岳行ノート

天下峯 360m/愛知県豊田市

2010年2月28日(日)



天下峯から六所山

(集落は豊田市坂上町)

 大きな山だと往復の時間もかかり、山にドップリ浸かるので一杯一杯の一日となります。ところが低山の登降は時間がかからないで余裕があり、寄り道や道草ができます。

 今回の天下峯(テンガミネ)登頂は20分もあれば充分です。しかしガイドブックは「東海の昇仙峡・王滝渓谷」を延々と歩き、登山するルートでどちらがメインかと思うほど。

 低山を楽しむ良いお手本です。でも山梨の昇仙峡は行ったことはありません‥実は私達は、天下峯があることを知らず王滝渓谷を8年前ウォーカーとして周遊しました。


 まだアウトドア入門者の頃で、ハイキングが命がけになるとは‥その思い出の場所にも行ってみたい。ウォ−キング・シューズ・シリーズもこれで連続4回となりました。


 教科書は、風媒社刊「新・こんなに楽しい愛知の130山」です。また風媒社「素晴らしき絶景」も参考にしました。
<駐車場>
[-]広域図、[+]詳細図、ドラッグスクロールで移動




→不動山展望台→バーベキュー場→宮川散策道→ブドウ畑→
天下峯→旅館→歌石園地→龍門橋→P

 ※赤線はGPS軌跡

■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」


江  南:午前9時30分発  9℃
駐車地:午前10時55分着 曇り後晴れ
往路:2時間40分(以下、小休止含)
復路:2時間05分 
◆所要時間:4時間45分

東海環状自動車道の豊田松平インターで下ります。
王滝渓谷の前に近くの二畳ケ滝へ早速、寄り道しました。
巴川支流、郡界川沿いの道路には案内があり、高さ30m・幅7mとなっています。

川に下れば?高さと幅の数字が逆のような気がしますが‥
この滝は、上流に発電所の取水口ができ水量が減りました。
ところが昨夜は本降りで、近寄り難い迫力があり轟音が響いています。



 巴川まで戻り、県道の駐車場に停車しました。朝はまだ雨が残っていましたが、空は前向きに青さを広げる様子です。

 絵地図を見て『出発!』
(11:05)



 巴川の支流、仁王川沿いに進みます。王滝渓谷は長さ1.8km、落差が148mもあり急流です。

 巨岩・奇岩が川に岸にあり、圧倒されても遊歩道がキッチリ。右岸に渡り不動山展望台の道標でリュックをデポし‥
(11:20)

 5分ほどで展望台に着きます。木が茂って展望はよくありません。もう5分、山道を登ると‥

 岩頭から高速道や豊田市街地が望めます。右下は、渓谷の龍門橋近くの妙昌寺です。




 戻ってさらに川沿いを進むと歌石園地。このように東屋・ベンチ・トイレが整備された園地は5ケ所あります。休憩しましょう。
(11:55)

 渓谷には、こんな木橋や‥

 こんな釣り橋が沢山かかっています。

『Oh! スプリング ハズ カム』
春走る川、この椿木園地の梅園は7分咲きです。




 そして治水ダムにかかる90m長のアーチ型王滝湖かけ橋に着きました。急流がここだけは穏やかです。
(12:20)





 バーベキュー場があります。王滝湖園地でベンチでランチ。韻が3つ踏めた!
(12:25)〜(12:50)

 ランチをかたずけ、木橋で左岸に渡って本日のハイライト!
巨岩トンネルと渓谷の激流が間近な宮川散策道に入ります。
上流に向かうと増水で足場は濡れ、ルートも水の中です。『撤退撤退!』




 再び右岸に戻り、安全な遊歩道を歩きます。渓谷の最終点に旅館山荘王滝。車道を登ると駐車場の上にやっと登山道です。
(13:20)





 なだらかな落ち葉の道を歩きます。送電線鉄塔を過ぎ、降っていくと‥

 林道を横切ります。上に出ると‥
(13:30)

 ブドウ畑が広がり、その先から山道です。卯の道(卯は東の意味)と呼ばれています。

 途中、林道に出ますが、道標に従えば少し勾配が増した道。やがて登山道の前に巨岩、前にベンチがあります。

 クライマーを見ました。ここは間違えやすい個所で左にクリアな登り道があります。岩を右へ巻き後ろに回り込む感じです。
(13:50)

 石仏が巨岩の隙間、隙間に祀られこの山は別名弘法山と称されているそうです。疑似木階段を登れば‥

天下峯360m。のどかな里山の展望が楽しい。六所山・炮烙山が正面にあります。
山頂は巨岩が累積し、そこから見る名古屋の高層ビルは遠く霞んでいました。
ここからもうすこし奥まで登ってみましたが、展望はありません。
(14:10)





