岳行ノート

木曽駒ヶ岳 2956m/長野県駒ヶ根市

2010年8月6日(金)


シナノキンバイ咲く千畳敷カールを登る



 木曽駒ヶ岳は、バスとロープウェイを乗り継げばいきなり2600mの千畳敷カールに立つことができます。アルプス登山としては、この上ないお手軽さです。

 しかし私にとってそれが逆に高いハードルでした。バスの長蛇の列、下山のロープウェイの長い待ち時間、変わりやすい天気‥

 お手軽さを得るための費用は安くはなく、おいそれとは行けませんでした。「山のいい時期に好天気で空いている日」の3条件が満たされるように画策します。

 そして百名山を目指す日はとうとう来ました。
※話はそれますが、駒ヶ岳サービスエリア(上り)の西側に養命酒工場があり予約なしで見学できます。


 教科書は、るるぶ社刊「山頂駅からの山歩き」です。参考書として「駒ヶ岳ロープウェイ」の公式HPが役立ちました。 
<駐車地>
[-]広域図、[+]詳細図、ドラッグスクロールで移動



菅の台バスセンター

(しらび平駅)

ロープウェイ千畳敷駅

剣ヶ池

中岳

木曽駒ヶ岳

中岳巻道

宝剣岳

八丁坂分岐

駒ヶ岳神社

ロープウェイ千畳敷駅

(しらび平駅)

菅の台バスセンター


 ※赤線はGPS軌跡

■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」


江  南:午前5時15分発  27℃晴れ
駐車地:午前7時30分着 晴れ
 
◎駐車地→千畳敷駅1時間
往:2時間25分(木曽駒ヶ岳まで以下、小休止含)
復:2時間45分(宝剣岳登頂時間50分含)
◆所要時間:5時間10分
◎千畳敷駅→駐車地2時間(RW待ち時間含)



 駒ヶ根インターから菅の台バスセンターに7時35分着。しらび平で降車、ロープウェイに乗り継ぎ千畳敷駅まで1時間でした。

 ここは標高2612m気温20℃!‥前の日曜日に双子山2224mで高地トレをしたので大丈夫。急がず身体を慣れさせましょう。

千畳敷駅の裏に回ると雲海に南アルプス。写真中央、雲に囲まれ頭だけの富士山3776mです。
その右に塩見岳3047m、荒川岳3141m、赤石岳3120mと続いています。
遠望はこれが最後で間もなく全てが雲海に沈んでしまいました。

『あ〜』写真で幾度も見て憧れていた千畳敷カールにため息。2万年前の氷河時代の自然遺産です。

左の尖峰宝剣岳2931mの山頂には独り立つのがやっとの岩があり、カールとの標高差は312m。
始めはここから中央の鞍部を目指しますが、最後の斜面はどう見ても垂直です。
園谷の右にある散策道から進み、早速の剣ヶ池を手前に入れてカシャリ!青空バックが最高です。
(8:45)



 やがて左からの道と合流し八丁坂の傾斜で薄い酸素を認識。咲き乱れる高山植物を撮影しては立ちくらみを繰り返します。
(9:10)

 とうとう雲が駒ヶ根市側から押し寄せてきました。 

(左)クルマユリ[車百合]花びらを精一杯反らせ、お花畑の中では存在感のある色と形です。
(中)チングルマ[珍車]一度聞くと忘れない名前。玩具の風車、稚児車(チゴクルマ)から転じたようです。
(左)ウサギギク[兎菊]葉の形が兎の耳に似ています。小さなひまわりのように見え華やか。



 垂直に見えた坂を登り切ると乗越(ノッコシ)浄土です。昔は厳しい道を越せば仏様が住む極楽浄土があると思ったのでしょう。
(9:50)

 多かった観光客は、さすがここまでは登ってきません。ここからしばらく平坦な道です。飛び抜ける雲の中、左折して行くと‥

 宝剣山荘とこの天狗荘の山小屋の裏に出ます。5分で再び酸素休憩。ひよこさんはあのピークが山頂と思いました。

 あれは中岳です。さすがアルプス、偽ピークとは呼びません。歩きだすとひよこさんがポシェットを忘れ急いで取りに戻ります。
(10:00)

 小屋の右、東面は黒川の源頭ですが、氷河が作ったU字谷です。




 ポシェットはあったけど小走りしたので息が上がります。50mを登るのがつらい。中岳2925mの小さな石祠に拝礼し先へ‥
(10:30)

