岳行ノート

猪臥山 1519m/岐阜県高山市

2009年10月28日(水)


優しさに包まれた源流の森


 猪臥山(イノブセヤマ)は、北の小鳥峠から林道を車で上れば10分で山頂に立てます。そのお手軽コース以外に南には周回路があることをレポで知りました。

 ここは紅葉スポットでもあります。しかし、最新の見ごろ情報がありません。そこで直線距離で東に3qほどの宇津江四十八滝の情報を確認しました。

 すると10/22に見ごろになったとのこと。登山日の6日前なのでちょっと遅いかも。でもひょっとすることもあるので山中で紅葉を楽しむため周回路を歩いてみましょう。



 教科書としてリンクいただいている「風花的日常」さんにお世話になりました。

駐車場周辺図
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登山口P

1456m展望地

猪臥山

山の神
(ランチ)

展望台

NTTのANT
(地道の林道)

ガードレール入口

800年ミズナラ

下山口
(車道)

登山口P

 ※赤線はGPS軌跡


■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」


江南:午前6時30分発  11℃
    晴れ後、感動の最終章
往路:2時間55分(以下、小休止含む)
復路:3時間10分
◆所要時間:6時間05分



 飛騨清見インターで下り、飛騨卯の花街道で3kmほど北上。一帯が霧で真っ白でしたが、1分でクリアしたのは驚きました。

 猪臥山トンネル手前の広い駐車場に到着。看板の散策道マップどおり周回路を右回りします。実はこれが大正解でした。
(8:40)





 最初からまずまずの斜度です。5分も歩けば、ツカミはOKで気分は上々です。道標が、しばしば現われ安心できます。

秋晴れ5℃、明るく広がる色の宝庫。
遅いかと案じていましたが、これだけの彩りがあれば十分です。

ところが、このパラダイス空間も20分ほどでしぼみました。
高度があがると落ち葉が増え、ガサゴソ音で熊鈴が不要なくらい。
やはり最盛期には遅かったようです。


 コースのアップダウンは多く、地形図上でも山頂まで7ケ所あります。1456mピークでは、体力温存で15分休憩しました。
(10:50)

 西には雪の少ない白山、東に転じると写真中央、冠雪の乗鞍岳です。その右に下山時に通るアンテナ塔が見えます。





 登山道には色々な幼木。コミネカエデと思いますが、皮のような質感と光沢に魅かれます。カエデの同定も難しい。そして‥



 山頂1519m。青空に浮かぶ地球のてっぺんにいるようです。小鳥峠からの林道の駐車場が北面下に見えます。

 登ってきた方に『紅葉はいかがでした?』尋ねると『何もなかった』とぼやかれました。眺望は四囲に開け‥
(11:35)


北アルプスは、冬に入っています。右から前穂高岳、奥穂高岳、涸沢岳、北穂高岳
左からは笠ケ岳槍ケ岳は、その後ろで見えません)大喰岳、中岳、南岳
この同定は、もちろんカシミールです。

 大勢の声が聞こえたので山頂を発ち100mくらい東に降ります。
山之神の祠前が広く、そこなら二人だけで静かなランチタイム。
ここも展望は抜群です。写真右上は乗鞍岳、眼下には飛騨が一望できます。
(11:40)〜(12:25)



 久しぶりにフライパンでハムを焼き、満足満腹。丁寧に刈られた笹道に感謝して降ります。下山もアップダウンが多い。

 地形図でも往きと同じ7ケ所あります。130m降り、林道を左に見て100mの登り返し。『気合いだ』





 尾根道は好展望。猪臥山トンネルを潜った卯の花街道が、飛騨古川へ向かっています。遥か遠くに長大な飛騨山脈。
 



 枯れ幹に押し合うエノキタケ達。『おいおい、もう少し散らばれよ』野性種は栽培ものとは味も形もかけ離れています。

 でも山の幸の同定は、自信がありません。登山道は、鞍部で林道をかすめました。その下をトンネルが通っています。


 カラマツの枯れ葉が頭に落ちる。『ご同輩も抜け落ちが激しい』登り着いた展望台は北アルプスや古川国府が望めます。
(13:00)

 休憩を多めにとっていると7人のパーティに追い越されました。では再び70m降り、70m登るプラマイ・ゼロ道へ‥




 登るとNTTのアンテナ鉄塔。リンゴを食べる7人パーティに追いつき『お先に』ここから地道の林道を右に進みます。
(13:40)
 5段のガードレールは、2mの積雪でも道がわかるためでしょうか。無限軌道のダンプに追われ‥カメラを向けるとダンプの運転手さんは照れ笑い。
 800mほどキャタピラ跡を踏むと道標があり、再び登山道に戻ります。
(13:55)

