岳行ノート
美ヶ原2  2034m/松本市

2007.10.18(木)7:30発             曇り  16℃ 往路:2時間05分 (美しの塔)
復路:1時間15分  (小休止含)


 2ヶ月前にこの山の紅葉を予測して宿を予約しました。しかし前日の紅葉便りは「色づき始め」です。当日、現地はいかがでしょう?

 実は18歳のとき、生まれて初めての登山でこの山を登頂しました。(大道草:キスリングの奇跡)

 できたら記憶の地図を広げ、ご来光と富士山を見て感激した山頂の場所も探してみたい。私にはセンチメンタル・ハイクですが、ひよこさんは当然無関心です。


 教科書は、山と渓谷社刊「新・分県登山ガイド 長野県の山」です。
駐車場周辺図


王ケ頭山頂より王ケ鼻方面の岩峰




王ケ頭

王ケ鼻岩峰

園地(ランチ)

王ケ頭

美しの塔

塩くれ場

王ケ頭



※色線は実測ではありません。
■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」



 会社で小顔の女子が近づいてくる。『チロルチョコの新製品で京きなこが出ましたよ』私に買いなさいと言っている。

 早速、会社帰りにコンビニに寄る。箱売りが2箱しか残っていない。ベストセラーのきなこ餅第2弾で、45個1350円で買う。

 そして会社で女子達に自慢気に見せる。
当然『ちょうだい、ちょうだい』
そこで『あげへんで〜』

 袋叩きに合う。


 さて長〜い美ヶ原林道を上りきり、もういいぞの4時間ドライブが終了しました。

 広い駐車場は気温7度、さすが1910mの高度。慌てて手袋、フリースとヤッケを着込みます。ドライフルーツを口に入れ出発です。
(12:00)

 500mほどで車道に別れ、天狗の露路の石段を上がりました。

 すぐに華やかなアーケードが迎えてくれます。
(12:05)

展望地から谷を見て歓声が出ました。右上の美ヶ原牧場から本久保沢方面です。
曇り空で秋色もくすんでいますが、景色が雲に隠れていなければ充分。


 登山道には、人のためか牛のためか関所がありました。王ケ頭(オウガトウ)山頂に20本ほどのアンテナが見えます。
(12:25)

 二つ目の関所から右に進みアンテナの間を抜け崖に出ました。ところが石碑(三角点)を見たけど、うっかり寄らなかったのです。

『大失態どす!』
 


 崖淵を降ると車道に出て、孤立のアンテナを目指します。この辺りは、草紅葉が目を楽しませてくれます。

 高原の西端にある王ケ鼻は岩峰です。鉄平石が幾重にも積み重なっています。松本市方面が、雲間に薄っすらと望めました。
(12:50)〜(13:05)

 天気が良ければ北アルプス御岳富士山も見えるはず‥。『残念どす』
 

 その崖から南に三城牧場が見えました。おそるおそる下を覗くと‥『パラダイス発見!』

紅葉絵巻


 ひよこさんの空腹も限界で少し戻りこの園地のベンチでランチにしました。韻三つ。
(13:10)〜(13:30)

 水溜りに鹿の足跡があります。パトロールの方が『カモシカもいた』と教えてくれました。南アルプスからのご訪問で随分健脚ものだ。



 もう一度王ケ頭まで歩き、高原を美しの塔へ向かいます。すれ違ったトラックの速度が極端に遅い。荷台の乗客は牛君でした。
(13:50)


 道は、しっかりと柵に囲まれています。周りには牛が草をはむ。牛から見れば、人間が柵で囲われているのでしょう。

『何でしょ、この緩やかな有酸素運動』とひよこさん。この2000mの広大な溶岩台地は、100万年前にできたものです。


 目的地の美しの塔手前、句読点のように塩くれ場があります。
(14:15)

 “美ヶ原牧場は、明治32年開設され5月〜10月が放牧期間。昭和45年までこの辺りで牛に塩を与えていた”

 

体調維持のため人間は11.5g/1日、牛は7倍の80gの塩が必要です。
餌の植物には、塩分が含まれていません。
そのため塩の塊を石の上に置き舐めさせていました。
 鉄平石製の美しの塔は「建設昭和29年、建替昭和58年」と銘板に記されてます。デザインが印象的です。

 同行の“昔美しの人”が、中の紐を引き、嬉しそうに鐘を鳴らしました。

 すると若い女性が4名、私にシャッター押しを請う。後ろに王ケ頭が入る構図で撮ってあげました。“今美しの人”には親切君。
(14:25)〜(14:45)

 初夏、一帯はシャジク草、白山フウロなど200種類の花・蝶の楽園になります。
 


 往きに軽快な道は、帰りには喘ぎの登り道。それが延々と続きます。たそがれは急ぎ足、私たちはトボトボ足。

 王ケ頭から駐車場方面を見ると雲が迫っています。(15:20)