今度は60m降って90mの登り返し。右に頂上山荘を見て木曽駒ヶ岳山頂を目指します。
駒ヶ岳の名が付く山は、甲斐駒ヶ岳2967m、越後駒ヶ岳2003mなど全国で21山です。
不思議なことに滋賀県の駒ヶ岳780mを境に西日本にはその名の山がありません。



 「三十六峰八千谷」の勇ましい愛称を持つ木曽駒ヶ岳山頂2956mです。山上に神馬が住むといわれ信仰登山がされました。

 周囲の御岳山3063m、乗鞍岳3026mなどビッグな山は、残念ですが雲に隠れています。一等三角点にタッチしたら‥

 長袖を着て風除けランチです。ひよこさんはソーセージの金具が中々噛み切れないよう。
(11:10)〜(12:00)

 頂上の西直下に木曽小屋。昨年、NHK教育テレビ「山で元気に!田部井淳子の登山入門」でルー大柴さん達が泊まった山小屋ですね。



 丸い山頂で充分休憩し、帰路の球形の荒野を見ると中心は宝剣岳。左、青屋根の頂上山荘から道は二手あります。

 往きは真直ぐ中岳を降りてきましたので右の巻き道を歩きましょう。でも崖っぽそう‥
 

分岐点でちょうど巻き道から来た人に様子を尋ねました。私達でも大丈夫のようです。
800mの崖下を見ないようにしても若干のチンさむロード(松本人志の○○な話)。
半分はロープがありますが、ここから無くなりました。往きの中岳直行コースは30分、巻き道は25分。



 宝剣山荘裏まで来ると宝剣岳右下に天狗岩が西を見つめています。

 目指す宝剣岳には山ガール!私達はリュックをデポして‥
(12:50)

 途中、怖がる小学三年生に『怖くない!』とお父さん。上部には鎖がありますが、山頂手前で無くなりひよこさんはギブ。

 怖くないと!は言えません。木曽駒ヶ岳を背景に直立花崗岩を南から北へ回り込み〜

 岩に手をかけると1辺80cmくらいで意外と広く平ら。プレートが埋め込まれていた跡がちょうどいい手掛かりで『どすこい!外交官のチガイ』(13:15)

 『ホーケン!整いました』宝剣岳2931m、独り分の敷地から岩間で待つひよこさんに宝剣サイン。眼下のカールや四囲を撮影して10分ほど山頂で過ごします。

リュックの置き場まで戻ると50分の油断できない緊張で咽はカラカラ、背中はパンパンになっていました。
登ってみて個人的にあの山頂は、最も山頂らしい形だと思います。もう一つ、

その頂きで立った人の体勢が南向きになる理由は、北側から上がるためとわかりました。
再びリュックを背負い乗越浄土まで来れば、花咲く千畳敷カールが見え重圧から解放されます。
(13:50)




 やがてカールに白い波が打ち寄せるとオットセイ岩に会いました。10分もすると波は消え‥今日はこの繰り返しでした。
(14:05)

(左)シナノキンバイ[信濃金梅]鮮黄色は、今日のお花畑の主役です。
(中)ヒメウスユキソウ[姫薄雪草]:絶滅危惧種で中央アルプスの砂礫地で空気中の水分を頼りに自生。
(右)チシマギキョウ[千島桔梗]色合いに何ともいえない品があります。中岳巻道の崖下に向かって群生していました。

 「天空の花 風に踊る」心に残る山行でした。ロープウェイは1時間待ち、駅のベンチでソフトクリームを食べ、花を見て鼻歌。

 ♪ぼくには夢がある 希望がある そして持病がある〜心に残るメロディです。明るく手を広げ北村総一朗さんが名演技。

 彼は74歳、持病って何だろう?などと考えていれば時間は過ぎます。
(14:45)


東海岳行
   “基礎駒ヶ岳  

<駒ヶ岳のお花:その1>


(左)ハクサンイチゲ[白山一花]高山植物の代表選手。群生します。
(右)花が終わったものだと思いますが、何でしょう?
(中)コマクサ[駒草]駒は若くて盛んな馬、蕾の形が馬面に似ていて名づけられました。開花して花弁が反転すると馬面が消えます。



