大台ヶ原(日出ヶ岳）　1695ｍ/奈良県上北山村

2010年10月13日(水） 大蛇�ｰ（ダイジャグラ）：奇跡の紅葉 強い風、強い雨、岩頭に木が根付くまでの歳月は計り知れません 過酷な環境を乗り越えた植物の生命力を間近に見るとわくわくします
低山の紅葉見頃情報が寄せられるようになりました。大台ケ原もウエーザーニュースの紅葉情報では、10/12は「色づき」でしたが、夜になり突然「見頃」になったのです。 　天気予報も「時々晴れ」から「晴れ」に変わっています。これは絶好のチャンス。我が家から220ｋｍの距離があり、4時間以上かかります。早朝出発の睡眠不足はいやです。 　急いで車のバックシートをアレンジし、お泊まりセットを積み込みます。前夜泊の態勢を整え出発。大台ケ原は国立公園でハイキングコースは手厚く整備され快適です。 　7年前の初秋、ひよこさんと初めて訪れたとき素晴らしいコースと迫力の絶景に大感動。そのころは百名山ということは知りませんでした。 　教科書は山と渓谷刊「関西周辺の山250」、参考書は「近鉄てくてくまっぷ大台ケ原回遊コース(PDF)」です。	<駐車場> [-]広域図、[+]詳細図、ドラッグスクロールで移動

駐車場 ↓ 登山口 ↓ 展望台 ↓ ▲日出ヶ岳 ↓ 正木峠 ↓ 正木ヶ原 ↓ 尾鷲辻 ↓ 牛石ヶ原 神武天皇像 ↓ 大蛇�ｰ ↓ シオカラ吊橋 ↓ 登山者カウンター 山の家 ↓ 駐車場 　※赤線はGPS軌跡 ■「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000（地図画像）、数値地図25000（地図画像）及び数値地図50ｍメッシュ（標高）を使用したものである。（承認番号　平17総使、第98号）」

