岳行ノート

双子山 2224m/長野県茅野市

2010年8月1日(日)

マルバダケブキ(丸葉岳蕗)の蕾にアキアカネ




 春山の開花・芽吹き、秋山の錦秋と比較すれば、夏山冬山は暑さ寒さの忍耐と厳しい。先週の貝月山も、沢沿いは良いけれど尾根の日差しには我慢の歩きでした。

 熱中症の心配がない山は無いかと探します。手持ちのガイドブックや雑誌の八ケ岳特集を見ると登山口の標高がいきなり2000m以上のコースがありました。

 北八ツ岳の一番北、涼しく変化があり高山でも短時間で周回できそうです。このお手軽プランなら暑さに弱いひよこさんでも大丈夫でしょう。



 教科書は、信濃毎日新聞社刊「信州高原トレッキングガイド」です。参考書として「Club岳」さん他、多くのHPにお世話になりました。 
<駐車場>
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大河原峠駐車場

双子山

双子池ヒュッテ

雄池・雌池

亀甲池

横岳分岐

コウリンカお花畑

天祥寺原

大河原峠駐車場


 ※赤線はGPS軌跡

■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」


江  南:午前5時45分発  28℃曇り
駐車地:午前9時50分着  20℃晴れ 
往:2時間15分(亀甲池まで以下、小休止含)
復:1時間30分
◆所要時間:3時間45分


 中央自動車道諏訪インターを下り白樺湖を目指します。そこから蓼科ビーナスラインで大河原峠まで登りました。

 標高は2093mもあり大河原ヒュッテ前駐車場は一杯です。ヒュッテの裏に蓼科山登山口がありますが‥




 駐車場横の双子池の道標から登り始めます。雲が多いので午後は低い場所を歩く右回り周回にしました。
(10:05)





 ヒュッテの赤い屋根を眼下に置き去りにして笹わけの道を進みます。笹原ですが陽のあたる登山道には野の花。

左)オトギリソウ[弟切草]    中)ハクサンフウロ[白山風露]花びらの基部に白い軟毛が見えます。  右)ヤマハハコ[山母子]白色のがくに包まれたものが黄色だと雄花、糸のような細いものは雌花です。



 まもなく北八ツ岳で最北の双子山山頂2224m三等三角点です。どこに写っているか探してみて下さい。

 西にお隣の蓼科山2530mが懐かしい。真直ぐ空を見てポカリを飲んだら歩きましょう。
(10:35) 



 蓼科山(諏訪富士)は昨年同時期に登りました。ここも岩が満ち足りて歩きにくい。でも流れるような汗はかきません。

 広い草原の山頂から東南に向かい‥
 





 降っていくと笹の道に変わり、カラマツが多くなり八ケ岳の雰囲気が充満してきます。




 双子池ヒュッテに降り立つとテントが数張り設営されていました。まず左の双子池雄池へ行きます。
(11:15)

この澄んだ双子池雄池雌池の一対からなる池です。
南の岩峰大岳2382mの稜線が湖面に迫り、コメツガダケカンバ等の原生林に囲まれています。
水はヒュッテの飲料用に使用され、写真右の方で汲むようヒュッテのオヤジさんは言ってました。



 戻って雌池。池の標識前には、いずれもカメラ置き台がありセルフタイマーで記念写真が撮られます。
(11:25)

 ここは湖と呼んでもいいほど広く、写真右から湖畔を半分辿ると‥


 荒くれた道の登りです。森に緑のスープをかけると岩上は苔で覆われ、やがてシダが生え、そこに若木が育っています。

 『ディス イズ 八ケ岳』

 亀甲池への中間点から笹道の降りに変わり‥

  今日の池巡りで一番小さい亀甲池到着。
名称は池底の亀甲模様(構造度)からですが、そういえば草津白根山でも見ました。

 ここでランチにしませう。カメラをセルフタイマーにしてあの岩まで走る‥なんてできません。
他の登山者の方です。
(12:20)〜(12:50)




 池沿いに歩くと北横岳2480mへの分岐。ここから往復3時間です。それはできないので天祥寺原へ向かいます。
(13:00)




 オオシラビソの森を抜けると蓼科山の見える明るい草原に出ました。そこにはマルバダケブキのお花畑が!

