岳行ノート

観音峰 1347m/奈良県天川村

2010年6月17日(木)

観音峰に麗しのメッチェン “紅花山芍薬”

左:弥山(ミセン)1895m 右:頂仙岳(チョウセンタケ)1717m




 奈良県の大峰山脈には、昨年行者還岳(ギョウジャカエリタケ)1546mで初めて足を踏み入れました。入門2年目には、観音峰(カンノンミネ)1347mを計画します。

 高速を利用すると我が家から200km4時間の距離です。先回と同じ前夜泊しましょう。梅雨時、この山ではベニバナヤマシャクヤクソウが美しい姿で彩ります。

 開花時期を判断するため多くのHPを確認しました。すると黄金に値する梅雨の中休み到来。山で花が咲いていなければ遠路はるばる御苦労さんとなります。

 祈るような気持ちで出発しました。



 教科書は、山と渓谷刊「関西周辺の山250」です。参考書として多数のHPを拝見しました。 
<駐車場>
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観音峰登山口P

観音の水

観音の岩屋

観音平

▲観音峰

▲三ツ塚

法力峠

分岐

母公堂
(タタミ君)

観音峰登山口P

 ※赤線はGPS軌跡
※黄線はタタミ君
■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」


江  南:前日午後6時25分発  27℃
道の駅(吉野路黒滝):前日午後10時00分着  21℃
観音峰登山口P:午前8時20分着 18℃ 晴れのち曇
往:2時間05分(撮影休憩は除く、小休止は含む)
復:2時間35分(タタミ君含む)
◆所要時間:4時間40分

 江南市から道の駅「吉野路黒滝」まで車旅して車中泊しました。翌朝、観音峰登山口Pへ移動して準備が終わるころ‥

 私の遠いナンバープレートを見て感心したご夫婦から『ご一緒しませんか?』とお誘い頂きました。『お願いします』
(8:30)

 吊橋を渡り、振り返って正面の愛車にひと時の別れを告げ‥

 植林斜面をイナズマ型に登れば登山道脇に観音の水。さらに10分ほどで展望台の道標です。寄り道すると南に弥山1895mの眺望があります。(8:40)

 お二人のお話では、昨日登られた方のブログに『1株咲いていた』という情報。『それで充分です』咲いてないより1株でも見られたら嬉しい。



 途中、下山者と立ち話します。『昭和10年生まれだ』と先手を打たれ『花は咲いていましたか?』と尋ねます。

 『10株咲いていたよ』私は小躍りしました。やがて神社跡の休憩所で1本立てます。ご夫婦は和歌山からの花登山です。
(9:30)

休憩所から緑したたる素晴らしい森を登ります。
斜行するとすぐ観音の岩屋への分岐がありました。
お二人は以前行ったことがあり、私だけで100mほど歩くと‥



 観音の岩屋は、しゃがまないと中に入ることはできません。後村上天皇が吉野から落ちのびられ、ここに籠ったそうです。

 戦国時代迄が限界の私には1300年代南北朝時代の話はイメージできません。さて分岐まで戻り独りで登りを続け観音平へ‥
(9:45)



 階段で枯れススキの間から一輪のピンクの花が迎えてくれました。石碑は観音峰展望台と彫られ向こうは前衛峰1285mです。

 ここ観音平1208mで大展望を楽しみ、先着されたご夫婦と散策します。
(10:05)〜(10:40)

東方面、左端で角のような大日山1689mが強烈なアクセントです。隣ピークが稲村ケ岳1726m。
右端が大岩、その左のギザギザがバリガヤの頭1580mですが、まだ知らない山ばかり。

 2cmほどの蕾があります。近々のデビューに向けその愛らしい姿を次第に明らかにすると‥

魅力的な5cmほどのピンクの花。このベニバナヤマシャクヤクは絶滅危惧種。
北海道から九州まで分布していますが、ヤマシャクヤク(白花)よりはるかに少ないのです。
良く見ると雌しべの先、暗紅紫色の柱頭が渦状に巻いています。そこがヤマシャクヤクとの違いです。
 二人静(左)の群生があります。なんとヨーロッパ産のジキタリス(右)があちこちで群生。繁殖力が強く小さな野草が制覇されてしまうのが心配です。石碑に戻ると20人を超える人が群れています。皆さん、ここで展望と花を楽しみ下山されるようです。私は、お二人にご挨拶して山頂を目指します。




 前衛峰に向け登りだすと直登道が結構きつく、乳酸が一気に貯まりました。その後はなだらかな尾根道となり‥
 




 ブナ林を楽しめば植林と雑木林の境目の道となります。一輪草の葉の群落が現れると三等三角点の山頂1347mです。
(11:10)



 そこから法力峠までは曲りくねる尾根歩き。ガイドブックでは、その間3ケ所、支尾根に入らないよう注意しています。

 以前は地元の人でも難しい道筋でした。今、その箇所には道標とテープがあり、道迷いを防いでくれます。



 中間に三ツ塚1380m、観音峰より33m高い。休んでいると観音平で少し話をしたGパンのメッチェンに追い付かれました。

 『私は初心者ですけど二本ストックは楽ですね』と言われたので私も真似します。
(11:45)

いつもはノーストックですが、フクラハギパンク事件の対応でストックは2本持ってきていました。
『なるほど』左右のバランスが取れ、上半身も歩きに参加するので全身運動にもなります。

