岳行ノート
            さんじょうがたけ 
山上ヶ岳T 1719m/奈良県天川村


2018年7月18日(水)


西の覗岩



 明治以降、山岳の「女人禁制」は廃止されました。しかし、奈良の山上ヶ岳だけは、我が国で唯一1300年に渡り、「女人禁制」を守っています。

 1350年前、修検道開祖の役行者が開山。山頂には、国の重文大峯山寺建ちます。西日本修検道の根元道場です。入峰修業期間は5/3〜9/23。

 でも登山には、期間制限はありません。白装束の山伏さんに会いたいので入峰修業期間に合わせ、この300名山を登山しましょう。


 登りは、修検者が辿る洞川道で山頂を目指し、下山は、レンゲ辻からレンゲ坂谷を降る周回です。コースタイムは、5時間20分と歩き甲斐があります。

 早朝3時半起床、4時間のロングドライブ、1700m高山の薄い空気、厳しい修業となりそうです。名阪国道針ICで下り、吉野川を国道309号線で渡ります。

 教科書は、山と渓谷社刊「関西周辺の山250/改訂版」です。参考書に多くのHPのお世話になりました。
<駐車場>

大きい地図



大橋茶屋有料駐車場→一本松茶屋→洞辻茶屋→西ノ覗岩→▲山上ヶ岳
レンゲ辻→渡渉→林道出合→大橋茶屋有料駐車場

※赤線はGPS軌跡  ●は主な分岐点


■この地図の作成に当たっては国土地理院長の承認を得て同院発行の数値地図50000(地図画像)数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである(承認番号 平17総使、第98号)」


江  南:午前4時30分   晴/29℃
駐車場:午前8時10分   晴時々曇り/25℃
標高差:(913m→1719m)806m
往:3時間30分(山頂まで、小休止含)
還:2時間40分(修行・ランチタイム除)
所要時間:6時間10分




 天川村に入り、洞川地区の宿坊通りを抜けます。8年前観音峰で下山した母公堂が懐かしい。更に西進します。

 程なく広大な大橋茶屋駐車場。左の屋根下に駐車できました。1日千円、前夜泊2千円。右奥、朱色の清浄大橋を‥
(8:55)




 渡れば、すぐ女人結界の石柱です。20代から60代までの7人講(グループ)が来て祈祷を始めたので終わるのを待ちます。

 数分後、山伏さんが“お先に”のサインをくれました。昔は結界が母公堂で女性の林業従事者・バスガイドさんは不便でした。 

そこで話し合いがもたれ、昭和45年から現在の場所に移りました。

辿る洞川道は手が入り、道標もしっかり立ち安心です。
大峰山寺のエリアなら伐採禁止で自然林かと思っていたらしっかり杉林。





 手摺りがある木の階段を登ると茶屋跡の広地に出ました。祠に「大菩薩尊が平成28年1月より行方不明」と掲示板。

 連絡先が明示され、悲しいことです。
(9:40)





 しばらく勾配の優しい山腹道が続いて無人の一本松茶屋。中心に通路があり、両側に幅広の縁台が置かれています。

 ここで1本立て終わると入れ替わりに山伏さんたち。先に切り上げ出発します。
(9:40)




 北から涼しい神の風。すると背後から『六根清浄、六根清浄、さ〜んげ、さんげ』 山と谷をこだまして響き迫ってきます。

 山伏の掛け念仏、2本のホラ貝の音がハモっています。たちどころに追い抜かれました。皆さん空身ですが健脚です。




 やがてお助け水に着き、2回目の休憩を取ります。祠に「大菩薩石像が4月より行方不明」の掲示板。罰が当たりますよ。

 年配の登山者2人は、東京発と言われました。山伏さんは関西発、まあ愛知は近いほうだ。ここで行程半ばです。
(10:25)






 さらに山腹道を行き、この七曲りで標高を40mほど上げれば、尾根1500mに出会います。空気が薄いので登りがきつい。
(10:55)







  5分ほど喘いだ結果、吉野山(写真奥)から来た「大峯奥駆道」と合流しました。


合流点の目の前に洞辻茶屋。平日は留守の店主が、今日はいました。
講のリーダーが、勧めるくず湯300円を頂きます。(左)
熱くドロッとして甘い。『疲れた体にはこれがいいぞ』とリーダー。
猛暑日ですが、温度計は25.5℃。山伏さんと話しが弾み『さんげって何ですか?』と私。『懺悔のこと』
地下足袋にナイキのようなエアクッションが入り、『どこで売っているのですか?』『吉野の専門店』

「西の覗」業の話しになり、講で未経験者4名と勧められた東京人2名『やります』 私も誘われました。
立ち会いをする宿坊の竜泉寺に店主が電話を入れています。予想外のことに巻き込まれました。
(11:00) *20分間休憩*






 南進して和漢胃腸薬陀羅尼助(ダラニスケ)茶屋を抜けると分岐です。左が表行場、右が下山道なので左を取り‥
(11:30)






 階段を登れば「油こぼし」 岩場に鎖が掛かりますが、斜度は緩く、四肢四駆で数分で登られます。
(11:45)






 次の「鐘掛岩」は急傾斜で高さ10m? 中間と天辺に見晴台があります。私は腰が引け、右の迂回路で見晴台へ‥
(11:45)

そこでは、べらぼうなパノラマが広がります。右下に青銅製の仏像、右上は大天井ヶ岳1439m。
中央の谷は、車を停めた大橋茶屋駐車場です。その左上に洞川(ドロガワ)地区の集落が見えます。
(11:55)




