岳行ノート

金草岳 1227m/岐阜県揖斐川町

2009年6月19日(金)


ニッコウキスゲ群落(白倉山手前の斜面にて)



 ここしばらく梅雨らしい空です。しかし、そんな時でも必ずポッカリと天気が良くなる日があります。そろそろ冠山金草岳(カナクサダケ)のニッコウキスゲが花開く頃です。

 昨年は冠山(往復2時間程度)に登りましたので、今年はロングコースの金草岳(往復4時間以上)にします。登山口の冠山峠が1150m、金草岳は1257m。

 標高差は107mと通常なら20分もあれば登頂可能でしょう。しかし地形図を見ると山頂までいくつものピークがあります。ひよこさんのスタミナが試されます。



 教科書は、風媒社刊「こんなに楽しい岐阜の山旅100コース美濃・上」です。
駐車地周辺図
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冠山峠P

布滝の頭

桧尾峠

キスゲ斜面

△白倉山

△金草岳


ランチ

冠山峠P


 ※色線はGPS軌跡

■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」



江南:午前5時45発   23℃
    晴れ、容赦ないUV光線が降り注ぐ
往路:3時間00分 (小休止含)
復路:2時間45分



 国道417号線で徳山ダムを過ぎ、立派な八徳橋手前を左折して徳山会館へ。道路では大勢のお猿さんが脱糞中。

 会館から北西(写真左奥)の金草岳が、今日は見えません。双眼鏡の右対岸に大杉が見えます。帰りに寄りましょう。



 青い空、白い雲‥冠山峠は、いい天気です。準備していると冠山から下山した方が金草岳登山口へ歩いて行きます。

 『W登山だ』私たちもUVカットを施し、石祠へ向かいました。
(9:00)





 ブナや元気な樹木に覆われた青さの薫る道。すぐにトラバースになり、ロープにしがみつきます。

そして岐阜と福井の県境稜線に出れば視界は一気に広がりました。
ちょうど30分で布滝の頭1047mピークです。西方遥かに遠い峰を目指します。
写真右の稜線を左中央へ辿り白倉山。更に少し降った先のピークが金草岳です。
(9:30)

左)キモンガ:黒地に黄色紋が一般的ですが、この山では白色紋がたくさん飛びまわっていました。  中)コアジサイ:薄紫の花、葉の縁の大きなギザギザが特徴的で比較的早く覚えた花です。漢字の小紫陽花の方が詩的で好きですね。  右)ガマズミ:見て良し、味も良し。今が盛りか、あちらこちらで咲いていました。





 ピークからドンドン降り、貴重な標高を150m失います。『登山開始してすぐ下山かい』





 30分かけて鞍部に着くと「水場」の標識が転がっていました。さあ登山。見上げるとヤマツツジが点在して綺麗です。





 咲き終えた石楠花の斜面、そこに垂れるロープで全体重を牽引します。ここが今日一番の急斜面。



 70mを登りきれば桧尾峠です。福井県からの登山道がここで合流しています。休憩中も容赦のない日差し。

 浮き雲に早く太陽を隠してと頼んでも聞いてはくれません。
(10:20)



 腰を上げ、草食動物のような歩みで日光の尾根を進みます。木陰は殆どなくタオルで後頭部を覆いました。

 東方向、中央に三角錐の冠山が、象徴的な山容を見せています。

左)ナナカマド:秋に葉が紅葉するので早く覚えられました。  中)ノアザミ:紅紫色の頭花が、きっちり整列し開花準備万端です。登山道にしばしば現われ葉でチクチクさされます。  右)???:登山道でよく見かけ、すぐわかると思ったのですが‥

白倉山手前の斜面でニッコウキスゲの群落に思わず歓声が出ます。
写真では黄色のドットにしか見えないのが残念。
我が家の大型スクリーンでは、それはそれは‥グチなのか自慢なのか。


 「事情が変わった」白倉山を越え、久しぶりのアップダウンと暑さでひよこさんがバテました。

 道に休憩所(写真中央)を作り、先にランチをしてもらいます。私はリュックをデポして金草岳へ向かいました。
(11:45) 



 15分で山頂1227mに到着。白倉山より標高が20mほど高く三角点があります。山名標がないのが残念。

 西方だけ樹木で遮られていますが、低い笹で展望は良好です。稜線で充分味わいましたので道の駅へ戻りましょう。
(12:00)

