書かれている時、彼は尋ねました。『あの〜救助費用はおいくらでしょか』『警察の仕事ですから必要ありません』その瞬間、カミさんに怒られないと思ったそうです。

 民間救助隊や民間ヘリが出動していたら有料でした。その後、登山口の車まで送ってもらい同窓会には間に合ったのです。この話を聞き、私は命がけのキノコを見たくなります。ヘリで救助されたキノコ達に逢わせてもらいました。

 これらのホンシメジ、ムラサキシメジ、クリタケなど多くのノコ達は、やがて彼の大きな胃袋へ消えるでしょう。

 『これが一番でっかい』巨大な老菌のホンシメジを巨大な老健の大島君が持つ。


 彼とは来年もまた会おうと約束しました。その時は、美味しいキノコを食べさせてもらえるかな。
2009.10..26/23:45