おおやれい |
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大谷嶺(大谷崩) 2000m/静岡県静岡市 |
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2020年10月25日(日) 無残大谷崩 (左の緑地は山梨、右の静岡側が山崩れ、落差800m) |
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この山を知ったのは、山のガイド本でなく新聞の文芸欄に載った幸田文(アヤ)著「崩れ」です。彼女は72歳で大谷崩を見て衝撃を受けます。 その後、各地の土砂災害跡を訪ね本を書きました。大谷崩は、日本三大崩れの一つです。そのくくりを私は知りません。猛烈に興味が湧きます。 写真で様子を見ると‥すざましい有様。(下)これは行かねば。参考書は「あの頂を越えて/大谷嶺」さんです。 |
<駐車場> ドラッグスクロールで移動 大きい地図 |
新静岡ICで下り、駐車場まで36km走ります。安倍川沿いを県道29号線で北上し、赤水滝を過ぎて大谷川を遡ります。 |
大谷崩駐車場 ↓ 砂防堰堤 ↓ 新窪乗越 ↓ ▲大谷嶺 ↓ 新窪乗越 ↓ 大谷崩駐車場 ※赤線はGPS軌跡 ●は主な分岐点 ■この地図の作成に当たっては国土地理院長の承認を得て同院発行の数値地図50000(地図画像)数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである(承認番号 平17総使、第98号)」 |
江南発:午前5時05分 晴れ/13℃ 駐車地:午前8時10分 晴れ/7℃ 標高差:(1230m→2000m)770m |
往:3時間20分(山頂まで、小休止含) 還:2時間30分(ランチタイム除く) 時間:5時間50分 |
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標高1230mの大谷崩駐車場は、10台駐車中です。右に車両通行止ゲート。その先の歩行者通路を登ります。 (8:30) |
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途中の工事事務所仮設トイレは利用可能です。5分ほどで大谷嶺登山口。未舗装の林道を歩くと、すぐに‥ (8:35) |
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林道終点広場。(振り返った写真) 大谷崩は扇状の形で崩れ、この辺りに集合。「扇の要」の看板が立ちます。 (8:40) |
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土林道終点からいきなり石の河「一の沢」。土石流の河原を渡ります。 一旦、雑木林に入り、抜けると‥ |
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再び石の河「二の沢」。本谷沢と鞍部の新窪乗越が、上方に見えました。登山道は、あの本谷沢を詰めていきます。 |
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再び樹林帯に入ると大きな砂防堰堤に出合いました。左の私標「扇の要」は誤りでしょう。堰堤を右から迂回します。 (8:55) |
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樹林帯は苔に覆われ、自然は山崩れから力強く回復しているようです。ただ木々の幹はどれも細く土壌が肥沃なではないのでしょう。 |
道の真ん中に大岩どでん。コースには、岩石に赤ペンキマークがあり、よく整備されています。 (9:15) |
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ついに樹林が消え本谷沢突入。谷底の落石列を避け、少し左に踏み跡があります。 小さなケルンやペンキマークが誘導しますが、大雨後はマーク石や踏み跡が崩れるようです。 メンテされる方々の尽力でルートは維持されています。 |
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山崩れの登山道は歩きにくく、急勾配の喘登です。しかし、谷の上は青空と紅葉が素晴らしい。『幸せ』 足下は‥ |
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ザレ場。でも小石がつまっているので、思ったより滑りません。大きい岩は、メンテの方達がどけています。 |
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振り返ると‥何もいえない。これだけの崩壊地の登山は、貴重な経験になります。 来る前、大谷崩で紅葉は期待できないと勝手に思っていましたが、期待の100倍以上です。 |