 花の木曽駒ヶ岳登山のため、ネットで下調べしました。今回、参考書にした「駒ヶ岳ロープウェイ」は、とても準備には役立ちます。その中の「山登りHow to」では、時期ごとの服装やコースの撮影ポイントなどが明示され親切クンです。また「高山植物図鑑」を見て事前に花の知識を得ました。


1.天気と状況確認
 「登山天気」木曽駒ヶ岳現地の過去・現在・週間予報を確認。山の現在状況は、駒ヶ根市からの「駒ヶ岳ライブカメラ」、そしてホテル千畳敷からの千畳敷と南アルプスの現在画像で見ることができます。また開花状況は「ホテル千畳敷スタッフブログ」をチェックしました。

2.アクセス

 「駒ヶ根インター」(車)→「菅の台バスセンター」(バス)→「しらび平駅」(ロープウェイ)→「千畳敷駅」


3.バス
 一般車両は、ロープウェイ駅へは進入禁止です。駒ヶ根市菅の台バスセンターで駐車(有料500円)し、路線バスに乗るのが基本。その「時刻表(PDFをクリック)」は定期運行用ですが、バスセンターでは乗客の並び具合を見て随時臨時バスが出ます。立つ人はいなく補助席を利用して1台50名ほどの乗車人数です。

 当日、私は公共駐車場(無料:場所?この岳行ノートでわかりますね)から徒歩数分でバスセンターに到着。右写真、三角屋根の売場で「バス+ロープウェイ往復乗車券」(1人3800円)を購入しました。

 5分後に来た7時42分発のバスには乗れず、積み残し組となります。係員がすぐ臨時バスを手配したので数分後に乗車できました。標高差812m(850m→1662m)をローギア強化バスで40分揺られます。


4.ロープウェイ
 バスの終点しらび平駅(下写真)からロープウェイに乗り換えれば、千畳敷駅までの標高差950m(1662m→2612m)を7分30秒で運んでくれます。定員61人なのでバス1台分の人数なら楽々。なおバスもロープウェイも年中無休の運行です。片道料金1900円÷交通機関で稼ぐ標高1762m=108円/100m。

 つまり標高100mの上昇費用は108円ということです。ペットボトル飲料1本分が安いのか高いのか。因みに愛知県一宮市のタワー、ツインアーチ138の100m展望台にはエレベーターで上りますが、500円の入場料が必要です。そう考えれば心が休まります。


5.帰り
 下りのロープウェイは混むため「混雑カレンダー」で空いている日を探しました。基本平日ですが、それでも午後になると千畳敷は団体客でごった返します。午後1時頃までなら比較的早く乗ることができるでしょう。

 混雑してくるとアナウンス告知があり、千畳敷駅で乗車順番札(整理券)をゲットします。私達は午後2時45分に下山したので406番。 1時間待ちと言われ『やれやれ』と思いました。60人乗りなので60番単位で呼び出しされます。時刻表は20分毎ですが、そんな悠長なことはしてられなくピストン輸送に切り替えられるのです。

 2台が10数分間隔で輸送すれば1時間300人の脱出作戦。係員が言うには、どうも1時間待ちなら運がいい方で土日は、3時間待ちが当たり前で感動の5時間待ちもあるとのこと。混雑時はバスもロープウェイも営業時間が延長され、夜10時まで臨時バスが運行することもあります。その時、空腹はどう処理するのでしょう。



※裏技:高速の駒ヶ根インターで下り県道に出ると、そこに広い有料駐車場(400円/1日)があり、その前の女体入口バス停からも乗車できます。駒ヶ根駅からバスが来て、そこから次の菅の台バスセンターへ走るので来たバスに乗車できるでしょう。

 ただ欠点があり、帰りの臨時バスはしらび平駅発でバスセンター終点です。女体入口バス停までは、定期運行のバスしか走ってくれません。その場合、駐車場まで寂しく1.8km歩くことになります。また土日祝は1000円高速ですが、平日は半額の通勤割引と3割引きの平日昼間割引の合わせ技です。




<駒ヶ岳のお花:その2>

(左)オンタデ[御蓼]御岳山で最初に発見されたのでこの花名です。
(中)タカネグンナイフウロ[高嶺郡内風露]山梨県郡内地方で発見されたのが郡内風露、それが高地で咲くものと区別しています。
(右)モミジカラマツ[紅葉唐松]葉の形は紅葉に、花はカラマツの葉に似ています。繊細な造りです。
10.08.08(日)22:00