 下山は階段を降りてから登りと違う道を進みます。道標はありませんが、石仏を辿れば大丈夫です。ジグザグ行くと‥


 石仏は全く途切れず、不思議な岩壁に挟まれます。全部で八十八体も安置されているとのことです。

 ひよこさんの右側は、トンネルになっていて潜っていくと‥




 弘法堂が見えてきました。その先へ進めば、すぐ往きの道に出会います。下山の道は低山とは思えない充実感がありました。
(14:40)

帰路は近道を選んだり、変化をつけて渓谷の対岸を歩いたり‥
そろそろ道端の野草も色を競い合うでしょう。『楽しみ』
(オオイヌノフグリ)
 歌石園地の左岸から梟ケ城址展望台へ行こうとすると‥アクシデント。「お知らせ:散策道工事のため3/25まで通行止め」

 すると外国人のカップルが、降りてきました。『??』日本語が読めないから。


 8年前周回した時、ひよこさんがその展望台で倒れました。夏の低山歩き、後で熱中症だと知ります。今でも大切な教訓です。

駐車場着(16:15)


東海岳行

    “それぞれの記憶”

 この「山たまごの東海岳行」を始めるとき、「道草」のネタとして3つのエピソードを用意していました。「大道草1:キスリングの奇跡」「大道草2:藤原岳の危機一髪」「大道草3:山頂からのレーザー光線」です。大道草2以外は、学生時代の記憶を元に作りました。

 昨秋、同窓会があり宴会を楽しんでいると一人の方が私の前に来られ懐かしそうに話しかけられます。『テレビに出られましたよね』4回生の時、NHKに出演(道草:白い雲の夢)したことをご存知です。『ええ、でもすみません。私はあなたのことを覚えてないんですよ』

 実は、私は1年間休学して4回生で復学しました。その二村君とは1年間だけの同級生でゼミが別のため付合いが殆どありません。彼が『山頂でやったレーザー光線の測定も覚えています』と言われます。ここからのお話は、お手数ですが何とぞ「大道草3:山頂のレーザー光線」をご覧になってからお読み下さい。



 さて以下は彼のお話ですが、私も失われた記憶のピースでパスルを埋めることができました。あの夜、暗闇で山頂の位置を学舎に教えたのは、懐中電灯ではなく手持ち花火でした。またレーザー光線が届いた日は、9月25日〜26日でその夜は満月です。

 教授は、その煌々たる仲秋の名月とレーザー光線のハーモニーを見て『私に俳句の素養があったら詠ってみたい』とつぶやかれました。皆で一夜を明かした山頂の石積みの建物は神社の祠です。翌朝、実施したテストの答案用紙を教授は、添削することもなくその祠に奉納されました。‥その話は傑作です。

 測定に参加した学生は全員合格点。不参加の学生には同じ問題を教室で出し、きちっと添削されました。しかし驚いたことは、11月2日〜3日もう一度測定実験が行われたことです。学舎から20km離れた標高2200mの山に登り、レーザー光線の拡散距離を測ったとのこと。‥それは初耳です。


 

 最初の測定(飯綱山)ではメジャーを忘れたためその精度に難があります。ワンモアと再挑戦ですが、学舎まで距離があり過ぎました。指示を出すトランシーバーの電波が届きません。そこで教授がアンテナ線を山頂で張ると学舎の助教授とつながりました。ただ、電波が飛び過ぎ後日、管理局からお目玉を食らったそうです。

 そして夜になりレーザー光線が山頂に無事届き、教授が『距離を測定して下さい』と指示を出します。ところが何たるチーヤ、サンタルチーヤ。学生は誰もメジャーを用意してなかったのです。ヤレヤレ、またもや歩幅で測定する大雑把な結果となりました。‥最後のオチは大爆笑。

 さて二村君は優等生だったようで現在、電波望遠鏡の仕事をされています。私が『モニターですぐ星雲が見えるですか?』と尋ねると『コンピューターを回し1週間かかる。そのソフトをチェックしています』と教えてくれました。『そのソフト、ヤマダ電機で売っていればいいのにね』と私が言うと周りは失笑。



 同窓会の後日、彼からメールをいただきました。「私達が山頂で測定をした2年前、アポロが月にレーザー反射鏡を設置しました。先生は学舎から発せられたレーザー光線と反射鏡のある月に思いを抱き、俳句のことを言われたのでしょう」

 そして最後に「秋月と 飯綱に達す ルビーレーザー」と俳句が添えられてました。壮大です。

2010.03.01/23:25