岳行ノート

八経ケ岳 1915m/奈良県天川村

2010年7月5日(月)


大峯奥駆道のバイケイソウ





 八経ケ岳(ハッキョウ)1915mは、百名山大峰(オオミネ)の最高峰で近畿の最高地点でもあります。また登山ルートの大峯奥駆道は世界遺産に登録されています。

 自生するオオヤマレンゲはこの時期に咲き、国の天然記念物です。梅雨花なので多くのHPを拝見しましたが、晴れの日のレポはほとんどありません。

 せめて雨ではなく曇りの日にと天気予報を日々確認し出かけるチャンスを窺がいました。車で4時間かかる距離なので先月の観音峰と同様に前夜泊します。



 教科書は、山と渓谷社刊「関西周辺の山250(改訂版)」です。参考書として多くのHPにお世話になりました。 
<駐車地>
[-]広域図、[+]詳細図、ドラッグスクロールで移動


行者還トンネル西口P

大峯奥駆道出合

弁天の森

聖宝の宿跡

弥山小屋

弥山

オオヤマレンゲ自生地
(扉)〜(扉)

八経ケ岳

行者還トンネル西口P

 ※赤線はGPS軌跡


■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第98号)」


江  南:前日午後5時40分発  29℃晴れ
道の駅吉野路黒滝:午後9時25分着 22℃
駐車地:午前7時00分着  20℃曇り
往:4時間35分(八経ケ岳まで以下、小休止含)
復:3時間20分 
◆所要時間:7時間55分

名阪国道の針インターから南下、4時間近くかけ奈良県黒滝村の「道の駅 吉野路黒滝」へ。
駐車場でホタルが飛んでいたのには驚きました。翌朝5時半に起床し天川村を走ります。
国道309号線で紅葉の有名な御手洗(ミタライ)渓谷に入ると超厳しい一車線道です。左のトンネルを潜り‥




 酷道を30分、行者還トンネル西口の標高1100m駐車地に到着。もう10台停車しています。左が登山口です。
(7:15)




 行者還岳(ギョウジャガエリダケ)の登山口を見送り、沢の三角橋で左岸へ渡れば尾根の急登です。曇り空で蒸し暑さ充分。
(7:20) 


 おびただしいシャクナゲ、苔むす岩、ブナの古木。おびただしいハルセミの鳴き声。周りは素晴らしい自然ですが‥

 息が上がるのは標高1400mのせい?いけません、休憩して帽子を忘れました。頭にタオルをキムタク巻でしのぎます。

 『これは変わったヒメシャラだ』




 稜線の奥駆道出合で急登終了。もうポカリを300ccは飲んだでしょう。でもここから余裕のヨッチャン道です。
(8:30) 

1000年の歴史を越え、引き継がれてきた大峯奥駆道は修験者の修行の道。
過酷で厳しい行場の合間に突然出合う美しい緑の森では息をついたでしょう。
私も険しい道を歩んできたのでこの森でひと息つきます。口臭を漂わせ‥



 奥駆道出合から100m高度を増やすと石休の宿跡・弁天の森1600mです。三等三角点にタッチして先を急ぎます。
(9:00)

 修験の教団は「不殺生・不抜木」を厳格に守り続けました。そのお陰で自然環境が残っています。
 



 理源大師の青銅坐像がある聖宝の宿跡。この下駄で山歩き?休憩中、コバエと思ったら刺されたのでアブです。

 タオルを巻きなおし、この先に待ち受ける急登に向かいます。
(9:45)


 降りて来たカメラマンにオオヤマレンゲの様子を尋ねるとが『ダメ、少しは咲いてるよ』遠くから来たんですよ。

 ジグザグと高度を上げますが、この割木階段がとても親切クンです。120cmと幅広で高さ・間隔が抜群のセンス。

 そして最後に鉄階段を上ると‥
 


 大きな弥山(ミセン)小屋前ではパーティーがランチ中。08年4月にできたチップ制トイレ(100円)は、山小屋のようです。
(10:55)


 広場の鳥居を潜ると皇太子殿下行啓の記念碑があります。左には目指す八経ケ岳が望めますが‥

 『立ち枯れの木が多いな?』その少し先に‥
 

 弥山1895m山頂の天河大弁財天社奥宮。水の神様を祭っています。
(11:00)

 「平成5年6月14日(晴れ)皇太子殿下が随行員百十数人と山上ケ岳から奥駆道を南下して縦走をされました。

 行者還小屋で休憩し300m先のお花畑でランチ後、弥山小屋で宿泊し翌日北下して天川川合へ下山されました」

 

そして弥山小屋前から南へ進みます。70m降って鞍部へ来るとオオイタヤメイゲツだらけ。
カエデの中でこのような狭い範囲で純林を作るのはこの木だけ、自然界の謎です。
枝に地衣類が付いて和風模様。秋には葉が、黄色〜橙色〜紅色と様々な色に変化します。




 そこに防鹿ネットがあり、鹿の食害から天女花を守るため広い範囲を囲っていました。無施錠の扉を引き入ります。
(11:25)



 天川村役場のHPでは、週末7/3〜4は3、4分咲きの開花情報でした。現場では今日の7/5で1〜2分咲です。

 今週末に登られる方は羨ましいですね。それでも撮影するには充分な花数で登り坂を忘れるくらいです。 
 
ひっそりと咲き清楚で優雅な姿は天女花とも呼ばれます。モクレン科でホオノキコブシが親戚。

花は横向きかやや下向きにつき、直径5〜10cmの柔らかい花びらで甘い芳香がします。

雄しべ・雌しべが沢山ありますが、赤色が雄しべです。














明治時代、日本にオオヤマレンゲの自生はないとされていました。故白井博士は古書を頼りに釈迦ケ岳弥山の間でこの花を発見したのです。 地元ではビヤクレンゲでしたが大峯山系の名を取りオオヤマレンゲと呼ばれるようになりました。昭和3年に国の天然記念物に指定されます。



