岳行ノート

燕岳 2763m/長野県安曇野市 

2014年9月15日(月・祝)


ハイマツ樹海と白砂の美しい山

花崗岩で作られた奇岩奇峰の向こうに燕山荘


 9日(火)に郡上市の気良烏帽子へ行きました。現地で登山口へ向う林道が崩壊したことを告げられ、一歩も歩かず帰宅。高速料金残念無念。

 2005年の「大道草1/キスリングの奇跡」は、学生時代の燕岳登山のエピソード。以来、センチメンタル・トレッキングを考えていました。

 9年過ぎても一向に計画は具体化しません。長男の富士登山(今回の道草)に触発され、お天気週末を待ち、やっと出発の運びとなりました。


 コースタイムは8時間、休憩を含めれば10時間越えです。前夜泊して日帰り登山します。学生時代、山頂で記念撮影をした岩場を見つけたい。

 教科書は、山と渓谷刊「新・分県登山ガイド 長野県の山」です。参考書として多くのホームページのお世話になりました。
<駐車場>
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市営第一駐車場→合戦小屋→▲合戦山→▲燕岳→燕山荘→市営第一駐車場


※赤線はGPS軌跡 ●は主な分岐点

■この地図の作成に当たっては国土地理院長の承認を得て同院発行の数値地図50000(地図画像)数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである(承認番号 平17総使、第98号)」


江  南:前日午後5時20分発   曇り/29℃
駐車場:前日午後9時40分着   曇り/11℃
起  床:午前4時50分       曇り/11℃
往:5時間55分(山頂まで、小休止含)
還:4時間00分(ランチタイム除く)
◆所要時間:9時間55分

 前夜、登山口に近い第一駐車場に着くと10台の空き。キャパは50台です。芳醇な香りの簡易トイレもあります。

 起床して着替え朝食をしたら出発。温泉橋から駐車場を見ると『お帰り、待っていま〜す』 愛車に見送られ‥
(5:50)

 車道を登ると中房温泉登山口(ナカブサ)。綺麗なトイレもあります。左折し、標高差1360mの山旅です。

 北アルプス三大急登の合戦尾根を登ります。
(6:05)

 整備されたジグザグ道は急勾配。岩、木の根、板の階段の構成です。段差が不定でゆっくり足を運びます。

 気温11度は初冬仕様。全天の雲ですが、予報「9時から晴れ」に望みをかけましょう。 


 合戦小屋まで30分毎に休憩地があります。この第一ベンチで衣類調整。(6:45)30分後、第二ベンチ着。
(7:20)


 次の30分が楽しみ。ピッチどおり第三ベンチが、キッチリ現れました。山荘泊の下山者とすれ違います。
(7:55)

 富士見ベンチでは運よく富士山(右端)が望め、拝みたくなります。
人々の憧れや願いを受け止めてきた霊峰、、、どこで見ても存在感は別格。
左奥が南八ヶ岳、全天が曇っていますが、これだけの眺望は幸運です。
(8:35)


 学生の頃、キスリングを背負い必死で登った岩場はここ? 飴1個でバテが復活した若さは落ちてないか?

 『祭りか?』と見まがうほど登山者集う合戦小屋。名物の冷やしスイカは、1/4カット800円です。

 大きすぎるので『1/8カットはダメ?』 応えはNG。アミノバイタルゼリーでエネルギー補充します。
(9:10)

 休憩したら足を進めます。曇りのち紅葉、今月末には色の競演が始まるでしょう。
『ナナカマドの赤が、いいですね』『あれ槍じゃないスカ?』『大発見じゃないスカ』

槍を見つけた知らない人とカメラを構えます。

 合戦山(合戦の頭)2488m三等三角点、標高の旅は1100mに達しました。好展望で有明山2268mや安曇平

 残りは標高差275m。ここでどんな合戦があったのでしょう。
(10:00)


 前方を見ると右端のピークが燕山山頂。左ピークに燕山荘が乗かっています。この辺りから森林限界です。


 山頂稜線へ、ザレ場のトラバースを鎖が補助します。一番慎重に足を運ぶところです。

 大正10年、93年前創設された燕山荘(エンザンソウ)2712m。収容650人と大規模です。稜線は風が冷たい。

 外にテーブルセットがおかれ、展望は最高です。登山者は、リュックをデポして山頂を目指します。
(10:55)

 風除けのダウンを着て過ぎ去った日のかけらを探しに行きましょう。結局、青空には恵まれません。

 雲が高く遠望が利くのは、さすが秋の空。美しい尾根の砂礫地を辿ると‥

 次々と不思議な形の岩搭群。代表は、イルカ岩でしょう。顔左に槍ヶ岳穂高岳を入れるのが常道です。

 ゴリラ岩は、わかりませんでした。
『来た!ツバクロダケ』標高2763mの狭い山頂、この右に二等三角点があります。
休憩時間は80分、歩行時間は4時間35分、ほぼ標準タイムで登頂できました。
長野県の中学校は、燕岳が学校登山です。そのためか難渋個所はありません。

