70  “シラミ騒動

 何年か前ですが、さだまさしのステージトークを集めたCDの新聞広告で見ました。彼の特別なファンではありませんが、トークの切れは有名なので聴いてみたい。ステージトーク大全 噺歌集(ハナシカ)の第1集はCD18巻、1982年から2003年、22年間分のステージトークが90話も収録されています。

 第2集は15巻、2004年〜2011年、8年間分で114話です。価格はいずれも29,800円で全巻揃えれば6万円弱!恐ろしい。歌なら何回も聴けますが、話しだけなので1回しか聴かないでしょう。高いなあ! 諦めます。昨年9月、学生時代のバンド仲間だった稲田君と逢い、私が噺歌集を諦めたことを話しました。

 すると彼が『うちの奥さん、さだまさしファンなので殆どのCD持っている。それあるかもしれない』『いや〜歌のCDなら集めるけど歌なし、話しのみだよ』『一回、聞いてみるわ』 翌日メールが入り『1集も2集も持っていた。次に逢うとき持って行くわ』 驚きました、奥さんはリアルなファンだ。



 3回に分けて全33巻借りました。感謝です。全巻聴くと33時間はかかりそう。第2集は何と開封前、ファンといえど全巻を完聴するのは困難なのでしょう。私はお礼にポール・マッカートニーの最新ベスト・アルバム4枚組を貸してあげただけ。

 カーオーディオに録音して3ヶ月ほどかけ、山行の都度聴きました。内容は少年時代、家族や仲間、故郷の長崎、名曲の誕生秘話など多岐にわたります。話し方はもちろん構成がよくオチがあり、笑い、感動、しんみりさせたり、飽きることなく聴くことができ評判通りの話術です。

 あるコンサートでさだまさしが歌うと、最前列のおばさんが眠むってしまう。トークになると目を覚まし、聴いている。『寝るなら寝る、起きるなら起きてよ』と彼が話しかけると『歌はCDで聴くからいい。トークはここでしか聴けないでしょ』 それほどトークが面白いのです。



 彼は、21才でグレープとしてデビュー。「♪精霊流し」のときに暗い、「♪無縁坂」でマザコン、「♪雨宿り」で軟弱、「♪関白宣言」で女性蔑視と様々に言われました。28歳の時、映画「敦煌」を制作し、35億円の負債を抱えます。

 それを原動力にしたのか、今日までコンサート回数は4000回以上、作った曲は、550作品です。山好きな人は、さだまさしを毎週聴いています。BSにっぽん百名山の主題歌「♪空になる」は、彼が作詞・作曲して歌っていますね。最近、彼を天才かと思わせるコンサートをテレビで見ました。以下はそのときの内容です。

 30年前、親しくしていた指揮者山本直純氏からある話しを聞きました。『戦時中、作曲家の團伊玖磨と芥川也寸志が音楽室にいると机にシラミがいた。“虱だな” “ああ、虱だ” 気づいたのは、ドレミファソラシの7音階に「シラミ」があること。そこで二人は7音階で作詞作曲してみようと考えた。



 そして3行出来たが、今残るのは「♪シラミ シラミ ソラ シラミ」だけだ。さだ君、君なら続きを書ける』 そう言われたら作らないわけにはいかない。実際に「虱 虱 ソラ 虱」を音階通り弾いてみた。

 そのメロディは、オリエンタルでエキゾチック、それにトラディッショナルにも感じる。続きを頑張って作った。ストーリーは‥シラミを見つけた人が、つまんで誰かに見せている。捕まえた人が「虱 見ラレド 見レ虱」‥それを思いついたとき、自分は天才だと思った。

 さて見せられた人は「ソラソラ ドーラ」 奥にいた人が来て「ドレドレ 見−レ」 ここで行き詰まった。そうだシラミの気持ちになってみよう。「虱 見ラレソ- 虱 知ラレソー」 合いの手「ソッソッソ-ラ」 ここまで出来たがオチがない。徹夜したら夜がシラミ‥(笑) そして浮かんだ! 


 「虱 虱 シラ虱 ソド〜」こうして「♪シラミ騒動」ができた。ボサノバ風に編曲して公演で発表したらこれがうけた。気をよくしてると前列の人が『2番は?』『‥おまえはアホか』 この歌は歌詞が変われば、曲が変わるでしょ。

 それなら2番と言うより第2楽章というべきだ。悔しいので作ってみまた。第1楽章でシラミが見つかり捕まった。第二楽章は「♪シラミ逃亡」「見ラレシ 虱 知ラレシ 虱」 「見レド 知レド 虱ファ(は)虱」 やっとファが出てきた。これがメロディに利く。

 逃げたことをそのまま伝えよう。「ファファ(ふぁーあー) ドー知ラソー ファファ ソー知ラソー」「虱 虱 シラ虱 騒動」 さてオチは‥ 「♪ファラッ?(あら)」(大笑;歌で聴くとオチのダジャレは超面白い) 重厚な歌曲に編曲して得意になってホールで演奏したらすごくうけた。



 すると『3番は?』 来る日も来る日も半月考えた。イタリア語のドレミファだけでは無理なのでドイツ語の「ツェー、デー、エー、エフ、ゲー、アー、ハー」を加えよう。1番でシラミが見つかる。2番でシラミが逃げて見失う。3番は、皆が集まり怒こる。

 研究者は集まった人に言い訳をする。北海道の人、諏訪の人が方言で文句を言う。するとシラミを田舎の人が見つける。皆も見つける。すると素人が、シラミを捕まえた。大騒ぎになり見つけた人がガッツポーズで手を上げる。シラミ騒動組曲、第3楽章「♪シラミ− ナイト フィーバー」ができた。 

 振付けして歌います。
『アハ アハ アハ 虱』×4
『虱 ドレ ドレドレ』×2
『虱 空耳 空耳 虱』×2
『エーシラシラシーベー アーソラソラシーラ』
『アレ 虱ラシー ソレラシー 虱ラシー ソーラシー』
『虱見ラレロ 見レ見レ見ーレ ソレ ソレ ソレソレソレソレ ソレソレソレ』 
『♪見レー!』
 

 『どうだ!!! 4番は作らない』


 この歌を聴いて私は、さだまさしは天才に違いないと思いました。全曲YouTubeで見ることが出来ます。

 「シラミ騒動組曲 全楽章ライブ」

2017.02.12(日)22:30