岳行ノート

綿向山/滋賀県日野町  標高1110m
2005.10.9(日)江南6時40分発 
           晴れ 18℃ 
登り:計3時間55分(小休止含)
降り:計2時間55分(小休止含)
 楽しい3連休は、通しで雨予報でした。『それはない!』国民の声が届いたのか気象庁は、直前で日曜を秋晴れ予報にしました。どの山に行くか?先週の第一コマで書いた夢で閃きました。『文三ハゲに行こう!』ということでひよこさんと「綿向山」へ走ります。

 ガイドブックは、中日新聞社刊西内氏の「地図で歩く鈴鹿の山」です。参考書は「歩け歩け(ベルクハイル山行)」にお世話になりました。

綿向山の文三ハゲ
 






熊野神社分岐

パニック

熊野神社分岐

林道終点

綿向山山頂

水無山

グリム
冒険の森




※赤線は実測ではありません。
■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」
 これぞ秋晴れ。爽やか平野を写真中央の武平峠に向かって走ります。3年ぶりの「綿向山」です。
 『百万円当たったら何が欲しい?』『松茸が食べたい。旅行にも行きたい。』『まず登山靴だな。それからDVD‥』庶民の会話で車中は、盛り上がります。

 あっぱれな天気なので8時過ぎのスカイライン沿いでは、駐車場探しに難儀している車が見受けられました。
 峠のトンネルを抜けると道路に小猿の群れです。手乗りになりそうなかわいいのもいます。

 途中、日野市の「野洲川ダム」を見るとすっかり干上がっていました。
 「グリム冒険の森」のキャンプ場は、家族連れで賑わっています。そこから少し上がったスペースに駐車しました。

 後ろの細い道が、周回の帰り道です。
(9:35)
 知らない所に来ると何でもない風景が新鮮に見えます。でっかいタヌキが、バスを待っています。「トトロ」を思い出しました。 

 集落に入ると中型の老犬が、放し飼いされていてのんびりと人懐っこそうに寄ってきます。

杉の巨木が林立する「熊野神社」です。
右端が「タコ杉」、右手に少し降って天然記念物の「ヒダリマキガヤ」も見物しました。
(9:30)
 神社に参拝してから右手の林道を上がります。すぐに「熊野滝」への道標があり、地道に入りました。

 今日は、ガイドブックに忠実に歩く予定です。
 山腹の広い道を進みます。気温も19度で気分がとてもいい。

 20分ほど歩き、野の花やバッタを撮っているとズボンに恐れていたエイリアンが出現しました。『ヒルがイル!』と言ってカメラで撮っているとポロッと視界から消えました。『あれ?』足元を探すと左靴に別部隊が、4匹ほど這い上がっています。『フオ~』レーザーラモンのような叫び声が谷間にこだまする。

 ひよこさんに劇薬スプレー(濃塩水)を噴霧してもらいました。すると先ほど消えたのが、靴の中に入っていくのが見えます。慌ててつまみ出し、念のため指を中に入れると『グニュ』とした感触が‥。そいつもつまみ出し捨てる。

 右靴を見ると3匹が這い上がってくるところ。ひよこさんの靴を見ると左右で3匹ほどうごめいている。周りには向かってくるヒルが‥。『フオ~』阿鼻叫喚×2人分。スプレーしまくり一目散に引き返します。

 50mほど走り、日当たりのいい岩場で総点検です。幸い被害は無くヒルも付いていません。すると突然、ひよこさんが指差し『そこに鎌首立てている!』と叫ぶ。と同時に二人は、足を高くあげ林道まで駆け戻ります。
 ヒル騒動で時間と体力を費やしました。滝見はあきらめ、舗装と地道が入れ替わる道を歩いていきます。

 一休みしていると2匹の蟻が、動かないヒルを引きずっている。『トホッ』好展望の道だけど足元を見なければなりません。
 林道の終わりは、岩が転がり荒れています。終点で一息つき、待ち受ける「文三さん」との大ファイトの前にガイドブックを確認しました。
(11:25)

 堰堤の先を右に回りこみながら核心部に向かいます。
 いよいよ始まりました。マーカーはありません。慎重に足場を確かめ、薄い踏跡を探しながらガレを上ります。
 落石に注意するため2人には距離が必要です。ひよこさんもちゃんと付いてきます。下に歩いてきた林道が見えました。
 ガレ地に咲くノコンギク。
 ガレ留めの鉄柵の前ををジグザグ歩くようになると少し楽になります。

 この「文三ハゲ」を登ろうと最初に考えた人は、人一倍の冒険心・探究心・挑戦意欲の持ち主に違いない。
 ガイドブックにキッチリ描かれている鉄柵を数えながら登ります。岩の上の1本松まで踏み跡があるので行きますが、その先がありません。(ガイドブックを後で見るとこの箇所に×が打ってありました。)

