56  “鈴之助の初登山
駐車地  [+]拡大  [−]縮小

大きい地図
 

 私は名古屋で育ちで、周りに丘はあっても山はありませんでした。振り返れば初紅葉を見たのは、社会人になり車を手に入れてからです。

 新聞に載った香嵐渓に出かけ、川沿いに並んだ真っ赤なモミジに感動しました。では、天然ものの紅葉を初めて見たのはいつだろう?

 思い出すのは山登りを始める前、長野へ車で出張したときです。早めに着いたので山へ延びる道をドライブしました。峠へ近づくと全山カラマツ黄葉



 陽光の当たり具合が抜群に良く黄金の輝きに驚き、あまりの美しさに涙が出たくらいです。その後、登山を始めてからは毎年天然ものを味わっています。

 この夏、とある銀行の預金者向け小冊子の制作会社のお手伝いをしました。中高年の登山デビューの山選びをお願いされたのです。

 9月発行なので紅葉低山を選んだのですが、愛知県「きららの森」、犬山市「継鹿尾山」等いくつか選び、他に岐阜県白川村の「三方岩岳」も入れてみました。



 白山スーパー林道の駐車場を出発して、観光客でも登る登山道を40分登れば山頂です。紅葉も抜群ですが、残念ながらカットされました。

 そんなこともあり、私のアイドル鈴之助(小3)に初登山しようと天然紅葉三方岩岳に誘ったのです。彼とママ(娘)2人の都合と紅葉の都合で3連休の最終日に出かけました。高速道が2車線から1車線になる所と白川郷インターを下りた鳩谷交差点で大渋滞。

 全然進まないので、それならばと車中ランチしました。スーパー林道(¥3150)を走り三方岩駐車場に来るとスーパー混雑。10分近く並び何とか停められました。鈴之助、ママ、ひよこさんの4人パーティで出発します。左から右から入る車、出る車でごった返す車道を横断すると登山口です。


<3連休は見頃100%でこの有り様>12:05

<駐車場から道を渡ると登山口>

 ここで3人のストックの長さを調整。帽子を持ってくるように言いましたが、鈴之助もママも持ってないという。『運動会の赤白帽でいいのに』『かっこわるい』 タオルを彼の頭に巻いてやりました。鈴之助には、着替えと500ml飲料水が入ったリュックを背負わせ、子供の有り余る元気にブレーキをかけます。

 彼は今日の紅葉見物を公園へ行くようなものだと思っていたようです。しかし、ここは本物の山で道はジグザグくねり、泥道・岩道が続きます。(下左) 『ほら、下を見て』みんなに眼下の駐車場を指さしました。鈴之助『あっという間だね』 登山口から6分でこの高度感、彼には車がトミカの玩具に見えたでしょう。(下右)


 しかし頂上はまだまだ。更に10分ほど歩くと鈴之助が暑がるのでTシャツ1枚にしてやりました。また10分くらい登ると彼の元気が薄れてきたのでママがリュック当番を替ります。やがて山頂が見え、元気が復活します。(下左)『あと10分だ、ガンバレ』 そして30人以上の登山者で混雑する山頂に到着。(下右)

 駐車場から50分です。ひよこさんは、3度目の登頂になります。天気が良く風も無く、気温が13℃で絶好の登山日和です。紅葉狩りを鈴之助とママは、どうやら桜見物のように紅葉に包まれることを期待していたようです。香嵐渓ならそうですが。


<山頂は近い>

<三方岩岳山頂>12:55

 
<山頂から見る南側の鞍部は色の宝庫>

 周囲には、山や谷が作り出す雄大な景色が一面に広がり、鈴之助は感激にこうべを垂れている?‥そうではないようです。混み合う山頂部で皆のため良い休憩場所を確保したと喜び、飛び跳ねた瞬間、自分の靴に左手の小指を引っかけ、痛さを耐えているところでした。(下左)

 その後、痛みから立ち直った彼をもう少し頂上から先へ行ってみようと誘いました。『くだりは楽だね』 スーパー林道馬狩料金所から登って来た登山道との合流点近くまで探検。(下右) この探検は楽しそうで『もッと行こうよ』そう登山は、好奇心を燃え上がらせるのだ。


<◎*%&#$〜悶絶>

<こっちもきれい>

 当初は頂上ランチの予定でしたが、前述のように信号待ち渋滞の車中でコンビニランチを済ませましたので下山します。皆のストックの長さを調整しなければなりません。ちょっと坂がきつくなりかけた登山道で、ひよこさん、娘、鈴之助と順番に直していくと最後尾のひよこさんと距離が空きました。

 するとひよこさんが、差を詰めようとして岩場でこけました。そばにいた登山者の方が『お〜い、お婆さんが転んだぞ! 一緒に歩かなくてはいけないだろう』 私が怒られました。その通りです。幸い大したことにならなく一安心。ウォーキングはしていても山歩きは久しぶりなので筋肉疲労にしているのでしょう。
 
 
<下山>13:20

 以後は、ぴったりマークして降ります。途中、ダケカンバの巨木を前に記念写真。(下左) 鈴之助『大きな木だろ。きっとここの主だ』と話すとこの言葉が心に残ったようで後日、この写真を見せると『ヌシだ!』と言いました。しかし、登山道は、ぬかるみが多く娘も『きゃあ、きゃあ』言う。(下右)

 岩場で段差がある所は、彼も娘もジャンプして飛び降りています。私はリュックを背負っていることもありますが、ジャンプして降りることなど考えたこともありません。仮にしても『ガシャ』と音がして、カスカスの骨の足首が、きっと壊れるでしょう。


<今日の良き日を残しましょう>

<ぬかるむ道>

 途中、北西に庄川椿春ダム(下左)が望めると鈴之助『ダムに行きたい』という。私が『おや、皆でダムに行ったこと忘れた? シャボン玉飛ばしたろ』と思い出させる。恵那市の小里川ダムです。娘が『3才の時のことは覚えてないでしょ』 あそこはダム見学ができるからまた行くか。

 45分で混雑中の駐車場に下山しました。帰路、高速はすぐ乗れましたが、数kmの渋滞が何か所もありました。ひるがの高原サービスエリアで休憩しようと思ったら入る車が走行車線まで並んでいる。諦めて走るとその出口から高速に戻ろうとする車がその倍ほど並んでいます。


<椿春ダム>

<駐車場着>14:05

 日常を脱ぎ捨てる山旅には、少し努力が必要です。次のぎふ大和パーキングエリアは空いていたので入りました。車中で眠っていた鈴之助を起こし、美味しい牛乳ソフトクリームを食べながら、初登山の感想を聞くと『楽しかった』という総評です。5年後、彼に尋ねたら、この初登山を覚えているでしょうか。
2013.10.20(日)22:35