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灌木が増えたら待望の新窪乗越1850m、80歳のご夫婦も到着。2時間で標高630m上げ残り150mです。 (10:35) |
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稜線は静岡と山梨の県境。崩落の境にはロープが架かります。振り返れば、中央奥に山伏(ヤンブシ)2014m。 |
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崩壊地のギリギリ登山道は少なく、やや下がった山梨側をトラバース。でも空気は薄い。偽ピークにガッカリして‥ |
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大谷嶺ピッタシ2000m、三角点無しの山頂広場。次々登山者が到着します。眺望良し、ここでランチ。北に‥ (11:50)~(12:35) |
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南アルプス3000m峰。左:赤石岳3120m その右:荒川岳(中岳)3083m、右端:悪沢岳3141mです。 |
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南東方向、奥左端:十枚山1726m。右下に石の河ですが、画面の真ん中左が駐車場です。 左上、切れ落ちた崩壊地ギリギリに大阪のソロの方が立つ。『崩れても知りまへんで‥』 私が珍しく途中で追い越したソロの55才の男子が登頂されました。 コロナ禍で退職して今は、『痩せるために登山してます』 大きな腹を撫でます。 息も絶え絶えですが、昨日も隣の山を登ったと言われ、決意はハンパじゃないようです。 |
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沢山レポを見ましたが、富士山画像はありませんでした。50m南東へ行くと‥おっ日本一!テンションが上がります。 |
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下山時もシャッターは忙しい。頂上から50分で新窪乗越着。 (13:25) |
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「Go to 山崩れ」の後半、道で小石に滑り2回尻餅。『全集中 壱の型 崩れの歩行』 でも急降道の下山は速い。 はるばる来た甲斐がある山旅でした。 駐車場着(15:05) |
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東海岳行 |
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“番外編:大谷崩” | |||||||
「日本三大崩れ」は、大谷崩(オオヤ)2000m(静岡:1707年発生)、稗田山崩(ヒエダ)1443m(長野:1911年発生)、立山の鳶山崩(トビ)2616m(富山:1858年発生)です。大谷崩は日帰りできますが、残り2つは、白馬乗鞍、立山の近くでお泊まりが必須。 あれ、富士山の大沢崩(下左)が入ってない? しかし、静岡には「駿河三大崩れ」があり、富士山の大沢崩、安倍奥の大谷崩、静岡市~焼津市の大崩海岸です。山崩れは、鳥取の大山、恵那山の天狗ナギ、岐阜の三方崩山、鈴鹿の綿向山の文三ハゲ(下右)など、身近で見たり登ったりしました。
登山した大谷崩の山体崩壊は、数百年~数千年の単位で続いていると推測されます。特に富士山の宝永噴火49日前に発生した1707年の宝永地震で大きく崩れました。標高2000mの大谷嶺から標高差800mに渡って崩落しています。 南アルプス一帯は、プレートが年間4mm(百年で40cm)隆起し、崩れやすい地質と相まり、大谷崩は現在進行形です。その登山道は脆弱で、大雨が降るとルートがわからなくなります。「静岡の山と渓」さんが、登山道を整備されているお陰で安心登山が出来ました。ありがとうございます。
大谷崩駐車場から2分登ると幸田文(幸田露伴の次女)の文学碑。(上左) 転がってきた大岩に「崩壊は憚(ハバカ)ることなく その陽その風のもとに、皮のむけ崩れた肌をさらして、凝然(ギョウゼン)と、こちら向きに静まっていた。無残であり、近づきがたい畏怖があり、 しかもいうにいわれぬ悲壮感が沈殿していた」 登山道から見上げると崩れた斜面で崩壊防止工事が続く。(上右) ロープネットを張り特殊モルタルを吹き付け(写真右側)、急斜面に柵で階段を作り(写真左青色)、表流水の抑制と表土流失を防ぎます。それにしても危険な工事だ。 谷では砂防堰堤を設けたり、床固工処理をしたり、崩壊との闘いは果てしない。対策工事で大谷崩にも少しずつ緑が戻り、紅葉の彩りを楽しめます。帰路、駐車場から車を出すと突然道路を横切るカモシカ。姿が消えたのでいないと思ったらこっちを向いてます。(上右) 『誰が、鹿や!』と突っ込まれた、、、好奇心のアクセルをふかし、行動力のタイヤが回り、大崩れを体験出来ました。 |