岳行ノート

日永岳 1216m/岐阜県関市

2010年4月25日(日)



斜面に群生するイワウチワ


 ひよこさんが久し振りに『私を山に連れてって』と言うので大好きなイワウチワの咲く山にします。となれば7年前に登った思い出の日永岳(ヒナガダケ)にしましょう。

 江南市から駐車地まで55kmと近い距離ですが、とても奥深いところです。地図を見ると最終コンビニは駐車地のはるか手前30km、ボヤッとしてられません。

 神崎川沿いを舟伏山(フナブセヤマ)への道と同じ道を走ります。しかし舟伏山への道は、途中で奥へ進むのを諦め夏坂谷に折れるのです。


 ところが日永岳の道は、一車線に減幅してなおも8km以上北上し続けます。林道走りには慣れていますが、初めて走ったときは気が遠くなりました。


 教科書は、風媒社刊「こんなに楽しい岐阜の山旅100コース美濃下」です。
 
<駐車地>
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駐車地

ゲート

登山口

注意標柱

山腹道へ

ロープ場

反射板

▲日永岳

登山口

駐車地


 ※赤線はGPS軌跡

■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」


江  南:午前6時15分発  6℃
駐車地:午前7時50分着 晴れ
往:2時間55分(以下、小休止含)
復:2時間25分 
◆所要時間:5時間20分



 清流神崎川沿いの「グリーンプラザみやま」が向こう岸に見えました。一泊18,900円のお洒落なコテージは賑わっています。

 舟伏山へ分ける道を横目に、途中ごろごろの滝を見て‥
  



 時速20kmの安全運転のまま、仲越の分校跡に突き当たり停車。舗装はここで終り、左の荒れた林道から歩き出します。
(8:05)



 5分で最初の橋を渡り、15分後二つ目の橋。ここは渡らず直進です。ここまで車は上られます。往復30分ほどお得です。
(8:25)

 整備された広い道は、笑い出した山、清々しい流れ、しぶとい残雪などが楽しめ時間を感じません。

 長い林道も広場で終点。沢を渡り、どっこらしょと最初の休憩をとります。(9:00)

 これからの厳しい登りに備え、水分を充分取りました。体勢を整えたら尾根の端から登山道へ‥





 いきなり急登ですが、鉄梯子は天国へ続く階段らしく、すぐ天使たちがお迎えしてくれました。『お迎えでごんす』ではなく‥

『ようこそここへ』早速、モモ組のフリルさんたちが、小さな風を受けご挨拶してくれます。

「ではなぞかけ。お題は、このイワウチワです」
「整いました!イワウチワとかけてと解きます」
「その心は‥」可憐だ(カレンダー)。‥ねづっちです」






 斜面には、絶えること無いイワウチワ。杉林を伐採したので幹や枯葉が散乱しています。彼女たちの生命力を信じましょう。



 急坂の途中に踊り場があり、是が非でも休憩を取らねばなりません。「この先約10分后 トラバース危険」と注意喚起柱。
(9:50)

 高度が上がるとイワウチワは減り、寂しい心に追い打ちをかけるのは‥



 危険トラバース。大木が立つ峠には、注意でココロも満タンにします。以前は密集した横倒しの笹に足を置いたものです。

 今は笹刈りがされ、足は地に着きます。それでも雪の重みで倒れた木を潜ったり、跨いで避けたり、ロープに頼ったり‥



 最大の難所を過ぎ、峠から左尾根への登りです。大桧の岩盤で小休憩をとって緊張緩和しなければなりません。

 『まいった、まいった、マイケル・ジャクソン』
(10:20)

ここでは南の眺望をゲット。左端の削られた山肌は朝、通過した神崎川沿いのドロマイト鉱山です。
右上の舟底形が舟伏山1040m。目を凝らすと山頂部の切り開きが、それとなく見えます。
やせ尾根の急登をスタート、荒々しさを増すと‥



 あの山腹道にもあった心強いビニール被覆のワイヤロープ。根っ子のスッテプは、滑らないよう、挟まらないよう。

 鉄階段も再登場し、急登クリアのアイテムは惜しみなく利用します。





 やっとこさ傾斜が緩んでも笹藪に立ち向かわねばなりません。シャクナゲの群生が現れ、木立から中電の反射板が覗けば‥


 定員10名の山頂1216m。先着の方6名が、このレストランでお食事しています。私達のお腹で空腹警報が鳴る。

 大展望で口から絶景警報が出る。南の舟伏山方面を除き良好です。
(11:00)〜(11:55)

   西方に双眼鏡を向けると青空の能郷白山1617m。
右端がまだ通行止めの温見峠(ヌクミトウゲ)で下の左写真につながり‥
(左下写真)左から右へ能郷白山越山1129m、部子山(ヘコサン)1434m、銀杏峯(ゲナンポ)1441m
 
岐阜と福井を分ける雪の県境峰が続いています。さらに北方に目を転じると‥
(右上写真)左の雪山は御存じ白山2702m、その手前は白山を隠しきれない平家岳1442mです。
写真にはなりませんでしたが青空に融けそうな北アルプス、乗鞍岳御岳山も確認出来ました。



 中電の反射板を回り込み『よいしょっ』と切り株に乗って‥左上の屏風山1354mが、川浦ダム湖を覗いています。

 この反射板は、ダム間の通信に使われるそうです。今日は、ぬる目のお風呂のようにのんびり長居できました。下山です。




 岩盤尾根で岩をくわえた桧。昔、どんな事情があったのか尋ねたくなります。峠からまた厳重注意のマイケル・トラバース‥
(12:30)




