岳行ノート

茶臼山・万灯山 291m・146m/愛知県西尾市

2010年6月5日(土)

幸せの緑陰  -万灯山山頂-


 5月15日(土)、右足で「フクラハギの乱」が勃発し、歩けなくなりました。時間が経てば痛みは引きます。少しづつウォーキングの距離を伸ばしリハビリに努めました。

 平地を1時間歩いてもOKになりましたので低山にへ登ってみます。茶臼山(チャウスヤマ)と万灯山(マントウヤマ)は、西三河の高原端に位置して未踏です。

 山裾には矢作川の流れと広がる岡崎平野。登山口の西尾市は「歴史と文化の薫る抹茶の里」「三河の小京都」と称され、登山だけではもったいないほど。



 教科書は、風媒社刊「新こんなに楽しい愛知の130山」です。参考書は「トレッキング愛知」さんにお世話になりました。
 
<茶臼山駐車地>
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無の里

駐車場

平原の滝

分岐

(右×)迷い

▲茶臼山

中継塔

(左×)迷い

展望台

林道出合

駐車場


 ※赤線はGPS軌跡

■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」


江  南:午前6時55分発  19℃
駐車地:午前8時20分着 晴れ
往:1時間00分(以下、小休止含)
復:1時間00分 
◆所要時間:2時間00分



 国道23号線を下り矢作川を渡ります。ここ稲荷山茶園公園の周囲は、お茶畑です。5月から6月にお茶摘みします。

 明治初期、紅樹院住職が宇治から種子を持ち帰り茶園が広がりました。この地では宇治金時は西尾金時と言われます。




 第一山は23号線の須美インター近くです。旧徳山村から移築された民家「無の里」を見学します。(建築は明治6年ころ)

 少し道をバックすると‥



 駐車場です。リュックの中にランチ一式がないのでカスカス‥おっとウォーキングシューズを忘れました。×ひとつ。
(8:30)

 スニーカーでスタートとなりました。『今日は暑くなりそう』右の舗装道を上って行くと茶店があり、さらに‥
 


 川沿いを歩くと5m一筋の大滝。その下に12本の竹の小滝です。この平原の滝で打たれれば難病も治ります。
(8:45)

 『なんびょうほうれんげきょう』間違えては御利益は無いでしょう。フクラハギに滝水を当てたいけど‥

久しぶりに登山用タイツを着用していて、ここで脱ぐわけにはいきません。
滝上にある薬師堂で手を合わせ、左を見ると岩段の登山道があります。
まだ病後なので写真右の不動尊横にある階段の遊歩道で登りましょう。



 植林と思いきや自然林で低山でも瑞々しさを味わえます。豊かな平野があれば林業はしなくても良かったのでしょうか。

 『あれ?』道が急降になったので確かめると薬師堂の方向です。山屋の勘も鈍りました。(上地図の右×地点) 



 そして291m山頂、大岩盤に三等三角点。5cmくらいの巨大ハチクマバチが、それぞれ縄張りを守っています。

 飛んできたチョウが蹴散らされ、そんな争い事にはかかわり合い御免。展望写真を撮ったら先に進みます。
(9:30)





 西には碧南市・西尾市。東に転じると蒲郡市三河港に浮かぶ竹島が望めます。木が伸びたら景色が消えそうです。


 山頂の先にドコモの中継塔があり、展望を期待しましたが×でした。でもランチにいい草地があります。
(9:35)

 良く考えたら一度も休憩していないので小休止しました。それではと‥一旦、山頂へ戻り203展望台へ向かいましょう。
(9:50)
往きは尾根道だったので下山は山腹道を歩きます。
そろそろ尾根道に合流したと思い、降っていくと知らない道。また間違えました。(上地図左×地点)
低山らしく多くの道が、交差しているので注意しなければなりません。

何とか往きに歩いた道に復帰し、着いた展望台は抜群の眺望があります。
正面に八ツ面山67m(ヤツオモテヤマ)、カーブする国道23号線
その動脈に寄りそうデンソー工場。

一面に広がる黄金色は、収穫期を迎えた麦畑‥麦秋の季節です。
梅雨入り前の上機嫌な青空、爽やかな風が汗ばんだ身体に届きます。
そういえば「爽」の字は×が四つもあるけど、さわやかに頑張っている。
(10:25)



 戻って「林道室場線→」の道標から降りると緑の里山道です。300mで林道に出て、右折すれば茶店に出合います。

 その前の広場にも駐車できました。私の駐車場はもう少し下です。
(10:50)

駐車場から車に乗り、400mほど下ると「平原ゲンジボタルの里」があります。
斜面の湿地に木道が二本、縁には散策道があり、なかなか広い場所です。
ホタルの飛翔を見るには『今年は6月中旬、20時過ぎがいいよ』と教えていただきました。


 登り終えフクラハギのご機嫌がいいようなので、もう一山登ることにします。そこでこの近くに住むご隠居に電話しました。『‥というわけで今こちらへ来ていますが、万灯山を一緒に登りませんか。お忙しいですか?』

 『いや、ぜんぜんヒマ!暇すぎて大あくびしたら顎が外れ今、はめていたところじゃ』
 そこでご隠居と西尾の街で落合い、豆腐料理の豆蔵でランチ&コーヒーして万灯山へ向かいました。


