岳行ノート

栂池高原 2020m/長野県小谷村

2013年8月3日(土)


遥かな栂池



 北アルプス、白馬乗鞍岳2456m中腹の栂池高原(ツガイケ)には、高層湿原に遊歩道が整備された栂池自然園があります。

 「行きたいリスト」に入っているのですが、今年こそはと7月末に予定しました。ところが戻り梅雨のお蔭で連日の雨天です。8月にようやくお日様マーク。

 折角なので2泊します。天気予報を確認してぎりぎりに宿を予約。しかし揺れる空模様は突然、曇り・曇り・曇りのち晴れの予報になりました。


 もう宿泊日の変更はできません。ひよこさんと車を走らせ長野道安曇野インターで下り、国道147〜148号線で北進します。青木湖を過ぎると白馬村です。


 教科書は、信濃毎日新聞社刊「信州 高原トレッキングガイド」です。現地の様子は、栂池自然園公式ブログで確認しました。
<駐車場>
大きい地図


栂池高原スキー場有料P→栂池高原駅(ゴンドラリフト)栂の森駅栂大門駅(ロープウェイ)自然園駅→

◆栂池自然園ビジターセンター(入園)→水芭蕉湿原→ワタスゲ湿原/風穴→展望湿原/銀名水→
モウセン池(ランチ)→浮島湿原→トイレ→栂池自然園ビジターセンター→

自然園駅
(ゴンドラリフト)栂池高原駅(ロープウェイ)栂池高原スキー場有料P


 ※赤線はGPS軌跡 ●は主な分岐点 □は主なウッドテラス

■この地図の作成に当たっては国土地理院長の承認を得て同院発行の数値地図50000(地図画像)数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである(承認番号 平17総使、第98号)」


江  南:前々日午前8時30分発  晴れ/27℃
白馬村:前々日午後1時35分着  曇り/25℃
駐車地:当  日午前9時05分着  曇り/15.5℃
往:2時間10分(ビジターセンター〜展望湿原テラス往復)
還:1時間20分(小休止含、ランチタイム除く)
◆所要時間:3時間30分
 旅行最終日に高原トレッキングします。宿から小谷村(オタリ)の栂池高原スキー場に走りました。ゴンドラリフト乗り場前の駐車場は300円です。(9:05)  
 ゴンドラリフト・イブの栂池高原駅へ少し歩きます。次々来る6人乗りゴンドラに二人で乗車。入園券付の往復チケットは、あらかじめ道の駅で入手しました。



 3300円を2950円で購入。栂池自然園には車で上がれましたが、環境保護のため平成6年ロープウェイを通しました。

 このゴンドラリフトは20分、次のロープウェイは5分の乗車して標高910mを昇り、自然園駅1829mへ到着します。



 少し坂道を歩き、栂池ヒュッテ・栂池山荘・ビジターセンターと並ぶ向こうが入園口。気温は15.5℃、深まる秋のようです。

 この高層湿原は、白馬乗鞍岳2456mの山腹にあり、1周5.5kmの遊歩道が設けられています。標高は1880m〜2020mです。
(10:05)
 最初はみずばしょう湿原の木道を歩きます。群生は6月中〜7月中なので今はデッカイ葉しか見られません。↓

 替って夏の花が咲いています。

左)キヌガサソウ:衣笠草      中)クルマユリ:車百合       右)ワタスゲ:綿菅(果穂)

 ゆったりとした木の階段を上がると途中、「風穴/標高1870m」の案内があります。冷たい風が頬に感じられ、穴の中に残雪。

温度計は3℃です。火山活動の名残と言われています。

←最後の水芭蕉が残っていました。
(10:25)

「花高原」 黄)ニッコウキスゲ  青紫)ヒオウギアヤメ  橙)クルマユリ  白)モミジカラマツ
 楠川(クスガワ)の木橋を渡ります。そこに‥
(10:45)

