岳行ノート
         あまかざりやま
雨飾山 1963m/長野県小谷村

2016年10月15日(土)


笹平の登山道は、「女神の横顔」を描く

美人の条件の一つ:鼻先と顎を結んだ線の内側に唇が入ること

←ウィンドウズ10のスタート画面で7月、この横顔が現れ驚きました。





 雨飾山は雨を祀る山、雨に飾られる山と呼ばれました。ロマンチックないい名です。初夏は花山ですが紅葉も素晴らしく、「双耳峰」です。

 百名山でとても人気があり、盛期には多くの登山者が押し寄せます。花か紅葉か悩みましたが、紅葉登山に決定しました。

 雨飾荘HPで紅葉情報をチェック。早いかと思いましたが、天気予報と自己都合で15日(土)に登山します。我が家から300kmの長距離。


 家から駐車場まで5時間、前夜は車中泊します。しかし週末なので、早めに出ましょう。

 教科書は、山と渓谷社刊「新・分県登山ガイド/長野県の山」です。参考書に多くのHPのお世話になりました。
<駐車場>
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大きい地図
 長野自動車道安曇野ICで下ります。21時半に着くと既に50台が停まり残り10台、セーフ。





雨飾高原キャンプ場駐車場

ブナ平

笹平

▲雨飾山

雨飾高原駐車場


※赤線はGPS軌跡
●は主な分岐点



■この地図の作成に当たっては国土地理院長の承認を得て同院発行の数値地図50000(地図画像)数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである(承認番号 平17総使、第98号)」


江  南:午後4時15分   晴れ/23℃
駐車場:午後9時35分   晴れ/4℃(翌朝5℃)
標高差:1013m (950m→1963m)
往:4時間00分(山頂まで、小休止含)
還:2時間50分(ランチタイム除く)
所要時間:6時間50分

 3シーズン用寝袋で寝たら、寒さで5時半に起きました。車内5℃。登山者の車が入って来て6時には満車です。

 車中泊だけでなく左の高台でテント泊10張。良い天気、右奥に山頂が少し覗いています。奥のトイレ棟へ。
(6:45)


 その横が登山口です。新鮮な光を浴びる峰なす山が、これからの登山を鼓舞してくれます。始めは平坦道の歩き。


 湿地になると木道が400m続きます。沢でイワナが虫を食べようと飛び跳ねる。5月には水芭蕉が咲く道を行くと‥


 15分で平坦な道は終わります。ここからいよいよ本格的な登りです。
(7:00)


 根っこ階段を登っていくとドンドン後続の登山者に抜かされる。1000mの標高の旅は私には長丁場部門です。
ブナが現れ、木肌が2段です。下部は普通の樹皮、上部は苔が付いています。
積雪が7〜8mもあり、雪と接する幹には苔が生えないそうです。
平坦な場所に出ると、ブナが囲むブナ平です。
大木がボコボコ。今日は30分ごとに5分の休憩です。
(7:45)


 30分登ると視界が開け、山頂方面の展望地に出ました。そこからこの荒菅沢(アラスゲサワ)へ向かって降ります。
荒菅沢に立つとお馴染みのアングル、さすが実物は迫力があります。来て良かった。
冬、ここの雪渓は長さが1km、厚さは10mにもなります。
永年、雨や雪、風に削られ、ダイナミックで峻険な山容です。
 
地元の猟師が、荒菅沢奥壁を「布団を干すのに丁度良い」と言い布団菱と呼ばれています。(説)
正面の尖った岩の裏が山頂です。撮影休憩に15分、この名所で過ごしました。
(8:25)

 荒菅沢の左尾根に向かい山腹を辿ると展望が開けます。尾根に出ると東に焼山2400m。

 山頂ドームが水蒸気を噴出。白煙は多くなったり消えたり。新潟唯一の活火山です。 

 尾根道は、岩場が続きます。笹平まで苦しい登り。アサヒビールが寄付した2連梯子↓を登ると緩やかになり‥
はしごから 15分で広大な笹平の北端ピーク1894m、長野・新潟の県境に出ました。
一面に低い笹が生い茂ります。笹の葉は日本海の北風に晒され、枯れるので高く伸びません。
そのため日照が地面に届き6〜7月には、多くの高山植物が咲き誇ります。

南西に笹原に壁のように立つ山頂ピーク。急斜面を登る登山者が列をなす。
右の人だかりがある峰が北峰と言われ、左に少し離れた南峰が山頂です。
ここで疑問、「双耳峰」ってこの右左二つの峰? パンを一個食べ、20分休憩しました。
(10:10)

