岳行ノート

姫越山 503m/三重県大紀町
2009年4月30日(木)


姫越山より芦浜池を望む



 昨年11月、三重の方から姫越山(ヒメゴヤマ)を熱く紹介いただきました。これは行かねばと早春を予定していましたが、私とひよこさんと天候の調子が中々揃いません。

 そんなおり、娘夫婦から鳥羽の宿泊券をプレゼントされ期は熟しました。この山は悲しい伝説があります。「源平合戦の頃、落人らしきお姫様と老侍従が山路を登っていた。

 峠で姫が疲労困憊、1歩も動けない。飲み水をと侍従が谷に降り、竹筒に入れて戻ってきた。峠に着くと姫はこと切れている。侍従は嘆き自害した」


 持っていた黄金は山頂のツツジの下に埋めたと伝えられ、山のツツジは掘り返されたようです。私は黄金の匂いには敏感ですが、海を見る山で潮の香りを嗅ぎましょう。


 教科書は、山と渓谷社刊「(旧)分県登山ガイド 三重県の山」です。参考書は、多くのHPににお世話になりました。
駐車場周辺図
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町営駐車場

北登山口

爺ケ塚

姫塚

△姫越山

新桑分岐

小屋

芦浜池(ランチ)

堤登山口

中学校分岐

町営駐車場


※色線は実測ではありません
※青線は車道

■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)


鳥羽:8時00分発  13℃
      快晴、ときどき潮騒
往路:1時間45分(山頂まで、小休止含む)
復路:3時間30分




 前夜泊の鳥羽から走り、今年2月7日に開通した紀勢大内山ICで下ります。南下して大紀町の無料公園駐車場に停めました。
(9:40)



 中河内川沿いを歩けば北登山口。津波避難所でもあります。『エッ!』“熊出没 H20.7.14”注意情報が掲示されていました。
(9:45)

 この町は、昔から津波の被害を受けています。昭和19年の東南海地震の津波では、64名もの犠牲者が出ました。 





 最初のピーク(211m)までは急登。幹の縦割れが特徴的なウバメガシ林が、いい日よけになっています。 

汗が滲み、頬に風を感じると展望地の岩場です。錦湾が一望できます。
中央の小さな湾は、錦向井ケ浜遊パークの人工海浜です。海水浴には絶好だ。
(10:20)





 尾根道にもウバメガシが密生。かの名だたる備長炭の原料です。気温はドンドン上昇しています。お茶を凍らせればよかった。

 山腹道脇に爺ケ塚侍従塚と書かれた墓標が老武士の嘆きを伝えます。
(11:00)

 再び尾根道に変わると姫塚の石積み。こちらは11年前に建立された墓標が立派です。山頂は近い。
(11:10)




 二等三角点と大小の山名プレートが賑やかな503mの山頂到着。ここで長めの休憩で眺めを堪能しましょう。
(11:25)〜(11:45)

南に黒潮の恵み溢れる熊野灘。眼下には無人の芦浜海岸と樹林に囲まれた芦浜池です。
45年前からの芦浜原発計画は9年前に白紙撤回。素晴らしい景観は残り、未来の伝説になるかも。
あの穏やかな曲線の砂浜に降り、ランチはそこで取りましょう。





 山頂から少し降るとのろし台。石で囲まれた2ケ所の凹所を過ぎます。
(11:45)




 さらに東尾根を降りて行くと新桑(サラクワ)分岐。中電のコンクリート杭が目立ち、大きな看板にお詫びして南下します。
(12:15)




 折り折りの登山道を降ると十字路に変わった道標。このA3から直進してA2に向かい、更にA1へとつなぎます。
(12:45)





 峠から標高を350m下げますが、良く整備された道でおまけに傾斜も優しい。A1の道標で海岸方面へ向かうと‥




 キャンプ場のように広い平地。作業小屋を左手に見て進めば潮騒が近づく。神社もあり50年前まで人家があったそうです。
(13:00)