夢中で撮影をしながら歩いて行くと15分ほどで出口の扉に着き‥

 ひとガンバリすれば錫杖の立つ八経ケ岳1915mです。晴れた日には富士山、熊野灘、大阪湾の遠望ができます。

 今日は白い海に浮かぶ頂き。独りで沢山のコバエにたかられランチしました。
(11:50)〜(12:10)

 役行者(エンノギョウジャ)が法華経八巻を納めたことで八経ケ岳。山頂は天川村と上北山村にあります。

 それぞれの山名があるようで八剣岳仏経岳とも呼ばれます。
 



 帰りもオオヤマレンゲの魅力に取りつかれ自生地でシャッターを押しまくり。そして扉を出て北西の山肌を見ると‥

 縞枯山で見た縞枯現象ではないですか。カラマツの薫りもして北八ケ岳によく似た雰囲気。
 



 戻った広場は一面のスギ苔で京都の寺庭のようです。手前の木は鹿の食べられました。青い腹巻をすれば大丈夫。
(12:50)

 往きに見つからなかったショウキランを探しながら下山しましょう。


往きは稜線を奈良県の男性二人とご一緒し15分毎の休憩も付合いました。
お陰で奈良山の情報はたっぷり。帰路は大阪のご夫婦と歩きました。
そうそう登り始めの休憩で忘れた帽子はちゃんと→→→



結局、ショウキランは見つかりませんでした。(弁天の森付近に咲くようです)
でも途切れなく続くこの自然林と別れるのは残念。駐車地に着くと後ろから滝音が聞こえます。
朝走った狭い国道は避け行者還トンネルを東口へ抜けて広い道で帰りましょう。4時間ドライブどすえ〜
(15:30)


東海岳行
   “一万の乱舞  

 虫は嫌われもの。の吸血、セミの騒音、ゴキブリの不気味さ‥しかし“ホタルの光”これは別格です。「道草:光の旅」で表したように私はホタルに思い入れがあります。私の知っている限りですが、生息地bPは長野県辰野町です。ここ何年も計画倒れになっていたので今年こそはとやる気を奮い立たせました。

 中央道伊北インターで下り、県道19号線(岡谷街道)で7km北上します。中央線の高架を下ると左が「ほたる童謡公園」です。左折すると誘導員に案内され駐車料1000円を払い停車します。

 ここが一番近い駐車場なので料金は倍になっています。他の駐車場は20〜30分歩かなければなりません。土日の人出は、目を覆うばかりなので平日にしました。



 江南市の我が家から2時間余り18時10分着です。この特別駐車場は収容100台ですが19時までに満車になります。まだ外は明るいのでホタルの生息地松尾峡まで行ってみましょう。

 駐車場を出るとすぐ天竜川に当たり、橋の手前で協力金300円を自販機で二人分購入。橋を渡れば、チラホラとホタルが舞う歓迎に嬉しくなります。

 松尾峡
は、標高730mで標高差20mの斜面が整備された「ほたるの里」です。上地図を拡大「+」すると水路がアスカの地上絵のように流れています。



 ゆっくり歩いて一周10分ほど。展望デッキから全景が見渡せます。通路は十分広いのですが、土日はホタルより多い人が訪れます。離れた駐車場から往く人帰る人と道は大混雑、ここへたどり着くには1時間必要です。

 ホタルが光をともして生きるのは1週間くらいでとてもはかない。蒸しっとして風のない日が良く舞います。辰野町のHPをチェックし、日程を考えました。

 日々のホタル発生状況と過去のものとを比較し今日と決定。 今宵こそ一万匹の乱舞が見られると思いますが、長袖でもいいほどの肌寒さなので心配です。



 まだホタルの舞う20時には余裕があるので駐車場に戻り、車内でコンビニ・ディナーをします。係の人に今まで最高の発生数を尋ねると15000匹とのこと。

 そのカウントは4人でエリアを決め、20時から1時間行われます。エサのカワニナは購入するのですが、協力金や駐車料金だけでは賄いきれないようです。

 何しろホタル1匹が、一生で何千匹も食べます。と、駐車場はすでに満車、気温は23℃出かけましょう。切符を提示して再入場します。目に飛び込む無数の光。気温が低いため舞い上がるホタルは多くありません。淡い光を見ていると繊細な生命の尊さが伝わります。



 私のカメラを暗闇モードにして撮ってみますが、とても残念なことにのすごさは表現できません。カウントしている方を発見しました。フラッシュは禁止なので軍手にカウンターを握っているところを撮影させてもらいました。

 遊歩道を何周もします。これほどのホタルを見られるという幸福感がこみ上げてきます。ひよこさんが早速「道草:光の旅」に出て来た娘に電話して興奮気味に話すけど言葉で伝えられません。こんどは家族で来てみましょう‥

 なぜなら私達が訪れた6月23日(水)、この夜のホタル発生状況を後日確認したら8900匹、その2日後に本年最大の13500匹!!! 次こそ一万の光の乱舞を見てみたい。


                            空から見た
                       「ほたる童謡公園」
10.07.07(水)13:10