岳行ノート

湯ノ丸山(湯の丸高原) 2101m/長野県東御市

2013年6月24日(月)


つつじ平は花高原

朱と緑のコントラストが実に美しい



 長野・群馬県境に有名な大火山、浅間山がありますが、山頂から東に火山群が続き、その一つが鐘状火山の湯ノ丸山(ユノマルヤマ)です。

 その山頂2101mから東の地蔵峠1732m付近、湯の丸高原レンゲツツジが6月中〜下旬咲きます。高原に明治37年、牧場が開設しました。

 その結果、湯の丸は草原化していったのです。しかしレンゲツツジは牛馬の忌避植物で食べられず、60万株もの群落が形成されたのです。


 ネットで確認すると見頃になっています。でも今の天気は梅雨空ではっきりしません。梅雨の中休みを狙って思い切って出かけました。

 上信越自動車道の東部湯の丸インターで下り、県道79号線で東進。ほどなく別府交差点を左折し、県道94号線を12km上り地蔵峠へ走ります。

 教科書は、信濃毎日新聞社刊「信州トレッキングガイド」です。
<駐車地>
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大きい地図


地蔵峠P→三角点→つつじ平→鐘分岐→▲湯の丸山→鞍部分岐→
中分岐(ランチ)→臼窪湿原→湯ノ丸キャンプ場→十一面観音→地蔵峠P


 ※赤線はGPS軌跡 ●は主な分岐

■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」


江  南:午前5時25分発   曇り/23℃
駐車地:午前9時50分着   曇り/16℃
往:1時間30分(以下、小休止含)
復:2時間15分(ランチタイム除く)
◆所要時間:3時間45分



 驚いたことに地蔵峠の無料駐車場は、平日にもかかわらず既にギッシリ。関東ナンバーが多いようです。

 綺麗なWCにお世話になり、峠の県道を西へ横断します。
(10:10)





 八十一番の十一面観音右から入り、観光客の乗るスキーリフトの下を潜りました。そして向こう斜面のスロープへ向かいます。



 人工の急斜面から振り返ると右山腹に湯ノ丸スキー場、峠には駐車場とリフト乗り場。左の丸い山は西篭ノ登山2212mです。

 峠のレンゲツツジは、見頃を迎えています。

 まず出発点の地蔵峠(標高1732m)から115m上げらなければいけません。やがてスキーリフト降り口近くに着きます。その右手の笹藪を‥

 分けていくと四等三角点1847m点名「湯ノ丸牧場」を発見。ひとつ仕事が終わりました。この先からつつじ平となります。(10:30) 

(TOP写真参照)なだらかな高原が、直線で約700mほど朱色に染まり『綺麗ねえ』の声が飛ぶ。
最初、正面にガスがかかり山容が見えませんでしたが、10分くらいで奇跡的に取れました。
左が湯ノ丸山2101m、右は北峰2099m。ツツジの間に踏み跡が細かくジグザグと続いています。

レンゲツツジは日本の固有種で群落は、昭和31年国指定天然記念物に指定されました。
つまり湯の丸高原レンゲツツジは、日本最大・世界最大の群落です。

足元に花が咲いています。
  左:コケモモ 右:ツガサクラ
観光客の人に教えていただきました。

 つつじ平の左上に東屋が見えたので牧柵を越え、登山道へ入ります。これで歩きやすくなりました。

 少し降ると鞍部が鐘分岐です。この鐘は牧場で使っていたのでしょうか。ここからは‥  (10:55)





 笹分けの直登、足元は岩道で気を使います。北東を見るとに右:桟敷山1915m、左下:群馬県嬬恋村(ツマゴイ)の田代湖です。





 平ぺったい石がゴロゴロ。歩きにくさと空気の薄さでで何度も休憩します。山頂の手前2080mで森林限界になりました。



 そして石を敷き詰めた独特の山頂、湯ノ丸山南峰2101mです。浅間山周辺や美ヶ原などを望めるのですが‥

 ガスで展望は全くありません。次々と登山者、団体も到着。出発前、みたらし団子を食べたのでまだ空腹になっていません。
(11:40)

 烏帽子岳の道標が南西を指しています。ランチはその山頂でしましょう。ロープの中で‥  (11:55)

 イワカガミを保護しています。その名の通り、岩の間で咲き誇っています。



 登山道は岩と黒い粘土、昨日の雨でぬかるみ要注意です。ムム! モミジの葉の上に赤い粒々が乗っています。

 何かの卵でしょうか??? ウ〜ゥ、、、そのせいか、この道は小虫が多い!
 