 芦浜池は海跡池ですが、口に含むと塩分濃度は極めて薄い。池沿いのウバメガシの樹林帯は歩きやすくなっています。

 中央が姫越山です。さあ、浜辺に出ましょう。
(13:10) 

この500mほどの浜は背後に姫越山、両サイドが絶壁で囲まれています。
この浜へ来るには、車道がないので山道を歩くか、船しか方法はありません。
体力が要りますが、泳いでくる方法もあります。アカウミガメは、そうして毎年上陸します。

左に3人の人影が見えます。登山の先着者でランチを終えたようです。
おや、一人が裸になって海に入りました。中高年でも元気な人は元気だ。
 私たちは、砂浜に座って潮風ランチ。
(13:20)〜(13:45)




 帰路は、浜を歩き芦浜池からの流れをまたぎます。堰堤を突き当りまで歩くと登山口。満腹後の急登が待ちかまえている。
(13:50)




 15分の登りで済みました。姫越山への分岐を浅間神社方向へ。標高130mから200mまで緩く山腹道を登り、緩く降ります。
(14:20)




 危険個所にかけられた橋は新しいもの。歩きやすい道を更に進むと展望台分岐を通り過ぎ、錦中学校分岐から南下します。
(15:00)



 10分降ると堰堤に出合います。集落の車道を歩くと錦中学校が何か変です。張り紙が、この3月末の閉校を知らせていました。

 岩壁のお絵かき水族館を楽しみながら海岸沿いを行きます。

駐車場手前の錦大橋からの姫越山。登り始めは左の峰へ向かいました。
地元の83歳のお婆ちゃんと立ち話をします。昨年姫越山に3回も登ったそうです。
元気な人が、ここにもいます。
(15:45)


東海岳行
  “名乗るほどの者じゃない人”   

 
大道草31では旧友が、交通事故に遭遇した話を語ってくれました。彼が被害者の人を救い、名前を尋ねられると『名乗るほどの者じゃありません』と去っていく。今回の道草は、その遭遇記の続きです。

 食事をしながらビールを勧めます。舌が滑らかになった彼は次の話をしてくれました。



 その時、片側一車線の道は夕方だった。俺の車の10mほど前を原付バイクが、50kmのスピードで走っている。わき見をしてたのか突然、バイクは縁石に乗り上げ横倒しになった。運転者は、その勢いで飛びあがり歩道に落とされる。

 大丈夫か?俺はスピードを緩め左を見る。うつ伏せになったままだ。車を停めようと思ったけど道にはそのスペースがない。こんな時は怪我の具合が心配なので急いで救急車を呼ぼうと思った。俺はケイタイを取り、119番に通報した。

 先に路肩に停められそうな所があったので寄せると‥どこからきたのか白バイが前に回り込んできて驚いた。若い警察官が下りてきて『運転中にケイタイかけていましたね』と言う。『そうだけど事故があったので急いで救急車を呼ぶためだ』『事故は見てません。免許証を見せてください』



 取り締まりと事故処理とどっちを優先するのかと言いたかった。白バイは、俺の車の右を並走したので事故の死角になったようだ。しょうがないので免許証を提示して『少し戻ったところで人が転がっている』と訴える。二人でそちらへ急ぐとバイクの若い人が起き上がるところだった。

 大丈夫だと言うけど間もなく救急車が来るので病院で診てもらった方がいいと伝える。そして事故救助をしたのに違反は納得いかない。白バイと警察署で話すことになった。点数は1点だけど7千円の反則金も痛いし理不尽だろ。そこで一部始終を聞いた担当の警察官が『今回は無かったことにしましょう』と言ってくれた。

 事故に遭遇すること自体が珍しいのに交通違反と絡むとは‥彼は、よくよく希代の星のもとに生まれたのかもしれません。おっと話を続けているうちにビールを3本も開けてしまった。

2009.05.02(土)22:00