 斜面のそよ風は「くよくよしないで」と明るく言っています。伐採され陽が差す道でモモ組さんたちに見送られ。。。『バイバイ』

登山口に戻ったら、広場で最後の休憩を取ります。清流で汗をぬぐいましょう。
前回来た時は、ここにお猿の軍団がいてお互いビックリしました。
(13:30)

 林道を歩くと新緑がかなり賑やかです。「山、クスクス笑う」くらいでしょうか。彩る野の花、木の花たちの生命力を思いっきり吸い込めば無料の滋養強壮‥そうなればエナジー・ドリンクは不要で家計が助かります。さて日陰にできた雪解けの水たまり、石を投げて春を知らせてあげよう。道々花を愛でればいつか駐車地着。
(14:20)


 左より@フキ     Aヤマルリソウ   Bバイカオウレン  Cネコノメソウ   Dコウヤミズキ

 帰路、マイカーが集落に出るとケイタイにアンテナが立ちます。岐阜の娘からメールが届いていました。自宅前の用水で20cmの大亀を捕まえ、はしゃぐ家族写真が添付されてます。早速『なぞかけで返信すべぇ』ハンドルを持つ私の言葉をひよこさんが、亀の歩みのスパー低速で打ち込み‥


「なぞかけのお題はです」「整いました!とかけて自販機と解きます」
「その心は‥」コーラ(甲羅)があります。‥たまごっちです」〜mm?



東海岳行
   “かおりとカタナ  

 私が30代のとき、一回り下の友人がいました。彼はナナハン・ライダーで白のヤマハ・バイクが愛車です。当時、私は一人で歌を作っていて彼はその録音をしてくれました。♪かおり(10.04.08道草)という能天気な明るい曲の次は、暗い感じの曲を作ります。お菓子を食べるのと一緒で、甘い辛いと繰り返すのが飽きないコツです。

 ライダーの歌にしようと思い、彼に3文字のかっこいいマシンを尋ねました。『スズキにカタナというバイクがある』バイク用品も聞くと『ヘルメットはアライ、ライダースーツはタカイがトップブランドだね』それだけの知識があれば十分です。あるライダーとしがみついて乗っていた女の子の悲恋物語を妄想で作ります。

 結末は、二人が大喧嘩した雨の夜、彼が独りバイクで飛び出し、その後二度と彼女の前に走る姿を見せなくなった。そして彼女は彼を毎晩、二人でいつも走った道で待つという内容です。忠犬ハチ公のパクリみたいだ。タイトルは「♪カタナが消えた」。そして4半世紀の時が過ぎ‥



 ある日、稲田君から相談されました。『バンド・コンテスト出てみない?』『いいよ、出よ』私は二つ返事です。彼は「大道草:山頂のレーザー光線」の友人で今、クラシックギターを音楽教室で学んでいます。彼が担当の若い教師にビートルズのコピーバンドをしていると話したところ、コンテストの誘いを受けたのです。

 私がギターとヴォーカル、彼がベースギター。この編成でビートルを演奏するとヘタさが浮き彫りになります。そこで私が『曲はオリジナルにしない?』と言いました。ビートルズ・ソングと違い誰も聞いたことが無い曲なら、うまい下手やミスしてもどう間違えたかもわからないと御託を重ねると『いいよ』と彼も二つ返事。

 事前に演奏曲の譜面を先生に提出します。「♪かおり」は雑誌に掲載された優秀曲のページをコピーしました。私の見栄です。「♪カタナが消えた」は手書きしました。コンテストまで1ケ月しかありません。彼はサラリーマンなので週一の練習です。ギターの先生が『ぼくがドラム叩きましょう』と助け船を出してくれました。



 持ち時間は8分なので1曲3分程度に構成を直します。さて3人でのスタジオ練習は、30分×2回です。つまり急こしらえで練習不足のバンド‥結果は見えていますが参加することに意義があります。参加費が数千円必要です。参加者は、小学生から還暦のご老体まで50組の出場‥もちろん最高齢は私達です。

 前日、娘とひよこさんが衣装を選んでくれました。ジーパンにブルーのシャツ(ピンクのストライプ入り)に半袖のピンク色のTシャツを重ね着します。場所は名古屋のスタジオで観客は50人が立ち見です。学生時代以来のステージですが、あがらないと思ったのですが‥

 観客の中には、ひよこさんと3人の子供、結婚した娘は旦那さんと子供も連れての応援団です。稲田君の奥様と娘さんも来ています。



 コンテスト出場のことは、ひよこさんにしか話していませんでした。彼女が娘に話したら『行く行く』と伝線したようです。

 来てた息子が家族の前で歌うことは『恥ずかしい?』と聞いたけど『いや嬉しいいよ』これらの歌は、子供が幼いころ一緒にお風呂で歌っていました。いよいよ私たちの出番です。娘に写真撮影を頼みます。ライトが当たると客席は黒い人影が見えるだけ。

 『わん・つー・すりー・ふぁー!♪〜♪〜』1曲目の「♪かおり」の終り頃、急に胃が締め付けられ痛くなりました。2曲目の「♪カタナが消えた」は痛みに耐えて何とか歌い切ります。終わると咽がカラカラ、娘がくれた水を飲んでも胃痛は治らず、お腹を押さえ前かがみで歩きました。



 これほどの緊張感は人生の中でも中々味わえません。コンテストの優勝者は東京の全国大会へ出場できます。それ以外のバンドは、努力賞とかパフォーマンス賞とか何か貰えるのですが、私達は余程の出来らしくナッシング。翌週、稲田君と行きつけの中華食堂で反省会をしました。

 結論は『また、やろうや』何事もくよくよせず前向きにね。その翌日から新曲を作りだしました。

2010.04.27(月)21:35
日永岳