やがてガスで前方の視界が無かったけど鞍部分岐に来ると奇跡的にガスが退きました。
烏帽子岳2066m(右のピーク)までは、ここ鞍部1850mから往復50分です。
ところがこの後、全面的にガスが戻り、おまけにポッツリ君まで来る始末。
(12:25)



 登頂しても展望ないし‥迷いながら進むと満開のズミに下山者のご夫婦。頂上の様子を伺うと殆ど眺望は絶望とのこと。

 ここでピークハントは諦め、踵を返して鞍部分岐から地蔵峠に下山します。
(12:30)



 原始林の趣漂う山腹をトラバースし等高線1840mをなぞっていきます。ガスのかかるダケカンバの巨木に石の道‥

 「梅雨の中休み」は、どこへ行った!

 鞍部から30分ほどでシラカバ中分岐。虫がいなく雰囲気も良いのでランチにします。
ここから北は鐘分岐、東へ地蔵峠、南はドウダンツツジの小道から臼窪湿原へ‥
当然、湿原へ行ってみます。
(13:05)〜(13:15)





 ドウダンツツジの小道は、ドウダンよりむしろカラマツの植林のイメージ。尾根を緩く降ると左に湿原が見えてきました。

湿原は湯ノ丸高原キャンプ場内にあり保護されています。木道は馬蹄型に引かれ1周5分くらいです。
周囲はカラマツ林。水の供給が少ないのか乾燥してかなり草原化が進んでいます。
初夏になるとアヤメ、ハクサンフウロ、ミヤマキンポウゲなどの群生が見られるようです。
(13:30)

 いいね! アヤメをフライングゲット、梅雨にぴったり。『嬉しいです』

 この花、登山者の方に名を教えて戴いたけど失念しました。アマドコロ‥Oさん、ありがとうございます。





 湿原で遊んだら、すぐ先に見える湯ノ丸キャンプ場へ進みます。場内の未舗装道を降っていけば‥

 地蔵峠の県道に出ました。この道を古に湯道と呼ばれ、道すがら百体の観音様が祀られています。

 地蔵峠北の鹿沢温泉へ湯治に向かう旅人が拝みました。ここは八十番です。ここのツツジ60万株が最大だと思ってたら‥

 あるHPで五味池破風高原は100万株となってました。それは行かねばなりません。
(14:00)


東海岳行
  “道草セレクション「光の旅」   大道草11「光の旅」再掲

 授業が終わると自転車に乗り、駅前のレストランに出勤し夜8時まで皿洗いのアルバイトをしていました。店が閉まるとまた自転車に乗り、1時間かけ下宿まで帰ります。市街地から田舎へ走るのですが、ずーっと緩やかな登りです。18歳だった私は30分くらいならガンガン漕げます。

 でもそれ以上はきつい。途中から車道をショートカットし、農道に入って自転車を引き歩きします。田んぼの中なので街路灯は無く、薄いライトが頼りです。田んぼに落ちないように注意して行きます。すると暗闇に小さな子供たちの声‥。両親とお姉ちゃん、弟の4人が向うを向いて立っています。

 彼らの前い‥すごい!黄金の光の粒子が、数え切れないほど揺れている。ホタルだ。私は自転車を止め『今晩は』と挨拶をして用水の小橋に立ちました。フワーと光が流れ、田んぼに消える。お父さんが『昨夜は、こんなにいなかったけど今日は沢山光ってる』と話してくれました。


