大31 “遭遇” | |
長い時間かかりましたが、ようやくウィルスの沼から脱出できました。先週金曜日に38.4度の高熱でダウン。頭、喉、胸、そして胃と戦いの場が毎日のように移り、数多の菌に苦しめられました。点滴も2回打ちましたが、身体も発熱という最終兵器を3度も使うほど、こん回の風邪菌は私にとっては強豪でした。 さて沼にプカプカ浮いていた脳も少しづつ乾いてきたようです。3連休に遠い山を予定していましたが、残念ながらキャンセルとなりました。そのため岳行ノートはお休みですが、大道草を作りましたのでよろしかったら拝読いただければ嬉しいです。 1.食事 『ヨー、久しぶりに飯でも食べようか』と旧友の社長から電話がかかってきました。私の小・中学校の同級生で昨年の“道草”(道草:P玉の行方 &事件)の彼です。食事をしていると話がしたくて仕方がないっといった様子。また面白い話が聞けるかと私もちょっと“ワクドキ”です。 『最近、商売どう?』『ダメだね。大きいのは全然ない。仕方がないので個人のリフォームの仕事を回してもらっている』彼の本業はビルの内装業です。今が我慢のし時でしょう。景気の悪い話ばかりしてても食事はうまくありません。ビールを勧めて口を滑らかにさせてみましょう。 『何かいい話はないの?』と誘う。『おう、いい話じゃないけどそういえばここ一年で俺さあ、事故に5件も遭遇したんだ』『自分が事故に合わなかったのは不幸中の幸いだ』『まあね』そして彼の話が始まりました。 2.県道 日曜日に県道を走っていたら、欄干に車体をぶつけた軽自動車が止まっている。俺は車をその手前で止め、ハザードランプを点けて下りた。おじいさんが外でぼーっと立っている。車は左前をぶつけていた。大丈夫ですかと声を掛け、車内を見ると助手席におばあさんが挟まれたままだ。 ドアは、グチャグチャで一人ではとても開かない。県道を車がビュンビュン通り過ぎるけど誰も止まらない。みんな冷たいなあ。俺はケイタイで119に連絡してあげた。まもなく救急車のサイレンが聞こえてきたので発煙筒を焚く。おばあさんは、シートベルトをしてなくてフロントガラスで顔を切っている。 車から救出しようと救急隊が四苦八苦していた。俺は車のこと詳しいだろ。そこでおじいさんに了解を得て、後部ドアを開けバックシートを取り外した。それでようやく救急隊が、おばあさんを引き出す。もちろん生きてるけど足が折れていたなあ。 救急車におじいさんが乗る時『お名前と連絡先を教えてくだされ』と俺に聞いてきた。『名乗るほどの者じゃありません』と答えて車に戻ったんだ。『お前らしい、かっこいい』 3.スーパー 仕事が終わって夜10時ころ、雨が降る中、家の近くのスーパーの前を走っていた。その駐車場の前でワンボックスと軽自動車が、ぐちゃぐちゃになって転がっている。察するに視界が悪い状況で駐車場から出たワンボックスが、道路を走る軽の横腹に突っ込んだようだ。 たった今、事故をした様子で俺も車を止めて傘をさしながらドアを開けた。軽のホーンが、けたたましく鳴りっぱなし。その車の外でおばちゃんが、二人寄り添って立ち尽くしている。ワンボックスの女性は、ケイタイで警察に電話をしているようだ。おばちゃん二人に傘を貸してあげ様子を聞いていると間もなくパトカーが来た。 おばちゃんが鳴り続くホーンに動揺して『止めて!』と若いお巡りさんに頼むけど止め方を知らないと言う。俺は車のこと詳しいだろ。そこでおばちゃんに『壊すけどいいか?』と了解を得てコードを引きちぎってやる。やっと街は静かになった。2人はペコペコ俺に頭を下げて『お名前と連絡先を教えてください』と聞く。 『名乗るほどの者じゃありません』と答えて帰った。『かっこいい‥けど傘は?』『そうなんだ。傘を一本損した』 4.林道 その日は、次の仕事先に急いでいた。ナビを距離優先にして指示通りの道を走る。やがて車一台がやっとの道幅になり、街路灯もガードレールもないひどい道になってしまった。周りは植林で薄暗い。おまけに右は山を削った崖、左は奈落の谷底だ。今さらUターンもできないしゆっくり進む。 (それは林道だ。そういう道は私が彼の何千倍も走っている。けど、話を割ってはいけない) で、しばらく行くと道が左カーブしている。前方に軽自動車が崖側に止まっている。谷側は少し開いているけど絶対俺の車が通れる道幅ではない。しょうがなく下りて車内を覗く。誰も乗っていない!けどキーは刺さってる。 前に回ると驚いた!車体と崖の間におじいちゃんがうずくまっている。『どうしたのですか?』と尋ねると小声で『左の谷に気を取られ右へ寄り過ぎて前輪が溝に落ちちゃった。慌てて外に出てタイヤを出そうと車体を持ち上げたら腰が砕けた』と苦しそうに言う。 そりゃ700kgの重量はあるだろう。若い者でも絶対無理だ。おじいちゃん、無茶するなあ。お蔭で俺は、救急車とJAFを呼ばなくてはならなかった。しかし最初見たときは、事故で車に挟まれたかと思いほんとに驚いた。ビックリ腰とはなあ。 (確かに驚いただろうがギックリ腰だ!と突っ込みたいけど話の流れを遮ってはいけない)まだまだ彼の話は続きそうです。全部済むまで、あとビールが何本いるかな? ※この続きは、09/4/30姫越山“名乗るほどの者じゃない人”をご覧ください。 |