 20分で車に戻りました。さあ安曇野に向かいましょう。(15:40)

※記憶の地図はボロボロで、ご来光の場所はとうとう蘇らないまま。アンテナなどで環境が激変しており判然としませんでした。

 多分、王ケ頭の南崖辺りだと考えられます。

 そして青峰山編でご紹介した格安クーポンでロイヤルスイートルーム泊。部屋は、なんと我が家より広い敷地面積。悲しい。

 ベッドルームとバスルームが2部屋、トイレ3部屋、キッチン付‥を持て余す。採算が合わないそうでこの企画はもう終了とのこと。

生涯最後のバブリーな経験となります。

 夕食で信州牛の石焼が出ました。スモールサイズが三切れ、ひょっとして美ヶ原のあの牛君かな?『なんまんだぶ、なんまんだぶ』やりました松茸土瓶蒸し。ズームアップしているのは、おチョコが500円硬貨ほどだからです。食べると地球の味。つまり土の味が口の中で広がる。水洗い不足かこんな味なのか、わからないのが悔しい。

 そういえば美ヶ原林道で強烈な止山の表示と縄掛けがあり、ビクを腰に下げた人を何人も見ました。今が収穫時期なのでしょう。

一夜開け、長野から岐阜に野麦峠越えで入り紅葉街道をドライブ。
結局この日も曇りのち雨のお天気。その翌日の週末から秋晴れになりました。
あの格安クーポンは、平日しか使えないもので幸せクーポンもほどほどがいいかもしれません。

でもパトロールの方からいい情報をいただいたので来年その道を辿ってみようと思います。


東海岳行
       千手観音     
 24年前、テレビでマイケル・ジャクソン♪ビリー・ジーンを歌っているのを見ていました。間奏でダンスをする場面になり、ムーンウォークを見ときは腰を抜かすほど衝撃を受けました。前に歩いていくようだけど後ろに滑るように下がっていく技法です。録画したビデオテープをコマ送りで見て修練に励み子供に披露して尊敬されました。

 野球やサッカーのスタジアムで満員の観客が起こすウェーブも誰が考えたのか?自分もその一員で参加すると実に楽しい。また身体を使ったパフォーマンスは、時として芸術性を強く感じることもあります。フィギュアースケートやシンクロの卓越した演技もそうです。
 
 昨年秋、中京テレビ美輪明宏「極上の月夜」で中国の聴覚障害者が演舞する「千手観音」を初めて見ました。後日24時間テレビでも放映されたのですが、それはまさに超越したアイデアと演技でその感動は深く心に残りました。この芸術団は10年前創設されたのですが、その時まさか生でそれが見ることが出来るとは思っていませんでした。

 その中国障害者芸術団の公演が、今秋日本各地で始まったのです。聴覚、視覚、肢体に障害を持った方々が、踊り・歌・演奏など14プログラムを2時間にわたってパフォーマンスを繰り広げます。その中の演目として「千手観音」があるのです。

 舞台がライトで照らされ神秘的な音楽が流れる。黄金にまばゆいセットと衣装の男女21名が、幻想的な雰囲気の中で直列に並んでいます。音楽に合わせ42本の手が見事に揃い、伸びたり縮んだり、回転やウェーブなど見たことが無い美しい世界に眼が釘付けです。音楽が変わり、離れて踊りまた列になる。
 
 彼らは聴覚障害を持っていて音楽は聞こえてないのです。そのため舞台の両端でタクトを振るように両手で合図を送る人がいます。でもその息の合ったスピード感溢れる演技は、驚かざるを得ません。6分間の独創的かつ神秘的な演技が終わると魅了された観客から大きな拍手が起こりました。

 列の先頭は一番小柄なタイレイカさんで31歳の美人です。彼女は団長でもありバレエ舞踏にも主演し、華麗な蝶の舞いも見せてくれました。この「千手観音」は北京オリンピックの開会式でも見られるようです。
 
 他にピアノソロ♪月光では超人的な技巧で圧倒されます。グランドピアノから限りなく音が積み重なり猛烈な速さで流れていく。驚くことに演奏者は、一度も光を見たことが無いピアニストです。

 そしてすべてのプログラムが終わり、エンディングでは、出演者全員が横に並び挨拶をします。小さな女の子が、舞台下に駆け寄り握手を求めました。それをきっかけに観客が、立ち上がり同じように舞台へ進みます。

 そして大勢の人が握手を求めました。出演者も全員で応じています。手話で司会をしたモデルのように美しい女性が涙ぐんでいたのが印象的でした。感動を心に刻み元気をもらった2時間『素晴らしい、良かった‥』ひよこさんとこの夜の感想を長々と話したのです。[You Tube-千手種観音]

2007.10.21/20:50