 トイレがありました。この先にはないので随分混雑しています。手洗いの水を飲む女子。



 しばらく道は狭い登り坂になり、上がりきったらベンチで休憩します。これより左に行けば浮島湿原です。

 浮島見学は帰路に残して分岐の右を取り、展望湿原へ向かいます。
(11:05)





 高度を100m上げなければいけません。さすが2000m高原は違う。8月でもニッコウキスゲが圧倒的咲き誇っています。

 階段の上の人に『振り返って見てください』と促されました。自然園全体の圧倒的眺望。
左上にビジターセンター、その下がみずばしょう湿原、中央が浮島湿原です。
今日は一日ガスっていそうだ。

 銀名水の沢を過ぎ、モウセン池のベンチでランチにします。小柄なトンボが足元に止まる。
(11:40)〜(11:55)

左)チングルマ:稚児車      中)ヒオウギアヤメ:檜扇菖蒲   右)ミヤマキンポウゲ:深山金鳳花




 そして白馬大雪渓圧倒的絶景劇場のウッドデッキ2010mに到着。観客は大勢ですが、どうも白い幕は上がりそうもありません。
(12:15)

 展望湿原の尾根では、オオシラビソダケカンバの木立の中を歩きます。南下すると‥

  自然園最高所2020mです。南方700m下の大きな雁股池の眺めが美しい絶景スポット。ここも白い幕が下りています。(12:30)





 明るい山並みの展望は写真で想像するしかありません。やせ尾根を降ると右斜面はお花坂です。

左)ハクサンシャジン:白山沙参? 中)シモツケソウ:下野草   右)ハクサンオミナエシ:白山女郎花

 浮島湿原に戻り、展望ウッドデッキへ行きました。丸い小さな島がワタスゲを乗せて浮かんでいます。後ではピークを迎えたニッコウキスゲ、黄色の河です。

左)イブキトラノオ:伊吹虎の尾   中)コイワカガミ:小岩鏡      右)モウセンゴケ:毛氈苔

展望は残念でした。でも花高原の夏、緑に点在する色彩を充分満喫できました。
ビジターセンター(13:50) ロープウェイに乗り駐車場帰着(14:45)
おうちには、4時間半ドライブ


東海岳行
  “道草セレクション:あっちゃんの親指” 

1.お盆


 
子供の頃、ぼくの母の実家では毎年のように法事がありました。でもお菓子やご馳走が食べられるうえ、親戚の従兄弟が全員集まるので楽しいイベントです。高校生のお姉ちゃん以外は男子が6人。中学生1年生のあっちゃんが一番上であとは小学生。そのとき、ぼくは小学4年生でした。

 みんな、あっちゃんの話を聞き、あっちゃんの後ろに付いて遊びます。そんなワクワクするお盆でも唯一気が重くなることがありました。お坊さんのお経を一時間聞くため正坐をすることです。読経が始まる前、みんなで足が痺れていやだなあと愚痴っていました。

 するとあっちゃんが得意そうに『痺れない正座がわかった!両足の親指を重ねればいい』と言います。素晴らしい、事実ならなら魔法だ。さすがあっちゃん何でも知っている。いよいよお坊さんが仏壇の前に進みました。大人たちはその部屋で座ります。ぼくたちは続きの和室にやれやれと腰を下ろしました。

2.読経

 年長ほど前の席なので、ぼくはあっちゃんの斜め後ろに座ります。あっちゃんは、自分が言ったようにきちっと親指を重ね、お尻を下ろしました。そして後ろに振り返り、みんなに『こうやるんだよ』と目で合図を送ったのです。ぼくたちは素直に従います。『*$○※★〜』お経が始まりました。

 ぼくは10分ほどその魔法を信じていましたが、効き目はさっぱりで痺れて苦しくなり親指を離します。あっちゃんの親指は、セメダインで付けたようについたまま。どうやら魔法が効いているようです。でも親指を見るとあれれ?真っ赤だ。

