岳行ノート
油木美林 / 長野県木曽町

2007.8.25(土) 江南 5:45発
          晴れ  26℃
往:1時間05分 (バス・ロープウェイ)
復:4時間15分 (小休止含)


 水木沢天然林赤沢自然休養林を昨年訪ねました。今回は、御岳中腹にある油木美林(アブラギビリン)です。林野庁の管理する保護林で代表木はもちろん木曽ヒノキ。

 ここの特徴は、人為が加わって成林した木曽ヒノキの天然林。さらに川には滝がいくつか見られ、それも楽しみです。
 周回ですが、往きはバスとロープウェイを乗り継ぎ7合目まで上がります。そこから油木美林道を辿り、標高1000m近く降るのです。単独となりました。



 参考書は風媒社刊「素晴らしき絶景100」です。参考書は「木曽町観光協会 三岳支部のホームページ」で時刻表、地図などを見ました。
駐車場周辺図


大径木ヒノキのテルペンでリラックス山歩


(百間滝入口バス停)

御岳ロープウェイ
鹿ノ瀬駅

飯森駅

行場小屋

百間滝展望所

不易の滝

こもれび滝



※緑線はバス経路
※青線はロープウェイ
※色線は実測ではありません。
■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」




早めに着いたので倉越パノラマラインを走り、御岳の東山麓を展望しました。
中央の切り開き、白い建物が御岳ロープウェイ鹿ノ瀬駅です。スキー場が山頂方面へ延びています。
その最上部飯森駅から左下へ降り、油気美林を目指すわけです。

 百間滝入口バス停に置車。1合目から歩いてきた単独の方と立ち話します。御岳に歩いて登り、何と反対側の濁河温泉に降りるそうで健脚人だ。

 やがて来たバスは、木曽福島駅からの登山客で8割がた埋まっています。このバスは夏を引き離すほど早く走れません。
(9:35)

※7/14〜8/26の期間限定運行




 25分間乗車(500円)して御岳ロープウェイ鹿ノ瀬駅に到着しました。お花畑を横に見て、1,300円の片道券を購入します。
(10:00)




 ロープウェイは、標高差580m全長2,330mでパノラマ展望です。ゴンドラは、残暑から逃れて14分間一気に高度を上げていく。
 



 飯森駅標高2,150mに着きました。ここでは爽やかでも空気が77%しかありません。遊歩道の南に「しらびその小径」入口です。
(10:25)




 水平道を300m進むと2階建ての行者小屋が見えます。中は驚くほど広く、観光客は、ここまでです。
(10:40)
 



 小屋を過ぎると分岐があります。右が階段登りで山頂へ。今日は左の油木美林遊歩道百間滝方面を歩きます。
 



 すぐに深い森に入り、緑の香りに癒される。道は、良く整備されていて緩やかに降っていきます。

登山道には、キオンがいっぱい。このひと色で歩くことが嬉しくなる。
 


 次第にヒノキが多くなってきました。すると朝、立ち話をした単独の方と出会います。

 埼玉から車で5時間かけて来て、今夜は女人堂小屋で宿泊するそうです。私と同世代ですが、本物の山好きだ。
 


 ようやく百間滝小屋まで来ました。2時間20分もかかりのんびりし過ぎたようです。おや、小屋は使用禁止です。

 静かだった森に滝音が響く。道は200mの高さの崖にあり、ロープに沿って進みます。御岳の下に百間滝が見えてきました。



 すぐ百間滝展望所です。ここには東屋があり山頂を望みながらランチできます。虫が殆どいないのはヒノキのお陰でしょうか。
(12:45)〜



















本日のハイライト百間滝は直線距離で200mほど。滝までの道は崩壊していて行けません。
40mの一条直瀑で「雄蝶の滝」とも言われてます。
100mほど左を見ると「雌蝶の滝」が別谷で落ちている。



 二つの滝の1,500m上に目をやれば、剣ケ峰の鳥居も望遠で捕らえられます。リンクいただいてるtekuさんが頂上に?

