岳行ノート

奥越・経ヶ岳 1625m/福井県大野市

2012年6月5日(火)


山頂より降る 中央の中岳、その左ピークの杓子岳は外輪山

斜面左下、ブナ池ノ沢湿原が火口跡


 白山は未踏で、いつか登ってみたい。先週、荒島岳に登り白山の展望を期待したのですが、頂きが雲海から覗いているだけでした。

 そのフラストレーションを開放するため、より白山に近い経ヶ岳(キョウガタケ)へ登ります。「登り谷、降り尾根」で唐谷コース保月山コースの周回です。
 
 唐谷コースは、火口跡の池ノ大沢湿原を通り、そこから見上げる火口壁の光景が楽しみ。登山口が4km近く離れ、車2台体制を取ります。


 先週に続く野良人さん、博士の3人で300名山に挑戦。教科書は、山と渓谷社刊「名古屋周辺の山200」です。
<駐車地>
[-]広域図、[+]詳細図、ドラッグスクロールで移動
 東海北陸道白鳥ICで下り、国道158号線でJR九頭竜線下唯野駅へ走ります。下唯野駅から県道26号線で北上…



唐谷駐車地→池ノ大沢湿原→▲経ヶ岳→▲中岳→▲杓子岳→▲保月山
展望所駐車場
(車)→唐谷駐車地

 ※赤線はGPS軌跡

■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」


江  南:午前6時15分発  曇り/20℃
駐車地:午前8時50分着  曇り/19℃
往:4時間35分(三角点まで以下、小休止含)
還:2時間00分
◆所要時間:6時間35分
 南六呂師地区で「林道法恩寺線」から林道へ入ります。4km上がるとヘアピンカーブがあり、200m先のスペースに停めました。(左上)

 ガイド本「ゲートのある所から入る」で、上へ行く道にゲートがあり、5分登ってみます。ところが本の地図(右)では、ヘアピンカーブの頂点から登山道の点線(A)があり、そこにも林道ゲート‥?

 一度戻り、カーブの頂点へ行くと踏み跡があり(右上)『ここだ、ここだ』とワンダーランドへ入場しました。しかし、ゲートはなく激藪に迎えられ‥(9:10)
 進んでも踏み跡すら発見できず、『川を歩こう』と野良人さん。道を外しているかと疑問が沸きますが、本のルートは渓谷を遡行しています。行きましょう。野良人さんは、ルートを見つけ誘導してくれました。(左上)

 しかし体力を消耗すること甚だしいく、現れた大突堤を必死で回り込み枝沢へ方向を変え、地形図の林道を目指しました。(右上) 荒れた林道で(B)歩きやすくなりましたが、行程の1/5の距離しか進んでなく、1時間40分もかかっています。どんだけ〜!(10:50)
 林道は標高900m辺りのヘアピンカーブで崩壊。本では、更に沢沿いを進みます。(C) 踏み跡(左上)があり、進入するとまた激藪! 堪らず谷へ降り、20分沢歩きすると、右岸上に登山道発見! もう大丈夫。その道はすぐ左岸へ渡渉し、ブナ林を登ります。(右上)

 もう一度渡渉し、右岸の涸沢を行くと残雪に沢山のテープが教える支尾根取付。強烈な直登にはロープ。
(12:15)

 お腹が空いてきました。登ってもブナ林の急登が続き体力を使います。突然、最後尾の博士が『あっ』と叫ぶ。
よっこいしょと上かけた足が滑り、尖った岩に弁慶の泣き所を打ちつけました。
しばらく声が出なかったのですが、幸いにも打ち身で済みました。
摺り傷に応急手当し、休憩してアミノ酸とエネルギーを補給します。

その先が憧れの池ノ大沢湿原。 100万年前、経ヶ岳が噴火した火口原。
水芭蕉は見つけられません。ブナナナカマドの群落で秋はパラダイスでしょう。
踏み跡とテープを追い左へカーブします。
(13:05)

 整いました。 (左)サンカヨウ  (中)キジムシロ    (右)キクザキイチゲ
 3,4分で切窓のコルです。強風が吹き抜ける。取り敢えずランチしてリュックをデポして山頂を目指します。

 足を痛めた博士は、無理せず登頂を諦め戻ると言われました。野良人さんと向かいます。
(13:15)〜(13:40)


 最初、はつらつと登りましたが、乳酸が足に溜り、急登がきつい! 森林限界なのか立木がなく風もきつい。

 広々した山頂からの眺望はダイナミックです。運が良ければ御嶽山・恵那山まで望めます。山頂標の向こうに待望の白山。(14:05)

 北へ80mの二等三角点にタッチ。あと20m笹海を泳ぐと、右に一段高い場所の笹が倒れ、そこへ登ると‥
壮大なパノラマが広がる風景。『白山が見れて良かったなあ』
 奥左:白山御前峰2702m、右:別山2399m。別山から右へ三の峰二の峰一の峰
次段左端:大長山(オオチョウザン)1671m、中央右:赤兎山(アカウサギ)1629m。大満足です。

 経ヶ峰は、安土桃山時代(1574年)に一向一揆で平泉寺が焼き討ちされ、焼けた経巻の灰を山頂に埋めたことに由来します。驚くことに1997年、山頂から1520年代の銘の経筒が発見されました。
どの辺りで発見されたか、記念碑があれば驚きを分かち合えます。
(14:10)

 切窓へ戻り、笹道を登ります。風は益々強い。タムシバは、日本海側のブナ林に見られます。
(14:50)