 私は『生まれて始めて見ました。綺麗ですね』と応える。光の劇場は、私たち5人の観客のために上演されています。感動してそこを動けません。1匹が弟の服に止まりました。

 その子が、手の平に乗せても逃げません。私は3匹捕まえ袋状にしたハンカチへ入れ、下宿へ大事に持ち帰りました。翌日から夏休みなので、入学以来、初めての帰省をします。昨夜ホタルを捕まえたのは、2人の弟たちに見せてやろうと思ったのです。葉っぱを入れた紙箱にホタルを入れ持ち帰ります。

 当時、汽車は当時クーラーなど無く、窓を開けなくてはいけません。時々紙箱の中を確かめます。風で次第に葉が乾燥してきても近くに水など無い。ホタルは動きません。困って唾液を時々葉に垂らしました。今なら故郷の名古屋まで半日ですが、その頃は一日がかりです。



 夕方、家に着くと高校生と中学生の弟が寄ってきました。『いいもの見せてやろう。電気消して』箱を開ける。ホタルは動かない。暗くすればホタルは蛍光塗料のように光ると思っていました。

 『やっぱり死んだのかなあ』仕方なく裏庭に中身を捨てます。夕食後、母がスイカを切ってくれました。縁側に座り兄弟で食べます。突然、中学生の弟が『兄ちゃん、光ってる!』視線の先を見ると確かに三つの光が裏庭でほのかな輝きを放っています。

 しばらくすると少しずつフワフワと飛び回るようになり、やがて大きく舞い上がるとどこかへ飛んでいってしまいました。消え去った光を惜しむ弟に『ホタルは、小さな命を必死で燃やしたんだ』と私は、わかったようなことを言う。ホタルを見たことがない弟たちに見せてやることができ面目躍如、得意満面でした。


 やがて20年が過ぎ、家庭を持った私は、ある日ホタルの飛ぶ写真を新聞で見ました。3人の我が子に見せてやりたいと思い、記事を頼りに車へ家族を乗せ全員で出かけます。駐車場から歩いて小川へ行くと堤防にも人の流れが出来ているようです。

 川岸を見るとホタルが、草の上に止まり強弱をつけて光っています。私が初めて見たときより密度が薄い印象です。時々飛び回るのがいて子供たちは大喜び。堤防を歩いていると10歳の長女のスカートにホタルが止まった。私が手を差し出すと簡単に乗ってくる。

 それを娘の胸に付け『光るブローチだ』と言うと照れ気味の笑顔を返す。道を行くとすれ違うよその子供たちがその胸のホタルを見て驚いている。娘はちょっと恥ずかしいけど得意そう。川から離れるとき、逃がしてあげると土手に飛んでいきました。



 更に20年が過ぎます。嫁に行ったその長女から先日電話が入りました。
『お父さん、この前家族3人でホタルを見に行ったのよ』
『それは良かった』
『でね、川に着いたら、あれ?見たことがある‥そこね、家族で前に来た所だった!』
『そう小学生に行った時のこと、よく覚えていたなあ』
『うん、すごく嬉しかった』

 
私も嬉しい。ほのかな光は、娘の記憶の小部屋を永く灯していたようです。電話の最後に『お父さんと初めて見たときのほうが‥沢山いたよ』と言いました。私と同じだ。私も初めてホタルに出合ったときの記憶が一番鮮やかに残っています。



 タイムマシンがあったらあの小川にホタルのブローチを付けた娘に逢いに行こう。そして教えてあげたい。『大人になって結婚して子供ができたら、今夜のようにきっと家族でこの川へホタルを見に来る。だから今夜のホタルの光をよ〜く覚えておくといいよ』『???』

 
長女は不思議な顔をするでしょう。愛おしくなって抱きしめたくなる。でも川にいる大勢の人に見られているので娘は嫌がるでしょう。それなら手をつなごう。空想はホタルのように飛び回る。今でも私の心にあのホタルたちの淡い光は残っています。でもそれは手を伸ばしても触れることのできない距離です。

13.0626(水)20:10