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今日は、鈴乃助(6才)の初めての運動会です。待ち焦がれ楽しみに出かけました。自分の子供達の運動会は、10月に催したと思いますが、今は中学受験のため早く行われるようです。でも9月は残暑が厳しい日もあり、熱中症が心配です。児童席にはテントが設営されていました。

 また途中途中、子供たちには給水タイムが設けられ、お弁当タイムになると体育館が開放されます。赤白帽子も後頭部を覆う布付です。20年も経つと随分、子供達に優しい運動会になりました。さあ今日一日、娘夫婦は鈴乃助の活躍を撮ろうと奮闘するでしょう。

 私もこうして運動場に陣取っていると‥カメラを持って必死だった親の頃や、さらに遡って自分自身の運動会を思い出します。私が4年生から6年生の間、クラスに光一君というライバルがいました。彼とは勉強や徒競走で競ったのです。



 でも私が勝手にライバル視していただけで光一君は眼中になかったでしょう。彼は、明るい印象の顔立ちで、頭がよく足も速く人気がありました。1学期に必ず学級委員に選ばれたのがその証拠です。お父さんは、自宅に送迎車が来るほどの高級公務員なので間違いなくお金持ち。

 いつも小奇麗な服を来ていたのがその証拠です。一方、私はお茶目だったので一部の男子には受けていました。勉強は、4年生からそろばん塾に通ったお陰でクラスでも計算は速い方です。それで算数が好きになり、得意科目になりました。しかし他の科目‥国語は漢字を覚えるのが苦手で大嫌い。社会は興味なし。

 美術は絵心がなく、音楽は歌が下手くそで酷いものです。今、文章を作ったり、写真を撮ったり、バンドしたりしているのが不思議なくらい。多分好きな事には、のめり込むタイプなのでしょう。その頃は、算数のテストだけは頑張るので結構いい点数を取れていたのですが、トップは必ず光一君です。



 6年生の時、先生は採点した用紙を返しながら上位10番の点数と名前を言いました。私はクラスで2番か3番、悔しいのでノートに彼と自分のテストの点数を秘密に記録します。差は10点もありません。答えを間違えた原因を調べてみるとケアレスミスが殆どです。

 いつも私はテストを全部解くと用紙を裏向け、余った時間ボーっと外を見ていました。そこで次から算数のテストは、もう一度見直すことにします。飽きっぽい私にはつらい作業ですが、やはり2,3個ミスを発見しました。すると『98点!』初めて1番を取ることができ、友達に得意満面で秘密ノートを見せます。

 何故かそのことが先生にバレ、酷く叱られ、それ以後は算数競争に興味を無くしました。さて運動会のことですが、ハイライトは何と言っても徒競走ですね。子供には親の期待分が重荷かもしれませんが。私は子供の頃、少し足が速かったので親は楽しみにしていたと思います。



 ところが大いに早いわけでなく1着は中々獲れません。徒競走は5人1組で走ったのですが、一人早い子がいました。そう光一君です。4年生、5年生と彼と一緒に走り、どんなに頑張っても彼が1位、私が2位です。そうして迎えた6年生、運動会の前に練習があり案の定、彼に負けました。


 一番の原因はスタートで、そこでもう勝負が付いていることです。何か勝つ方法は無いかと他の子が走るのを見ていました。スタートを合図する先生を観察しているとある癖を発見しました。『よ〜い』で旗竿を下ろしスタート体制の児童を確認、頭を少し動かし下ろした竿をチラ見して『ドン』と同時に竿を上げます。

 私はそのタイミングを測りました。そうして本番当日、順番を待つ間にそのタイミングを確認したのです。心臓が胸一杯に膨らみ急速鼓動します。
『ピー』私のスタート位置は真ん中、光一君は一番外です。スターターの顔をしっかり見ます。『よ〜い‥ドン』山勘スタートは、運よくドンピシャ。



 すぐコーナーでしたので内側に向って走ると彼の姿が左後ろに目に入りました。加速してきた光一君が、コーナーの内側から強引に私を抜かそうとします。私の後ろ脚に彼の足が接触。びっくりして走りながら一瞬振り返りました。

 私の体勢は崩れなかったのですが、彼はつんのめって転びそうになっています。結局、1着ゴールインは私で光一君は3着です。彼に近寄って私は何故か『ゴメン』と言いました。いつもトップだった光一君に悪いと思ったのでしょうか。『いいよ、いいよ』と気にしてない様子で私は救われました。

 終わって私がクラスの席に戻ります。 私が戻ったことに気づかない彼が、周りの子に『あいつに足を引っ掛けられて勝てなかった』憤然と話しています。私は急に寂しい気持ちになりました。トップはトップなりのプライドがあるのでしょう。光一君は、卒業して私立の有名中学に入ったのでその後、逢っていません。



 そろそろ、鈴乃助の徒競走が始まります。入場門で並んで待つ彼を見ると緊張顔。数えると13番目の出走です。ゴールの瞬間を撮りたいので移動します。児童が活動する場所は立入禁止です。

 20mほど離れた所で用意します。12番目の時にカメラのスイッチを入れ待機。徒競走の距離は50m、『次は鈴乃助の番だ』スタート位置に着く彼を見てカメラを構えると液晶画面が真っ黒。いけない、スイッチを入れる。点かない。待機時間が長くなると自動的にモニターが消えることを思い出しました。

 スイッチを入れたので電源オフになったのです。スタートのピストルの音がする。『やばい』あせって電源スイッチを入れても直ぐには起動しません。『点いた』絵が小さい。『ズームだ』レンズはのんびり伸びる。やっとのことでシャッターを押す。全員がゴールを越えている。『何位??あ〜ナマで見れば良かった』

2011.09.25(月)23.:50