 しばらく続いているので楽しい写真が撮れました。

黄色のマルバダケブキ(丸葉岳蕗)は、葉が丸くフキの葉に似ています。頭花は8cmと大きい。
よほど美味しい蜜が出るのかトンボクロヒカゲセセリチョウなどはカメラが近づいても無視。
 ここは針葉樹や笹が支配する山域にできた極上の空間のようです。




 やがて涸れた滝ノ湯川の沢床を渡ると天祥寺原(テンショウジハラ)の広大な笹原です。ここから標高100mの登り道。
(13:25)

左)イチヤクソウ[一薬草]薬草に使用されていました。  中)ワレモコウ[割木瓜] 小さな暗赤色の花が多数楕円球形に集合しています。  右)シロバナニガナ[白花苦菜]普通の黄花より舌状花の数が多い。




 とても緩い登りなのでそれを感じないくらいです。後ろには登らなかった北横岳2480m(中央)、大岳2382m(左)。

 いつか登るためキープしておきましょう。



 赤いヒュッテが見えたら大河原峠です。向こうは最初に登った双子山。峠との標高差は131mしかありません。

 名古屋テレビ塔180mより少ない。涼しくて、きつくなくて、面白い山歩きができました。ちょうど雲が押し寄せて来ます
(14:20)





 さて山から下って白樺湖に来ると夏空に思い出が蘇りました。避暑地の湖面に浮かぶ過去を見たら私達も帰ります。


東海岳行
   “常識  

 テレビで歌舞伎役者と女性タレント“海老・麻央”の披露宴が、華々しく行われていました。遠い別世界です。もう一つ遠い世界に私が出席した数々の結婚式があります。



 学生時代、名古屋の中学時代の親友から手紙がきました。結婚するので友人代表として招待していいか?と私の貧乏に気を使っています。彼は21歳でお嫁さんも21歳、当時としても若い二人。それほど早く身を固める友人は彼が最初です。

 両親は自営業でしたが、お父さんが病気で倒れたため高校を中退して跡を継いでいました。私は「すぐ何があっても出席する」と返事を返します。その当日名古屋まで帰省し、その足で披露宴会場に向いました。結婚式は身内だけで行われ、披露宴は自宅近所の料理屋です。

 因みに彼は学校一のハンサムだったので中学校では羨ましいほどもてました。その時初めて会ったお嫁さんは相応しい美人です。広い日本間の縁に出席者はグルリと座り、新婦側の友人代表は私ひとり。仕事関係が多く知らない方ばかりです。やがて会席料理が出てきました。



 そんな体験は私は初めてで料理は美味しいのですが食べ方がわからないのもあり、周りを見ながら一つづく平らげます。宴も終わり、新婚旅行に行く新郎新婦を名古屋駅まで見送り、私も下宿へ戻りました。やがて社会人になると学生時代の友人はもとより、会社関係の人が次々と結婚していきます。

 仕事で深いつながりのある人からは、当然のように招待状を渡されました。会社ですから義理のが多く、御祝儀をいくらにするかは休憩時間の話題になります。安月給なので式が続くと『痛い痛い』と嘆きあうのです。そんな経験を重ねると私はそういう気の毒な人を招待してはいけないと思うようになります。

 自分の結婚式は二人だけであげようと心に決めたものです。さて中学時代の友人の結婚式から10年くらい経ち、私も家庭を持ち落ち着きました。その友人の家に遊びに行き、彼と世間話をてしいるとあの披露宴のことが話題になり‥突然、私の思考が別な回路につながり顔が真っ赤になりました。



 あのとき、結婚式にご祝儀を包むということを私は全く知らなく無銭飲食していたことに気付いたのです。思わず友人に謝りました。彼は『いいよそんなの』と許してくれましたが、私は恥ずかしさが強く心に残ったのです。しかし‥

 信じられないことに彼は60歳前に急逝しました。すごいショックを受け私は告別式に出席します。それから1年が過ぎ、奥さんと会った時『随分たくさん香典をいただきすみませんでしたねえ』と言われました。そんな形でしか借りを返せなかったのが悔やまれます。もうすぐお盆です。

10.08.02(月)23:35