緑さす道は本当に嬉しい。岩稜帯の登りの前であの若い女性が休憩しています。
山中でメッチェンは珍しくベニバナヤマシャクヤクのように希少です。
この辺りでバイトをしていて今日はオフ。『お先に』と言う間に足は速く年齢の差を見せつけられます。
(12:10)


 法力峠へ降りる直前の道標に着きました。

 右折すると何かバサバサ音がするので太いヒノキに近づくと『オマイガー!』根元からが湧き出しています。

 パニック気味でにドンドン上っています。カメラを近づけると私に羽根蟻が飛びつく。かかわっては面倒です。



 やれやれ、でなくて良かった。左から尾根を降りて来て右の五代松新道で下山します。この峠でランチにしましょう。
(12:50)〜(13:20)


 あとは植林のいい道をスイスイ歩き母公堂分岐を右折。そして下の登山口で待っていたタタミ君のロープキーを解きます。
(14:00) 

すぐ近くの母公堂(ハハコドウ)に行き、タタミ君の記念撮影。
ここは大峯の山々を開山した役の行者(小角)のお母さんが祀られています。
最近までここから先の入山は女人禁制でした。右の石碑に「女人結界」の4文字が彫られています。

 すると堂守のお爺さんから『コーヒーを飲んで行きなされ』と勧められました。なんとメッチェンもコーヒーをご馳走になっています。お話によると建物は100年前に建て替えられました。
左の象が400年前の彫り物として残っています。

メッチェンはこの下の旅館で働いていて5月〜9月は
信者の方が入山のため宿泊され忙しいそうです。
コーヒーとお菓子お礼を述べタタミ君に乗ります。
(14:00)〜(14:30)
 


 帰路は殆ど降り道。タタミ君の小さなタイヤが飛ぶほどのスピードが出ます。旅館街を抜け5kmを15分で駐車場に着きました。
(14:45)

メッチェン:若い女性のことで私が18歳の時、ワンダーフォーゲルに入部して覚えた最初で最後のドイツ語です。
 それはそうと‥我が家ではやっと手に入りました。「辛そうで辛くない少し辛いラー油」売り切れ続出!超人気のご飯のお友、新発想の食べるラー油です。当初スーパーで探しても全然なく諦めて忘れていました。

 通販でお一人様1個限り。刻んだフライドガーリック・フライドオニオンの風味が豊かです。サラダ、冷麺、冷や奴と試しましたが、白いご飯に乗せるのが一番好きです。


東海岳行
   “とよたのハヤブサ  

 最近、毎日のようにハヤブサの記事が新聞に載っています。ハヤブサは7年前の2003年5月9日に打ち上げられた小惑星探査機です。イトカワという小惑星に着陸し地表サンプルを持ち帰るミッションです。その小惑星の資料を分析し太陽系誕生の秘密を解明しようという狙いです。(右は私の作ったハヤカワ

 実際の大きさは、太陽電池パドルの端から端まで5.7mで 510kgあります。イトカワは最長540mで二つの大きな岩の塊がくっついた落花生形です。米国が1998年に発見しました。

 日本初のロケットを開発した故・糸川英夫博士に因んでいます。さてハヤブサは順調な航行とは言えず姿勢制御装置の故障があったり、2年半後イトカワへの着陸が失敗したとき機体を痛めました。



 2回目のタッチダウンに成功後、化学燃料漏れが発生。やがて通信途絶、その3ケ月後奇跡的に通信が復旧した。しかし帰還予定日は遅れ、予想以上の長旅となったハヤブサは、イオンエンジンの寿命が尽き1台だけになります。

 そのように満身創痍ながら7年振りに6月13日オーストラリアの砂漠に無事カプセルは帰還しました。翌日、新聞のトップニュースになったことは皆さんご存知ですね。カプセルは直径約40センチ、重さ約17キロで「ふたをした中華鍋」のような形ですが、6月18日、日本へ里帰りしました。

 その中身の分析は2ケ月以上かかりますが、地球誕生の謎が解き明かされることを期待しましょう。このハヤブサの映画があり、見た人が感涙するほどの内容だそうです。それは「HAYABUSA 〜Back To The Earth〜」というタイトルで、全天周映像のため映写はプラネタリウムで見られます。



 プラネタリウムの施設は、愛知11ケ所、三重4ケ所、岐阜6ケ所、静岡3ケ所あり、その中で上映しているのは豊田市(とよた体験科学館)と浜松市(浜松科学館)でした。前者は43分のロングバージョン編を金土日(300円・駐車3時間無料)の限定上映をしています。

 予約電話をして席を確保しました。6/18(金)18時に行くと160席のうち半分の入りです。最初25万個の満点の星空が投影され映画が始まります。

 小さな地球が次第に大きくなり5m径にもなり、頭上から落ちてきそうです。しかしもっと大きく全天一杯になるとわずかな宇宙空間の暗闇から小さなロケットが出現。



 先端が分離されハヤブサの姿が現れました。とても感動的なシーンから壮大な宇宙物語は始まります。また小惑星イトカワの表面は実にリアルで見事です。

 分かりやすい解説と構成ですが、宇宙に詳しくなくても映像で見せます。映画は2009年4月ハヤブサが地球に向かうところまでの情報を基に作られましたが、その後の大気圏突入と着陸もCGで見せてくれます。それは実際の新聞写真とほとんど変わらないほど正確でした。ハヤブサの頑張りに胸キュンです。

 こう書くと‥いかにも私は、にわか宇宙ファンのように見えますが‥その通りでしてその代表が私ということです。

 
2010.06.20(日)23:25