 中岳1467mに着き、振り返ると経ヶ峰が見送っているようです。



 正面、遥か荒島岳1524mが大野盆地へ裾を下ろしています。まだ樹木は現れません。もう一度振り返ると‥

 左ピークが経ヶ岳で右直下が、噴火の名残りの火口跡、池ノ大沢湿原です。
湿原は、山頂から西尾根と南尾根の火口壁に囲まれた素晴らしい空間です。九頭竜川の支流唐谷川の源流でもあります。

次の杓子岳(右シャクシタケ:釈氏ヶ岳)1440mを過ぎると
ダケカンバが現れ樹林帯になりました。
(15:05))

 道にはミツバオウレンの群落。

 イワカガミ群落。


 尾根には、尖った巨大な溶岩が露出しています。牛岩と呼ばれ、この南側をいくつもの梯子で巻きました。
(15:25)

 (左)アカモノ      (中)ウラジロヨウラク:     (右)ムラサキヤシオ 


 ブナ林を降りると保月山(ホヅキヤマ)1273m三等三角点の広場。樹林に囲まれ展望はちょっとだけ。
(15:40)
風は収まらず3mの枝が折れて道をふさいでいます。
周囲の新緑は密度があり、緑に染まってしまいそうです。
突然、道の真ん中に「アダムとイブの木」と名付られた合体木。

長野の赤沢自然休養林サワラヒノキが結ばれた木がありました。
(15:50)

 法恩寺林道の登山口到着。下山した保月山コースは、変化があり、花が咲きいい道です。デポした車の駐車場は、南東へ200m‥(16:10)

 大野盆地を望むパノラマ展望休憩所前です。車に乗れば5分で‥
(16:15)
 唐谷の駐車地。エンジンをかけると森に廃ガスをかけます。後ろめたさを乗せ、車は林道を走りました。

 県道で振り返ると道路標識右が保月山経ヶ岳はピークに隠れています。

 そこから下がった右の稜線は、南へ延びる火口壁。唐谷コースは、どの道を行くのでしょうか。
■kitayama-walkさんより
 '12/6/30山行:唐谷コースは、駐車した所から林道に入るのが正解。20分林道を歩くと、左に登山道の入口があり、入った所の左の岩に磨崖仏
(これを見たかった)があります。この日は、下草を刈ってあり、登山道ははっきりしていました。2回渡渉し、涸れ谷に入っていくのです。‥やはり


東海岳行
   “低音  

 私は中学のころにオーディオに興味を持ちました。レコードは、同じアルバムでステレオ盤とモノラル盤が2種類販売されていた時代です。いい音でビートルズを聴きたくなります。高校生になると科学雑誌を購読して学び、バイト代で真空管式のラジオを自作でするようになりました。

 手作りラジオと家のラジオを並べ、NHKの第一放送と第二放送で行うステレオ実験放送を聞きました。『おお、機関車が右から左に走る。川が流れる』楽しい時間です。やがてハンダこて片手にアンプを作り、木工所で切れ端を貰いスピーカーを作り、友人が作ったのと聴き比べしたりします。

 近所に人からスピーカー作りを頼まれもしました。社会人になるとオーディオ業界は全盛期となり、パイオニア、トリオ、サンスイ等のメーカーがしのぎを削ります。当時、パイオニアが画期的なスピーカーを発売。高音用ツイーターが極薄の金属板を振動させ、きらめく音が出ます。



 その下に中音用スコーカー、30cm径もある低音用ウーハーはドスンという重低音です。欲しくって価格が給料の2ヶ月分ですが、初めてローンを組んで手に入れました。夜、家で視聴用のレコードをプレーヤーに掛け、蒸気機関車を聴いて見ましょう。

 アンプのボリュームを最大にしてもスピーカーは充分耐えられます。ボッ、ボッ、ガタンゴトン。すごい迫力で部屋の中を走り抜けました。最高級スピーカーの重低音は違う。警察から家に電話が、掛かって来ました。近所の人が迷惑してると親にひどく怒られた。当たり前です。

 人の可聴周波数は、20Hz(ヘルツ)〜20,000Hz。この周波数範囲は、若い人のもので40歳を過ぎると落ち込みは激しく、60歳では50Hz〜10,000Hz位です。生活には差し支えありません。因みに88鍵ピアノが出す最低音は27.5Hz、最高音は4,069Hz、中電は60Hzの交流電気です。



 現在、人に聞こえない低音が健康問題になっています。風力発電のプロペラが出す超低周波です。ところが70年以上前にこの超低周波を利用した人がいました。ビートルズポール・マッカートニーが後年、プロデューサーのジョージ・マーチンと昔の思い出話をしました。

 ポール『あなた(ジョージ・マーチン)は、スタジオで実験をした。オシレーターを使って「聞こえる?」と聞く。ぼく達(ビートルズの4人)は、若い耳を持っていたので「まだ聞こえる」と答えるとそれをどんどん上げる。ピ〜、そのうちぼく達が「聞こえなくなった」と言う。

 「良い耳だ。今度は下げるよ。聞こえる?」と聞く。ブ〜、下げていくにつれ、ぼく達は「聞こえるけど変な気分になる」そこであなたは、ヒトラーの話を聞かせてくれた。ヒトラーの取り巻きのメディア戦略担当者は、この効果を知っていた。集会の前、誰にも聞こえない低周波の音を流す。



 そこにいる全員が「気分があまり良くない」と感じる。ヒトラーが現れる数分前にその音を止めると‥みんなは「あれ?気分が直った」と不思議に思う。それでヒトラーを好きになる』
 低周波を悪用した事があったとは‥すごい小話です。

12.06.11(月)22:45