途中の斜面を見ると、ここもニッコウキスゲが伸び伸びと咲き誇っています。
今日の道程では、白倉山の岐阜県側の東西斜面がお花畑でした。
そして手短に食事を済ませ、回復したひよこさんと下山します。
(12:30)

左)ニッコウキスゲ:湿原の花だと思っていました。 中)イブキトラノオ:開花前。虎の尾に似ているからその名ですが、今度動物園でじっくり尾を見ましょう。 右)タニウツギ:この花があると、周りが明るくなります。

コバイケイソウは総状花序をつけ、南海キャンディーズのシズちゃんみたいに大柄な花です。
今日は平日ですが、3組4人の登山者とすれ違いお喋りしました。
ニッコウキスゲは、まだ咲いていないのもあり7、8分くらいの開花状況でしょうか。




 やがて布滝の頭(1407mP)に辿りつく。東方の冠岳が、日差しを受け「オードリーの春日」のように胸を張っています。
(14:35)




 下山口近くで冷えたお茶を完飲。次から夏モードの量に切り替えなければなりません。

 登山道は歩けられますが、かなり笹や灌木が覆っていました。



 冠山峠に帰着すると我が車だけ。ちょうど冠山から70代の方が下山してきます。『あれ?車はどこに』

 離れた所に駐車したスポーツタイプのバイクにまたがる。アライのメットを被った。『かっこいい!いい爺ライダーだ』
(15:10) 


東海岳行

    “しろびや杉”
写真@:(左)徳之山八徳橋 (右)徳山会館


 しろびや杉に会うためには、徳山湖最長の徳之山八徳橋(503m)を冠峠に向かって渡ります。そこから二つ目のトンネルを抜けたらすぐ左折。

 東屋がある湖岸広場に車を止め、水平遊歩道を500m歩きます。道には、猿の糞がありますが構いません。8分ほどで進入禁止の柵に出合うと‥
写真A:しろびあ杉根元 写真Bしろびあ杉幹上方
 目の前に「直径2.22m、胴回り7.4m、樹高24.2m」の大杉が、太い枝を四方に張り出しています。触れないのが残念。すぐ上が徳山城跡になっていました。この城は南北朝時代の500年前に築城され、古文書では既にしろびや杉が記されています。この杉の樹齢は何年でしょうか?

 専門家の言葉では、500年以上経過するとこのようにしっかりした枝振りになるそうです。二つのことから500年以上の樹齢があるというのは間違いありません。
写真C:折れた枝の輪切り(徳山会館にて)

平成17年の豪雪で折れた22cm径の枝を切ると年輪が300年刻まれていました。枝から推定すると1000年〜1300年の樹齢があるようです。

 大杉は、しばしば落雷・火災を受けました。そして100年前明治の頃、村の道普請で工事資金確保のため伐採しようとしたことがあります。

 村の根尾惣十郎さんがそのお金を出し、杉は命拾いし伐採を逃れたのです。その後、大杉は永年に渡り優しく村を見守っていきました。
 やがて徳山ダム建造で村が沈むことになります。村人が畏敬の念を持っていた杉の危機です。そこで村は消えても山の中腹にあった大杉と城址は、徳山村と水資源機構が協定を結び永久保存されることになりました。1億1500万円かけ「一本杉の崩落防止に関する工事」で整備されひと安心。ところが‥

写真D:貯水中の秋
徳山会館展示写真)
写真E:平成20年4月21日満水
徳山会館展示写真)
 写真Dはダムに貯水している紅葉の時ですが、右上に深緑のしろびや杉が見えます。右下が小学校です。やがてダム湖は、平成20年春写真Eのように満水になります。そのとき村人は驚きました。右下、深緑のしろびや杉の根元が、水につかっています。

 千年以上条件の悪い場所で育ってきた大杉もびっくりしたでしょう。『ワシ、ずっと上から目線やったたけど、一番下になってもうた。足がビタビタだし‥』とつぶやいたかも。現在、水面は写真Aのように大杉下方になっていました。いずれにしろ生息環境は激変したことには違いありません。

 この影響がないことを祈りたいです。さて杉は上から腐ります。もし、しろびや杉に会いに行くことがあったら注意して天辺も見てくださいね。

2009.6.21/19:35