 20分過ぎるといよいよお経は絶好調、痺れは最高潮。あっちゃんの親指を観察していると驚くことに赤紫色に変色してきた。『腐ってきた!』しかし、ぼくの足もじっとしていられないほどの痺れ。耐えるだけの時間は、すごく長い。何か気を紛らさなくては‥ 右隣にいる一つ下のかっくんに顔を向けた。



 すぐ目が合ったので『あっちゃんの足を見ろと目で合図を送る。『@ @』かっくんは赤紫の親指に驚き眼を開く。『すごいだろ』『こんなの見たこと無い』と二人は目で話す。ぼくは、むくんだ親指近くに手を伸ばし、撫でたり指で弾くマネをする。ちょっとでも触ったら大変だ。

 かっくんは、手で口を押さえ必死で笑いを堪えている。ぼくは赤紫の親指をつまむマネ。口にそれを持っていき超小声で
いちじくとささやき食べる仕草をする。ブチャッと噴出したかっくんをみんなが見る。これ以上追い込んではまずい。『*$○※★〜』お経は続く。

3.中休み

 何か他ごとで気を紛らわさなくては‥。そうだ台所でスイカを冷やしていた。想像で食べてみよう。赤い三日月に塩を振り、一口ガブリと食べ種を『プッ』と飛ばす。食べ終わったらもう一つ食べる。もう一つ‥すると『あなかしこ〜、あなかしこ〜』嬉しいお経の最終フレーズです。

 これで中休みに入ります。長かった、耐えた。『なんまんだぶ、なんまんだぶ』全員で唱和する。でもぼくは、そう言わずかっくんに聞こえるよう『スイカたべたい、何個もたべたい』笑い上戸のかっくんはひっかかって
ブチャッと吹き出す。

 そして合掌したまま一礼します。そのときぼくは、早く足に新鮮な血を流したくて、お尻を上げ気味に頭を下げた。突然バランスが崩れ、顔が畳に突っ込む。慌てて両手を伸ばし、畳に手を突く。ところが左手があっちゃんのなすび色の親指をまともに押さえた。



 あっちゃんの上半身が、バネで弾かれたように伸び上がる。
パオ〜ン 悲しい鳴き声をあげ、左肩から倒れた。きっと足の中でジンジン電車が猛スピードで走っている。あっちゃんは、くすぐったさと痛さ、悦楽と苦悶の刺激に歯を食いしばり、横たわって握りこぶしで耐えている。

 『あっちゃん、ごめん焦ったぼくが右足を前に出し、立て膝で立ち上がろうとする。しかし充分痺れていたので体重をかけた瞬間、足の裏をジンジン電車が急行で走り出す。バランスを崩しあっちゃんのくの字に曲げた足の上に倒れこむ。

 一度ならず二度までも触れられたくない急所を襲われたあっちゃんは、チビッコゲリラを蹴飛ばす。ぼくは一畳ほどゴロゴロ転がり、上向きで足を曲げた姿勢で止まった。ぼくはそれからかゆみを撒き散らすジンジン電車から逃れられない。大声で笑うかっくんや弟たち、自業自得。電車が去るのを耐えるだけ‥

4.正座名人

 私の正座の痺れ癖は、長じた現在でも克服できていません。でも今は便利です。通販で“正座名人”が販売されています。ポイントはその高さで自分に合うものを見つけるのに少し無駄をしましたが‥

 こうして私は、あの夏のジンジン電車に乗ることはありません。今となっては電車の感覚は懐かしい気もします。でもやっぱり思い出のレールからは飛び出してこないで欲しい。

5.その後

 あっちゃんは、有名大学を出て役所勤めをし定年退職しました。かっくんは高校を出て少し働き『青年は荒野を目指す』と言い残し、スウェーデンへ行ったきりです。もうあの時のように従兄弟が集まることは出来ません。今では少年時代は、遠い思い出ととなりました。

13.08.06(火)16:30