 笹道を歩くと日本海に面した新潟県糸魚川市の眺望。左のS字に流れる根知川雨飾山を源頭としています。

 この展望は、太平洋岸に住む私にとっては新鮮で感動モノです。


 笹平の中に小高い裸地があり、パーティがランチ中です。左に焼山・火打山2462m。


 裸地からは、山頂への急登が望めます。登りと降りの登山者が、すれ違いに苦慮。

 私も渋滞に巻き込まれました。待つ間振り返ると荒菅沢の源頭部。深田久弥は、この崖を登ってきたようです。

 崖淵の道左に池が見えます。歩いた時は笹で気づきませんでした。最後の急登で‥

 雨飾山山頂1963m二等三角点山頂。ここは「猫の耳」と呼ばれる「双耳峰」ですが、北峰はわずか30m向こう。

入れ代わりの記念撮影。粘って奇跡の一枚を撮りました。パノラマをおかずにランチします。
(11:05〜11:35)

代表展望は南西の後立山連峰、中央奥が白馬岳2932m。
『連峰の左方に槍ヶ岳が見えるけど今日は霞んでダメだな』と登山者がぼやきました。
では北峰に寄り、下山します。(地形図は北峰が、西にありややこしい)

 笹平で一休み(12:05) 
尾根を急降すれば、解き放たれた大地の色彩が、視界の中で広がります。

 秋色のカプセルの中を進むのは至福の時間です。左下に女子のソロ。今日は、500人〜1000人は登山されるでしょう。

 荒菅沢に着いたら再び景色の魅力にひかれ15分休憩しました。
(13:10)
 冬の豪雪が育んだ自然が息づく雨飾山 。紅葉の見頃には少し早かったけど自然の歩む速度に寄り添いましょう。

 この山の登山道は、バリエーション豊か。秋晴れ爽やか登山を満喫した山旅でしたが、長丁場に疲労感もお持ち帰り。

ブナ平(14:00) 駐車場着(14:45)

 
東海岳行
  “「猫の耳」の謎”

 深田久弥が60年前の昭和32年10月、3度目の挑戦で後の妻となる志げ子さんと「猫の耳」と呼ばれる双耳峰の山頂へ到達。「左の耳は僕の耳 右ははしけやし君の耳」と詠みます。「はしけやし」は古語で「愛しい」の意味。新潟の雨飾温泉から2度登りましたが、ルート不明で断念しています。

 3度目の正直、長野の武田信玄の隠し湯小谷温泉(オタリ)から大海川(オオミ)を登り、荒菅沢を詰め、奥壁の布団菱(フトンビシ)から山頂に至りました。(下左) 急斜面をよく登ったものです。私には、ムリムリカタツムリ。雨飾山の長野側は、しばらく深田久弥が辿った上級者向けルートだけでした。

 昭和44年に雨飾高原キャンプ場からのルートが引かれ、家族連れでも楽しめるほどの山になります。山頂から西にある峰には、4体の石仏が祀られています。(下中) 向きは北西、越後の糸魚川市方面です。雨飾山は、もとは里が近い越後の山だったですね。


 江戸時代、糸魚川地方で羅漢上人が石仏を彫り、麓の梶山新湯(雨飾温泉)から担ぎ上げました。その道は、笹平で私の歩いたルートと合流しています。(上右) 2人の山ガールが雨飾温泉から登ってきたので聞くと『3時間くらいかな』 麓から山頂の東と西の峰が双耳に見えないと思います。

 NHKBS「にっぽん百名山」で里から霧の雨飾山を見ました。(下左) 長野側ですが、ズームすると見事な「猫の耳」双耳峰。(下中) 左ピークが少し高く右ピークは、岩ゴロ斜面です。峰は三角形で明らかに上の岳行ノート11コマ目、笹平から見た二つの峰と形も大きさも違います。

 地形図ソフトカシミールでどこからなら「猫の耳」に見えるか、撮影場所を探しましたがわかりません。番組では新潟の雨飾温泉(北西)から見た山頂も映していました。(下右) これを見て「猫の耳」というのはちょっと苦しい。深田久弥は、著書「日本百名山」で次のように書いています。
 

 「北側から仰いだ雨飾山はよかった。左右に平均の取れた肩を長く張って、その上に猫の耳のような二つのピークが仲睦まじげに寄り添って、すっきりと五月の空に立っていた」 山頂で「案外近く、三十米ほどしか離れていなかった。下から眺めてあんなに美しかった、その二つの峰に立った、喜びで、私の幸福には限りがなかった」

 「猫の耳」はどれ? ネットで調べると西尾根の1842mピークや笹平北端の1894mピークではないかという方がみえました。いずれにしても深田久弥は、当時「猫の耳」のピークを勘違いしてたように思えます。NHKで確認できればいいのですが、、、できないでしょうね。

2016.10.24(月)20:50