 そこは、ブナの大木がある原生林の尾根です。「山頂まで4q」の道標からは左斜面が桧林になります。

 休憩していたらあのパーティに追い抜かれました。『私たち富山から来ました。いい天気で良かったですね』全くです。

 私たちは、再び追いつくことはできませんでした。なぜなら植林から離れると‥

紅葉の森が再び現れます。パラダイスは登りコースだけだと思っていました。
大ミズナラが源流の森の門番です。800歳の親父が急斜面を見下ろす。
陽を求め競って伸びた30m級の高樹が立ち並びます。味わいながらゆっくり歩きましょう。

昨日雨が降ったようで坂は滑りやすくひよこさんは2回の尻もち
往きは一本道でしたが、下山路は方向転換をいくつかします
落ち葉で道が隠れ、ルートを見極め左カーブして森を降りました。
(14:45)

 谷が左右にあり、そこも高樹が伸びています。笹が背丈より低くなり、見通し爽やかで素晴らしい森です。山旅の終わりに用意されたまさかのエピローグ。

 やがて源流に出合ます。森で疲れが取れ、森でテンションを上げ、森に酔えば『モリピー!』
(15:05)

沢右岸の道は、幅広になりました。
源流の森
に続く「広葉樹育成のモデル林」を通ります。
2次林を整備改善したと看板が教えてくれました。

山に入り、中から見る透過光の紅葉は本当に美しい。自然と触れ合う醍醐味を再認識できます。
私たちもこのルートを歩かなければ、この山の良さを知らずじまいでした。
ふと、この森を秘密にしたい気持ちになります。



 圧倒的な感動を全身に受け彦坂登山口。頂上では展望の勝ちと思っていましたが、今日は紅葉の大逆転です。

 ひよこさんが、先週に続き落ち葉拾いをしたので食卓テーブルが賑やかになりそう。
(15:25)


 最終ページをめくれば日暮れの肌ざわり。日影になった卯の花街道を歩くと、斜度を下げた陽が猪臥山を照らしています。

 左が1456m展望地、その隣、台地状の右2/3辺りが山頂です。充実感と興奮で今夜は眠れないでしょう。
(15:35)


東海岳行

    “雪猿”

 オーストラリアの人たちが白馬に別荘を持ち、あちらが夏のとき日本でスキーを楽しんでいるのをテレビで見ました。また築地市場が、外国人観光客に人気があり入場を制限したとか、思わぬところが外国人に受けるものです。志賀高原に近い地獄谷野猿公苑もその一つです。         (場所→)

 ここは、11年前の長野冬季オリンピックで各国のマスコミが試合の合間に訪れ世界中に紹介されました。雪景色の中で露天風呂に入浴してうっとりしてる「温泉に入るお猿さん」 その写真が、スノーモンキーのタイトルで海外の雑誌表紙や日本紹介のガイドブックに載り一躍有名になったのです。

 私もテレビでその様子を見て行きたくなりました。ちょうど長野市近くで同窓会が開かれ、その帰りに友人たちと立ち寄ります。渋温泉から横湯川右岸のすれ違いもままならない林道を上りました。



 駐車場から右岸を10分ほど上流へ歩き、橋で左岸に移ります。温泉宿の後楽園と天然記念物の噴泉が行く先に見えました。入苑料500円を払うと道にはお猿の糞、糞。

 公苑には、国内外から年間10万人も観光客が訪れます。外国人は、お猿はジャングルにいるイメージがあり、温泉のお猿に大喜びです。ちょうど台湾の方たちがいましたが三脚にデジ一眼で撮影していました。

 入苑すると200匹のお猿が歩道や山腹、河原にいて驚きます。温泉に入るお猿は世界でここだけ。始まりは46年前、一匹の子猿が露天風呂に入った事からです。どこの世界でも子供の好奇心はすごい。

 やがてそれは群れに広がりました。地元が観光の目玉にしようと、餌付けし、お猿専用の風呂が作られます。今では朝、公苑の人が大麦をあちこちにまくとお猿が山から下りて来て夜になると戻るのです。

 彼らは餌に困らないのでふっくらとした体つき。専用風呂は、3m四方の大きさでぬる目です。観光客が餌をやると箕面市のように色々な被害が出ます。ここでは禁止事項なのでお猿は観光客に無関心です。

 温泉に入らないと係員が、大麦を温泉にまきます。強いお猿がそれを独り占め、そのとき入浴した子猿に強烈な威嚇をしました。下段左端の写真に茶色のライブカメラが写っています。3分ごとに更新され「本日」「昨日」分を地獄谷野猿公苑のHPで見ることが可能です。帰宅してから自分の姿を確かめられるので楽しい。



 ここではお猿に近づきカメラを向けても大丈夫。右の抱き合う子猿は、微笑ましくて1mの至近距離で撮影しました。下写真の温泉から上がったお猿は、毛がペチャっとしてちょっと情けない。二人の友人も『ここ楽しいなあ』と言い、長時間飽きずに見学しました。

 なお冬は、林道が通行止めになるため、ジャンボタクシーが渋温泉から出ます。まもなくこの公苑に雪が降るでしょう。その時は、ライブカメラで雪猿を見てみたい。
2009.10.31/23:35