<万灯山駐車地>
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駐車場→長円寺→野鳥の森→▲万灯山

最高点→チョウの小径→お墓分岐→駐車場
最高点まで 往:40分(以下、小休止含) 復:25分 ◆所要時間:1時間5分





 西尾市の東部丘陵に向かい長円寺前に車を停めます。二人のご隠居旅は、まず境内を抜け‥
(13:55)





 裏の墓地に出ると、分岐道標がありました。「野鳥の森」で登り、「チョウの小径」で下山しましょう。
(14:00)



 なだらかな道を登れば、先頭を行く半袖のご隠居さんに蚊が群がります。賞味期限間近の血を吸われ必死に掻きむしる。
 
 『ほら』と私に見せた左腕には、1cmほどのなだらかな丘が数個出現していました。




 そんなことにめげず、しばらく歩けば車道に出合います。そこを右折すると、すぐ山頂への道です。
(14:15)


ひと登りの146m三等三角点山頂からは岡崎平野が一望です。
ここの草地では、毎年お盆の8/14午後9時「かぎ万燈」の迎え火が灯されます。
後ろに戦国武士の小塚があり、もう少し奥へ進むと‥
(14:20)














石仏が祀られ、その先の庚申塔は天保の彫字があり180年前のもの?さらに落ち葉の斜面を登った所が最高点で、山頂より10mほど標高が高いと思われます。何もないので山頂へ折り返し、西へ降る道で下山しました。
(14:35)




 すぐ車道に出て、そこを横切り「チョウの小径」道標から山道へ入ります。駐車場までは、ほんの400mほどです。
(15:00)



 ご隠居と別れ、振り返ると保育園の赤い屋根、緑の万灯山、青い空‥再起のW登山が無事終了の運びとなりました。

 よし!頑張ったフクラハギにアイスクリームをプレゼントしよう。


東海岳行
   “小太郎の秘密ノート  

 とりあえず高校受験が済み、志望校に入学すると私は腑抜けになりました。コツコツ勉強する生徒に追い抜かれ、私は周回遅れのランナーです。2年生でそろそろ加速しなければヤバイと思うけど、離された距離は中々詰まりません。中間・期末テストが終わると教科ごとに成績上位10名の氏名・点数が張り出されます。

 私は得意科目ですら掲載されたことがありません。その敷居は高く、90点以上採らないとダメということです。わが組に張り出しが常連の生徒が一人いました。その彼、小太郎は背丈は普通ですが、無口で人付合いは良くありません。痩せた身体に長い顔に黒縁の眼鏡を掛けていました。

 しかし、どの科目も優秀点を採れるのは全校で彼くらいです。その頃、私はクラスで親しい友人が2人いて放課は運動場や廊下で馬鹿話をしていました。でも小太郎は一人、机から離れず教室に残り、いつも教科書を横に置きノートへ鉛筆を走らせています。



 『あれだけガリ勉すればいい点採れるよな』と私達はやっかんでいました。彼ほど頭が良ければ、名古屋の1高校でも行けたのに、どうしてそれなりの高校に来たのか?どうも家から学校が近いというのが理由らしい。2学期になると席替えがあり、私は南の窓際になりました。何と小太郎が前の席です。

 友人たちは、彼が放課にどんな勉強をしているのか私に探れとはやしたてます。それならばと彼の背中を突っつき『消しゴム貸して』とコンタクトしますが、小太郎は無表情に振り向き消しゴムを置くだけです。放課のとき、彼の背中越しにノートを見ようとしますが、覆いかぶさるようにしているので全く見えません。

 ある日、授業の終了ベルが鳴ると私は椅子をガタガタ音を立て、机から離れるフリをしたのです。やがて小太郎はノートを取り出し、いつものように鉛筆を走らせだしました。私は背後で息を殺して待ちます。彼が書くことを止め、ふっと椅子にもたれた瞬間、私はあのノートを奪い脱兎のごとく走り抜けました。



 3mくらい離れたので振り返ると小太郎は諦め顔です。取り戻されないのを確信してノートを開けると文字がびっしりと並んでいます。読んでみよう‥『明美を健也は抱きしめ、○○を○○に○○し‥』想像を絶する内容だったので私はポカ〜ン‥官能小説を高校二年生が書きますか!

 てっきり放課は、勉強していると思っていたのに‥小太郎はこれをいつも書いていたのか。頭のいいやつは何を考えているのか‥付いていけません。『すげーな、お前』とノートを返します。『小説家になるの?』『それはわからない』しかし、テストを90点以上採るには猛勉強しなければならないはずです。

 『じゃ、小太郎はいつ勉強してるんだ?家へ帰ってから?』『家では勉強しない。授業を聞いていればわかる』『ホントにそれだけ?』『ああ』彼の脳味噌は、私のカニ味噌とは違うようです。ちゃんと話をしたのはその時だけ。彼とは2年生に続き、3年生でも一緒のクラスになりました。



 実はあのノートには、他にも書かれていたことがあります。それは小太郎は秘密の癖があり、誰にも知られずクラスにちょっとした衝撃波を起こしていました。それは次の機会にお話しさせていただきます。
 
10.06.07(月)20:35