 写真を撮り終えたら出発。
〜(13:25)
 

 降りばかりを続けたので結構膝に来てます。美林のいよいよ核心部で見渡す限りヒノキ、イノキ・ボンバイヤー。

 道先案内にこの蝶が、沢山足元にいて単調さがまぎれます。
 




 やがて尾根を左カーブし、沢の木橋を渡ると終着が近いことを感じる。
(14:40)
 

 最後に800段の階段が待ってました。高さ100m以上の崖にへばりついて付けられています。以前ここに道があったのでしょうか?

 この階段の最上部で観光客に『百間滝までどれくらい?』と尋ねられました。『3時間ほど』と応えると驚き顔で帰っていきます。
(15:00)




 沢道に降り、道標通り右へ行けば数分で不易の滝です。昔からその容姿を変えぬとの謂れでその名がついています。(進入禁止)
(15:15)

滝巡り最後は、道標に戻って沢沿いを行き、左を見ます。
このこもれびの滝は、滝壺まで行けました。断然ひんやり、やっと汗が収まります。
そして沢橋を渡れば‥

 左下から車道に上がって百間滝入口バス停に帰着。
(15:35)

帰り道の山側には、おびただしい数の石碑。また石屋さん、宿屋も数多く並びます。
この森で信仰の深さを強く感じました。その力で引かれた道に改めて感謝します。



 帰り、高速のサービスエリアで眠気が襲う前にこの自販機で珈琲を一杯。これが結構楽しみで250円入れると「コーヒールンバ」の音楽が流れ、中央の画面に“あなたのためにドリップ中”と珈琲を入れる様がライブで見えます。

 出来るまで2分くらい「コーヒールンバ」を聞いています。下の扉が開き、ふた付きの紙カップで出て“どうぞ”。この材質が良いので持つ手は熱くありません。しかし、ふたの開いた口から飲むと、けたたましく熱い! 『アーッ』でも美味しい。

 この後、運転中「コーヒールンバ」のメロディが、悔しいけど耳に付いて離れません。 


東海岳行
    名古屋城の万有引力      
 
 名古屋城の天守閣は、私の小学生時代に再建されました。当時はまだお堀の中を電車が走っている頃です。しばらくして学校から遠足でお城へ行きました。外から見ると堅牢な石垣の上に築かれ、屋根の縁が跳ね上がり立派なものです。喜んで中に入ると想像は裏切られ、まるでデパートのようなビル仕様。

 あまりのも近代的なので子供心にもちょっと興ざめしました。しかし立ち直りは早い。整列し黒い背広を着た担任の鈴木先生の注意事項を聞きます。今日は、いつもよりいい服だ。『行って良し』の言葉にみんな賑やかに散らばりました。ぼくは伊藤君と探検に出発。

 『まずは7階の天守閣まで行こう』と階段を駆け上る。らせん状になっていて最上階近くで息が切れ、手すりから見下ろす。『高いなあ〜』渦巻く手すりの枠を貫き、誰もいない1階の床が細長い。突然『おい、どけ!』の声に見上げると上級生の悪ガキ二人が手であっちへ行けをしています。

 覗くのを止め、手すりから離れる。『かーっ』とかすれた声がした後、目の前を白いものが落下して行く。痰を吐いた!下までちゃんと届いたか気になりますが、今顔を出すとぼくたちがやったと思われる。それより天守閣の展望を確かめよう。

 そして色々探検した後、1階の集合場所に戻りました。組ごとに一列に並ばされます。怒鳴り声は鈴木先生だ。遅れそうになり慌ててくる子に注意している。後ろから人数を数えながらぼくの横を歩いていく。もう一度前から数えなおす。近づくと先生の右肩に5cmほどの白い汚れ。

 前の伊藤君に『見た?』『うん』『あれ、先生に当たったのか』『上等の服が汚れたので怒っている』あの時上級生は、誰もいないのを確かめたのに‥。数秒後に鈴木先生が魅入られるようにあのわずかな空間に入り、万有引力の賜物を受け止めた。『奇跡だ!』


 今、名古屋城の本丸御殿再建が準備されています。来年再建工事が着工され、平成22年には玄関が復元される予定です。そのため昨年8月、長野県上松町小川入国有林と中津川市加子母裏木曽国有林で300年ヒノキに斧が入りました。油木美林でないのが残念。天守閣の鉄筋コンクリート作りとは違い、日本建築のお屋敷の出来上がりが楽しみです。 

2007.8.26.23:50