我が家に重大事件が起きました。トイレの洗浄シャワーが出なくなり、おまけにしっとりと漏水が起きています。使用期間30年超でタンクの中を見ると各部品が錆び付き、もう限界。業者に依頼し、交換されるまで2階でトイレしましょう‥何とそれも水漏れしてる。
2台とも利用期間は同じで壊れるのも一緒。コツコツ貯めたバイト代も吹っ飛ぶどころか足りない。ショック! トイレを当たり前に使っていますが、トイレットペーパーは世界の1/3で使用されているだけ。日本のトイレは、世界で群を抜き清潔・ハイテクです。
温水洗浄便座普及率は80%あり、温水洗浄機能・乾燥機能・消臭機能、公共トイレには擬音装置「音姫」まで付いています。日本が発明したものと思っていましたが、アメリカが痔の患者用に作ったものが最初でした。
TOTOは(本社/北九州市)は、1964年からアメリカの医療用洗浄便座を輸入販売していました。ところが温水の発射方向はまちまで熱すぎたり、冷たすぎたり、評判は良くありません。そこで1978年、自社開発を決意しました。
課題は、「ノズルの位置」「ノズルの角度」「水の温度」を解決しなければなりません。まずは、「日本人の肛門の位置は?」 開発担当者は、社員・その家族に依頼して300人のデータを集め、「ノズルの位置」を突き止めます。
「ノズルの角度」は、実験を重ね45度(ビデは53度)と判明。またノズルが出しっ放しでは汚れるので洗うとき出て、終わったら収納する工夫をします。これは、担当者が偶然見た車のラジオ・アンテナの延び縮みがヒントになりました。
最後は噴射される「水の温度」。寒暖の環境を考え、技術者達は上限下限の温度を身を張って実験を繰り返しました。そして<お湯は38度、便座は36度、乾燥の温風は50度>が最適と突き止めます。
更に温水を一定温度に保つために電子回路(IC)を採用したかったのですが、ICは水に弱く漏電の危険があります。どのメーカーも耐水ICの開発を断り、技術者は頭を抱え苦渋。ある時ひらめく!『そうだ信号機は雨でも正常に働いている』
そこで信号機製造会社に協力を依頼すると快諾されました。ついに開発2年、1980年(S55年)、温水洗浄便座(ウオシュレット)は販売開始されました。しばらくすると温水が出ないという苦情が続出。
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(当時は149,000円) |
技術者が必死で原因を調べると、頻繁な温度切替えによりアルミ部材が金属疲労を起こし破損していたのです。ステンレス製に切替え部材を1件1件交換しました。さて完成した製品を大々的に販売するには、広告をしなくてはなりません。
新聞や雑誌に掲載を依頼すると、『便器は汚いイメージで品位が落ちる』と拒絶されます。そこでTOTOは、当時ウォークマンなど商品コピーの天才・仲畑氏に広告宣伝を依頼しました。ところが、会議で彼は『商品価値が、ピンときません』と乗り気ありません。
すると技術者が手のひらに青い絵の具をしぼり出しました。ティッシュを渡し、『手のひらを拭いて下さい』 しっかり拭き取っても青い色は拭えず、逆に手のひら一杯に広がりました。『お尻だって綺麗にして欲しいのです』と技術者は言います。
仲畑氏は、『これは世の常識を変える商品だ』と気づきました。生まれたキャッチコピーが<おしりだって、洗ってほしい>です。そしてテレビCMがゴールデンタイムに流れると『食事中に便器なんか見せるなど!』というクレームが大量に寄せられました。
TOTOは、『お食事は大事なことです。でも出すことも同じように大切なことです』と一人一人に応えました。当時の常識、「紙で拭けば十分で、何でわざわざお湯で洗うのか」という声が大半でしたが、徐々にウォシュレットの普及は進みました。
最近のトイレは進化しています。<汚れ対策>つるつるセラミック・フチなし形状・渦巻き洗浄・継目なし便座・リフトアップ便座・バブル洗浄 <便利機能>自動蓋開閉・オート便器洗浄・鉢内除菌・シャワー手洗い・タンクレス・節水節電と高級機種は凄い。
トイレ・リフォームは、温水洗浄便座・便器一体型で行いますが、便座が壊れたら? 家電製品なので製造後10年間は部品があります。交換部品がない場合は、再び一体型を買い換えなければなりません。また節水タイプは、ペーパーが多すぎると詰まります。
検便で敷く採便シートはヤバイ。鉢内は3段構造です。(上) 奥の一番深いポッドに産まれ出でしモノが収まれば、少ない水で処理できます。一番浅いところに産み落とすと渦巻き水流が吹き飛ばし、便座の裏が受け止めますが一大事です。
コロナで工事が遅れましたが、2台とも普及タイプでリフォームできました。快適になり、お食事も大事だけどトイレも大事と認識しています。でもすっからかん。ところでTOTOの開発エピソードで<信号機のIC>と<手のひらに絵の具>はいい話ですね。
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