大 ８ “オランダのイタリア人と犬” 07.02.20先週末は天気当たりが悪く、山へ行けませんでした。折角お越しいただいたのに申し訳ありません。旅の“大道草”をしたためましたのでよろしかったらご覧ください。 1.旅 言ってみるものです。オランダで業界のセミナーがあり、会社に参加したいと申し出たところ許可が出たのです。10数社参加し各社一人づつです。同行の人たちに知人はいません。アムステルダムに着き、2日間イベント見学、企業訪問、セミナーなどのビッチリのスケジュールを消化しました。  帰国前日が丸一日休日です。オプショナル・ツアーなどありません。一人で路面電車を乗り継ぎアンネの家や美術館などを巡り歩きました。夕暮れ時になり石畳の広場でベンチに座り、最後のアムステルダムの風景を目に焼き付けます。『さあ、ホテルへ戻ろうか。え〜と、電車の駅は？』一瞬進む方向を躊躇し、右へ歩き出しました。 2.イタリア人 す〜と小柄な外国人が寄ってきて『ドチラヘ？』と片言の日本語で話しかけられたのです。『路面電車の駅から○○ホテルへ』と答えます。すると彼は、イタリア人だと言い、とてもフレンドリーに東京へ行ったことがあるとか、日本食が美味しかったなどと良く喋ります。私も英単語会話で話を続けました。 すると『米ドルを日本円に両替してくれないか?』と言い、私に200＄の紙幣を手渡します。私は『現地通貨で数千円しか持っていない。』とお金を返そうとしました。いきなり背後から小柄で太った男が、二人に声をかけてきます。赤い身分証を提示し、訛りのある英語で『オランダのポリスマン』だと言う。  『このイタリア人は、贋金で両替詐欺をするので追跡していた。』私の持っている200＄紙幣を指して『これは君のか？』『ＮＯ！彼のだ』 『では君のパスポートを見せなさい。』ポーチから出して渡す。 『真贋を調べるから君の持っている他のお金を出しなさい。』話が無茶苦茶だ。オランダ人はデカイ、けどこのポリスは私より小さい。変だ？ ひょっとしたら二人は組んでいて私のお金を署で調べるとか言って持ち逃げ‥？思い出した！旅行前の説明会で両替詐欺が横行していると説明があった。ま、ま〜巻き込まれた！心臓がバクバク鳴り出す。『お金は持っていない。ホテルのフロントに預けてある。一緒にホテルへ来て調べてくれ！』と言い切る。何度も『出せ！』『持ってない』の押し問答。 パスポートは、ポリス？の手にある。何てことだ明日帰国するのに‥。『着いてきてくれ』私がホテルに向かって歩き出す。ポリスが肩をすくめ、私にパスポートを返した。二人は、なにやら話している。お構いなしに路面電車に乗り込む。『コレで日本へ帰れる。』心臓の早鐘は、まだ止まらない。  3.ホテル 電車が、中心街のホテル前に着きました。もうすっかり夜です。足元は暗くアプローチ階段を上がり回転ドアから明るいフロアーに入ります。 『もう大丈夫だ。』 平常心が戻るのを感じつつエレベーターに独りで乗り、５階の部屋に向かいました。レストランでセミナー全員の食事会があるので急がねばなりません。 エレベーターの扉が開き、ピンクのフカフカ絨毯を踏んで廊下を進みます。ホールから右側2番目の部屋にカードキーを差し込み‥。『＊◎＊‥ん？ クンクン何だこの臭い！？』振り向くと豪華な絨毯の上に黄色い足跡が、エレベーターから私の足下まで続いている。『ホゲｯ俺かい！？犬のを踏んだのは‥』頭の中で時間を巻き戻す。 そうだホテルに入るとき、暗いアプローチ階段を上がる途中、左足にちょっと違和感があった。頭の中では、[高級絨毯  汚糞]→[高額賠償請求]→[自己破産申請]と人生の転落絵巻の早送り。『いかん、のんびりしてはいられない。』 この状況なら犯人は私しかいない。 『ホテルこそ悪い。入口の階段を掃除してないので私の大事な靴が汚れたじゃないか。訴えてやる！』なんて喋られる語学力も交渉力もない。私は、廊下をこすり歩きで往復する。迷彩は出来た、完全犯罪だ。 自分の部屋に靴を脱いで入り、風呂場で残りモノを必死で洗い落とす。みじめ汗が出る。終えてから体制を整え、そーっと扉を開ける。誰もいない。しかし‥廊下に充満するモワ〜ン、悪臭で鼻がもげ落ちそうになる。鼻をつまみ息を止め、昇ってきたエレベーターを避け、その隣のに乗り一階へ降りる。 ギリギリ、集合時間に間に合いました。一同で食事をし、その後コーヒーを飲みながらくつろぎます。すると少し離れている人が、隣の人に話しています。 『5階の部屋からここに来るとき、廊下が臭くて臭くて×◎×‥』 私の口は貝になる。食事会が、お開きになり部屋に戻ります。同じ階のその人と一緒にエレベーターに乗り込んだのです。5階に着き私は緊張する。扉が開きモワ〜ンに襲われる‥あれ？来ない。『もう臭わない？』その人も不思議そうにしています。 多分、同じフロアの外国人が『便所廊下か！』とフロントにクレームをつけ掃除がなされたのでしょう。そういえば旅行前の説明会で『あちらは、犬を散歩させても後始末をしないので歩くとき注意して下さい。』と添乗員が話していました。 いずれにしろこのことは、今まで誰にも話さないでいました。でももう時効となるほど月日が経ちます。秘密を持つと心が重いものです。全部打ち明けたので気持ちが楽になりました。こんな話に最後まで付き合っていただきありがとうございます。 |