 「鐘掛岩」から300mほど進むと右に踏み跡を発見。その道が行き止まると北西に垂直の西の覗岩が間近です。

 テレビで見たアングルはここですね。崖上に修業に巻き込まれ東京人2人が、待機中です。詳細は道草をご覧下さい。
(12:10)






 西の覗岩の修業を終り、五軒の大きな宿坊を通り抜けます。修行者以外に登山者も宿泊可能です。
(12:10)






 山上ヶ岳には大峯四門が構えていて、これが最後の「妙覚門」です。石段を登れば‥
(12:55)

大峯山寺本堂。国の重文であり、世界遺産登録資産でもあります。
734年に創建後何度も消失し、現在の本堂は元禄(1637年)の再建で、幅23m・奥行19m・高さ13m。

入峰修業期間の5/3〜9/23だけ入堂可能です。大きな建物ですが、中は渋い造りになっていました。
本堂前の大広場西側に「お花畑・日本岩→」の案内板が立ち、丘を登ると‥
(13:00)






 一面ミヤコササのお花畑。でも樹林が少なく好展望です。中央に稲村ヶ岳1726m。山上ヶ岳より7m高い。南東へ行くと‥





 石柱で囲まれた湧出岩。役行者が神々を召還した地です。左下に一等三角点1719m。「六根清浄」登頂しました。
((13:05)

 下山は、次回の岳行ノート「山上ヶ岳U」をご覧ください。


東海岳行
  “絶叫、西ノ覗 ” 

 洞辻茶屋で休憩中、山伏の関西講さんから「西の覗」の業行のお誘いを受けました。私は大概のお誘いは基本的に受けます。ところがこの業行は、テレビで見て怖さを知っているので、本当は遠慮したかったのです。しかし、先着していた私より年上の東京登山者2人が受けられたので断るわけにはいけません。

 「西の覗」は、日本三大荒行のひとつで心中は『恐ろしい‥』 茶屋から大峯奥駆道を1時間ほど辿る右にと「左:大峰山寺、右:西の覗」の石標(下左)から右の岩場を登ると遥拝所があります。(下右) 洞辻茶屋店主が、連絡を入れたので宿坊の竜泉寺から立ち会い人が、1人待っていました。

   

 全員が揃ったら並んで遥拝。10人中3人の経験者は『しない!』ということで7人の業行。順番は、山伏の20代若人から始め、東京登山者、私が最終に決まりました。ここは標高1650m、崖直下は50mの落差ですが、目に飛び込む谷深部までは標高差が600mあり恐ろし〜。景色は14コマ目の「鐘掛岩」と同じです。

 命綱を両肩にかけ、絶壁から身体を半分乗り出す。(下左) 胸までなら平気でしょうが、へそ下まで身を捨てると恐ろし〜。両手はしっかり組んで崖下の不動明王を拝まなければなリません。岩に手がつけないのが恐ろし〜。両足を持つ人は、鎖を腹に巻いて安全確保。(下右) 

   

 3人での支えですが、命綱はただ手に持っているだけでこれは心細い。『まだまだ、もっと前、もっと前』とせかされます。結果、修行者は殆どつり下げられた状態。支えから『親のいうことを聞くか?』と問われても『はい!』と即答。『ご先祖を大切にして、きちっと墓参り行くか?』

 『嘘はつかずまじめに生きるか?』と定番の言葉が飛びます。講の人たちは知り合いなので身内ネタで攻めます。『かね子ちゃんと仲良くするか?』(笑) 『卵焼きは上手に作れるか』(笑) 返事の『はい!』が続くと引っかけで『浮気はするのか?』『はい!』


 『そこはいいえだろ』
とクールに突っ込む。(笑) 関西人は笑いを取るのがうまい。質問に対して返事が遅いと足をグイッと押す。もう一段下がるので『うわ〜』『ぎゃ〜』と悲鳴が上がる。これは恐ろし〜。見てる人はケラケラ笑う。とうとう私の番です。帽子・眼鏡・時計・ポケットの中の物を取るように言われました。

 身を乗り出すときが本当に恐ろし〜。(下左) 『しっかり支えてよ』と心の中。返事の『はい!』を思いっきり大声でするとみんなが笑う。足をグイッと押されたときは、生きた心地がしませんでした。終わると『自分で上がってきて』 両手を岩につき上半身が上がると引き上げてくれます。

   

 支えの人が『心身研鑽、家内安全 祈願成就』とささやくようにつぶやくと終了。1分間ほどの恐怖でしたが、すっきりした気分、耐え抜いた達成感があります。いい経験ができましたが、二度はやりたくない。 向かい側の絶壁は、「剣の山」といわれ、かって「覗き行」が行われていました。(上右)

 170年前の古文書では、その行で300人以上が落ちて死に今の西の覗に変更されました。近くの宿坊竜泉寺に行き、500円払います。ジェットコースター並みですが、意外とお値打ち。お金払っていじめられる「捨身の行」は、最近外国人もやるそうです。

 山上ケ岳には裏行場もあり、不動登り岩から始まり、胎内潜り、東の覗、蟻の戸渡り、そして平等岩から本堂に至る全19ヶ所、1時間の行程です。2年前に滑落事故があり、現在は東の覗は中止されています。これはスーパー恐ろし〜ので、私は『しない!』

2018.07.26(木)22:00