左奥:立山3015m、右奥:鹿島槍ヶ岳2889m
峰なす山‥日本は3000m超が21座、14座が長野県に属します。

左は大学1年の夏、ワンゲル部員として登ったときの山頂写真です。
当初、山名が不明でしたが訪問者の方に燕岳とご教示頂きました。
やっと再訪でき心から嬉しい。まさにこの岩の周りで撮ったものです。
(11:45)


 戻る時、猿を3頭、ホシガラスを何羽も見ました。腹が鳴ります。足の踏ん張りがきかなくなりちょっとダルイ。

 途中、眼鏡岩を見つけ、写真を撮って頂きました。

 学生時代のもう1枚の写真は、ここと思ったのですが‥違うような?

 靴を脱ぎ山荘でランチ。トイレは簡易水洗で無臭です。800円の天ぷらうどんを注文。

 体調は優れずここ(1泊2食9800円)に泊まりたい気持ち。大休止して何とか復活。
(12:25)〜(13:00)
ゆっくり下山すると合戦山手前から安曇野が望め、2000m差の高度感を味わえます。
手前左:有明山2268m、遠くは八ヶ岳。(13:30)
スイカが売れなくなった合戦小屋(13:40)、よく喋る外国人が下山する第二ベンチ(15:15)
厳しい降りが続き、膝に大爆笑されたらまずい。小休止は欠かせません。
一日中、足筋を酷使したのできっと筋肉痛は間違いない。
『お帰りなさ〜い』 市営第一駐車場着(16:20)

 
東海岳行
  “息子の遥かな富士” 

 『父さん、登山に連れってて』息子から2年前の秋、電話がありました。彼は、翌夏に友人と富士山登山を約束したようです。初心者がいきなり3776mはないだろうと言いました。親子登山して息子に御在所岳を経験させ、金華山に友人と登り経験を積みます。

 その夏、、、私は彼の行動力に触発され富士登山を決行。ところが彼は、夏が終わっても富士登山を未実行です。仕事があり家庭があり、友人の都合と合致させることができなかったのでしょう。山は登山口から山頂を踏破するより、家から登山口へ行くことが一番難しい。

 今夏8月、息子は家に来て登山道具を借りたいといいます。『何だかんだ言っても富士山に登ってない。自分を追いこみ登ると決めてきた』 富士登山の注意事項を伝え、登山グッズを渡しました。



 ある夜、22時過ぎにメールが届きました。『仕事終わりで今から富士山に行って参ります。独りで』お盆休みの前日です。当初、5合目駐車場までのマイカー規制も知らなかったほどでした。登山ルートは、私の勧めで最高点に近い富士宮ルートで登ります。

 麓の水ヶ塚公園に走り、そこで数時間仮眠して朝一番、6時発のシャトルバスに乗車。登頂したらその日のうちに帰宅する弾丸登山です。朝7時20分、メール着信音が鳴り『風強いー』の文言に上と左の画像添付がありました。7時から登り始めたようで、『まずは良かったな』と思っていたら‥

 8時40分メール着信音。『新7合目、たまに雷が聞こえる』 11時30分、『ごめん。父さんのサングラス落とした』『えぇ〜!』  再び『女装の若い男性と友達になった』 ツーショットの画像つきです。



 『ソロのニューハーフか!』 いろんな人が登る。調子が良かったのはこの辺りまで。悪いことにしばらくは山頂が見えず目標がありません。メールを打つ元気もなくなりました。着信音が鳴り、通話すると10分歩いて10分休憩、5分歩いて5分休憩してると苦しさを訴えています。

 その後、途中の山小屋でランチを済ませ、歯を食いしばって登ったようです。午後2時、富士宮ルート山頂に登頂したとメールが入り、すぐ着信音がなりました。『最高点はどっち』と聞くので『浅間大社に向かって左』『ありがとう』 その後そこへは向いませんでした。

 往復1時間かかると聞き、体力的に無理の結論。突然、山頂部に雲がかかり、雨が降ってきて慌て下山しました。後日、息子が登山道具を返しに来たとき、数々のエピソードを話しながら
『死ぬほどきつかったけど、、、日が経つと何だかまた富士山に登りたくなる』



 『そうだ、そういうものだ』
 結論、二人は富士山に恋したようです。最近、私は登山した山から富士山の山頂が見えると剣ヶ峰を探し、しみじみ思いをはせます。『あの場所にあの日、立っていたんだな』

2014.09.21(日)22:35