 思案しているとひよこさんが『何か見える』といって右手上を指さし、双眼鏡で確認します。稜線にある道標です。『よかった』
 1段下まで戻ります。これが怖い、急斜面で足場はザレている。

 ※ひよこさんが発見した標は、下の写真の右上にあります。道筋も見える。

aで思案しbにたどり着きました。
 3年前に歩いた見覚えのある稜線鞍部です。



 このコースは、初心者の方には危険です。
実は前夜、この「文三ハゲ」を登られたレポやガイドブックを見て、私達でも登られそうな気がしていました。しかし実際の現場では技量・体力・経験などが必要条件なのは言うまでもありません。

 あえて危なっかしい写真や失敗談を載せたのも謙虚な気持ちで、初心者の方にその困難さを明示したかったからです。
 地面に張られた鉄網に指を掛けながら急斜度の斜面を必死に登ります。

 ひよこさんは、緊張と疲労でヘロヘロですが気力を振り絞り登りきりました。
(12:35)

 ガイドブックは、ここを30分で通過していますが、私たちは70分です。これが技量、体力などの差というものでしょう。
 厳しいファイトが終わっても気が許せない道が続きます。3年前、この山に来たとき半べそをかいていたひよこさんですが、文句も言わずに痩せた山腹道をついて来ます。経験が成長させたのでしょう。
 この階段を登ると1110mの山頂です。ならば111段数えれば到達だと思ったら119段でした。消防署の人が協力したのかな?
 ひよこさんが座る場所を決めるので、青年の塔を押しています。『もう少し後ろだと具合がいいのに‥』びくともしません。
 実はふくろはぎのストレッチ中です。

 先回は一面乳白色でしたが、今日は晴れ渡っています。ランチだ!
(13:20)~(14:10)

中央左は「雨乞岳」、手前に「清水頭」、右奥に「鎌ケ岳」
食事中、赤とんぼが近くにとまり『何かちょうだい』とおねだりします。
『お口に合うものは、ござりません』と丁重に断りました。
 さあ帰るには、降りなければなりません。階段から、これから向かう「水無山」が見えます。
 往きと同じ道を降りました。このコースは、景色は素晴らしいが道は険しい。
 990.7mの「水無山」頂上でバテバテのひよこさんです。彼女の元気がなくなると私は反比例して元気いっぱいに見せます。
(15:00)

 この後、南峰に行く途中ガレの際を通る怖い箇所にもひよこさんは、先回よりへこたれません。
 ここからページトップの写真を撮りました。
(15:10)

「先に道は全くありませんここから引き返してください」と鈴鹿モルゲンロードクラブの立看があります。ハイカーが入り込んで道に迷わないためとガイドブックにその意味が書いてありました。
 尾根の急降下が始まります。

 昨夜、25000分の1地図にガイドブックの要点をメモしました。

 [広い尾根道→急降下→カヤト→分岐尾根を右→岩塊→急降下→尾根広がる→仙道(谷と平行)→広い道]と経過ポイントと大体の所要時間です。
 ここからカヤトの道で左側は植林になってます。踏み跡が、少し頼りなくなりますが尾根を行けば大丈夫です。

濃い青紫の花が美しいトリカブトが、群生していました。

左:ドウシンタケ(食)    中:キツネノチャブクロ(薬)    右:コフキサルノコシカケ(薬)
 分岐尾根に着き、南西右方向に進みます。ここから登山道ではなく仙道です。急斜面に直線道がありますが、とても降りていけないので脇の森に入り、立ち木を頼って降ります。
(15:40)
 周りが明るくなると右手に堰堤が見えてきました。ここからガイドブックの「林道風の広い道」を探しますが見つかりません。

 地図の高圧線は空にあったのですが、行き止まりとなりあきらめて谷に降ります。
 広い水路の右岸に歩けるところがあり、そこを降りました。林道に出会い左折して東に進みます。すると「グリム冒険の森」に出ました。10分ほどの大回りです。 
 疲労困憊ですが、暗くなる前には帰着できました。『万歩計を見るのが怖い。』と言うひよこさんが見ると『ヒ~23,500歩!明朝の体重計が楽しみだわ。』
(17:00)

 11月10日は‥


 毎年11月10日は『綿向山の日』です。標高1110mにちなんだしゃれた企画で印象に残ります。私たちも3年前早朝に出発し、登山口前の特等席に車を停めて表参道を登りました。

 3合目の林道でバザーやコンサートが開かれ、温かい飲み物も振舞われ嬉しくなります。頂上では、ステッカー(先着1000名)と登山証明書を頂きました。

 食事後、119段の階段を降りようとすると交通整理をしています。上り下りを切り替えなければならないほど数珠繋ぎです。

 駐車場に戻り、帰り支度をしているとおじさんが来て『何時に来たらこんないい場所に止められるのかね?』と尋ねられました。『5時に出てきて7時30分に着きました。』と答えたら『そうだわなあ』と感心タップリです。

 楽しい1日をすごすことが出来、関係者の方々のご苦労に頭が下がりました。大感謝。