江 　南：前日午後7時15分発 　　　24℃晴れ 駐車場：前日午後11時10分着　 　11℃ 当 　日：午前5時45分起床　　　　　12℃晴れ後曇り	往：1時間00分（以下、小休止含） 復：3時間45分 ◆所要時間：4時間45分
大台ケ原(ｵｵﾀﾞｲｶﾞﾊﾗ）に新しい朝が来た、希望の朝が来た。 未明、目が覚めた時は全面朝霧でどうなるかと思ってましたが、青空が元気に広がってきました。 駐車場のハウチワカエデが見事に色づいています。最高の逍遥日和です。（逍遥：ぶらぶら歩くこと）
撮影したり車を移動したり、のんびりしすぎました。朝焼けの駐車場を出発。車はまだ10台ほどです。 （7：25）	前回は駐車場内にあるビジターセンター左横から歩きました。今日は苔の字に惹かれ苔探勝路から行くのでドライブウェイを少し戻ります。
コンクリート遊歩道を歩くと林床は、背の低い笹に覆われ残念なことに苔蒸す場所は殆どありません。 　防鹿柵で全周が囲われています。また出入口には鹿の進入を防ぐ網目階段。脚が隙間にはまる仕掛けです。
15分で山頂に向かう道に合流し、幅広の地道を進みます。周囲は次第に紅葉模様となり、石段で高度を上げると‥
熊野灘を望む展望台テラスに出ました。 寄ってみましたが海は東方向、まともに朝日を受ける逆光です。 山頂への道に戻ると、しっかりとした木の階段が上に延びています。 （8：10）
ほどなく日出ヶ岳(ﾋｼﾞｶﾞﾀｹ）1695ｍ山頂展望台。さえぎるものない360℃の大パノラマです。運がいいと富士山も見えます。 　大台ヶ原の山頂部は台地状で最高峰が日出ヶ岳です。すぐ北西に三津河落山（ﾐﾂｺｳﾁﾔﾏ)1654ｍピークがあります。 　山名が示すように、ここは吉野川、熊野川、宮川の源流の地です。 （8：25）
山頂展望台から南東に尾鷲湾。右端奥薄いシルエットが八鬼山628ｍ、中央薄い台地が天狗倉山522ｍです。 　世界遺産熊野古道で有名。八鬼山のペンキ抗議文は昨年7月に消去されたようです。いつか歩いてみましょう。
目を転じると大峰連峰、これまた世界遺産の大峯奥駆道(ｵｵﾐﾈｵｸｶﾞｹﾐﾁ)の稜線が望めます。 写真中央奥の凹んだ稜線のつくんっとした小さな尖峰が行者還岳(ｷﾞｮｳｼﾞｬｶﾞｴﾘﾀﾞｹ)1546ｍ。 その左の高いピークが弥山(ﾐｾﾝ）1895ｍ、左隣のピークが八経ヶ岳1915ｍ、近畿の最高峰です。
山頂から階段を降っていくと向かう正木峠（ﾏｻｷ：左ピーク、正木嶺とも）が、華やかな秋色のモザイク。 こうなると写真を撮るのが楽しくて仕方ありません。しかし帰って選ぶとき、悩むことになります。 展望台テラスの分岐を過ぎると、すぐ幅広の木製階段が始まりました。
正木峠では、シロヤシオの紅葉とトウヒ（唐桧：エゾマツの変種）の立ち枯れが目立つようになります。 　シロヤシオは6月初旬が見ごろです。振り返れば、日出ヶ岳が北に見えます。 （8：50）
延々と続く階段の下に堀状の登山道が覗けました。 2001年発行のガイドブック掲載の写真では、この木製階段はありません。 山が荒れるのを防ぐため手間とお金をかけて作られたのでしょう。さすが国立公園の予算はすごい。 ここ正木ヶ原（ｼｮｳｷｶﾞﾊﾗ)の原生林は、昭和34年の伊勢湾台風で樹木がなぎ倒されました。 　すると日が差す林床にミヤコザサ（イトザサ）が繁殖し、それを餌にする鹿が増えたのです。 その鹿が残ったトウヒの樹皮を食べ、大台ヶ原における象徴的な光景となりました。 （9：15）
尾鷲辻の登山道合流点に着くと空腹感が音を発します。本日午前4時に賞味期限切れしたお握りを東屋で食べました。 （9：35）
ミヤコザサの広大な平原、牛石ケ原（ｳｼｲｼｶﾞﾊﾗ）からは石畳の道です。 　昔、この牛石が人々を困らせた牛鬼を封じ込めたという言い伝えがあります。 　その石を見張るため近くに神武天皇の像が建てられました。 （10：00）
まもなくミズナラの大木が待つ大蛇�ｰとシオカラ吊橋との分岐です。ここから300ｍ先にある本日のハイライト‥ （10：10）
大木を過ぎ大岩を回り込み、梯子を登れば大蛇�ｰ。 傾斜があるので緊張しますが、鎖の柵があるから先端まで行けます。 下を流れる東の川まで800ｍの断崖絶壁です。 日出ヶ岳山頂で望見した大峰の峰々が遠い。大蛇�ｰとは良く命名したもので恐ろしさが伝わります。 改めて地形図(下図）を見ると、まるで蛇が谷底へ降りて行くようです。 対面の山から見れば、大蛇�ｰをそのように見えるでしょうか。左の水色が東の川です。 （10：20） この写真でも少し写っていますが、岩場先端の柵から更に先を撮ったものがTOP写真です。
絶景を充分堪能して分岐に戻り、シオカラ谷へ向かいます。途中はシャクナゲの大群生で5月中旬〜は花に囲まれるでしょう。
沢音が聞こえたら岩道の急降下となりシオカラ吊橋に出ました。 このシオカラ谷の奥で生まれたしずくは東の川で集合します。 大蛇�ｰの下を流れ、熊野川へ出て太平洋で塩分を得たら海水です。 折角ですからそのしずくたちの近くでランチにしましょう。 大台ヶ原は個人用コンロは使用禁止と思っていたので持って来なかったのですが‥ 調べると3年前、協議会で環境省が禁止対象外と述べています。でもラーメン汁を捨てるのはNGですね。 （11：20）〜（11：50）
ふわふわと吊橋を渡ると急登の石段が待ち構えています。山腹の大岩を巻くとこの案内板。ここから最後の石段急登を‥ （12：05）
10分ほど頑張れば緩やかな道となり、楽しかった逍遥の終わりが近いことを知ります。左には張り巡らされ防鹿柵。ミズナラの巨木を過ぎ‥	この入園者カウンターを見て「大台山の家別棟」との分岐点です。見に行きましたが、チェックインは15時なので閉まっていました。
11時過ぎから曇りがちになり、駐車場に着くとすっかり曇り空。逍遥中は太陽に恵まれ、400回近くシャッターを押しました。 （12：40）
東海岳行
“真夜中の確信”
大台ケ原へ行くには国道169号線を南下し、大嶽トンネルを抜け700m先で右折(下図ｱｲｺﾝ）します。そこからが大台ケ原ドライブウェイです。ここは列島改造で突き進んでいた昭和36年に開通し、最初は有料道路でした。お陰で秘境だった大台ケ原が、誰でも楽しめる観光の山に変貌します。 　20年後に無料化され、今では気軽に20ｋｍの山岳ドライブが楽しめます。しかし紅葉見頃の10月週末になると朝8時前には、約200台が駐車場に入り超満車状態。 　路肩には観光バスも含め400台以上が連なるほどです。そのため行政では上高地や乗鞍岳のようなマイカー規制の調査を行っています。 　7年前にひよこさんと来た時も当然、このドライブウェイを利用しました。夜中の11時過ぎ暗闇の道に入ると始めはよくある林道で道幅も広くありません。 　数分で安心幅の2車線になります。20分くらい走ると斜面に動物が一頭いて驚かされました。もう少し走ると『あ、またいた！』きっとまたいる、カメラを用意します。 　次にカーブを曲がると谷側の路肩に広いスペース。『お〜！』ただ事ではありません。20頭以上がライトに浮かび道に立ち並んでいます。『カメラ！』ひよこさんから受け取り電源をオンする間に闇の中へ走り去ったのです。思い出だけが残りました。 　さて大台ケ原は昔、大平（ｵｵﾀﾞｲﾗ）と呼ばれ、それが大平原となり大台ケ原と変わったと言います。その名のように大台ケ原は大きな平らの台地です。 　その西方に位置する吉野の大峰山は1600年前、役行者(ｴﾝﾉｷﾞｮｳｼﾞｬ)により開山されました。大峰山から大台ケ原を目にした修験者たちが、開山しようと試みましたが失敗して山から帰ってきません。そのため長い間「魔物の棲む山」と恐れられた秘境だったのです。大台ケ原は険しい崖や深い森に囲まれています。 　またトップクラスの多雨地帯（国内年間平均降水量1700ｍｍに対し、大台ケ原5000ｍｍ）のため天候が変わりやすく、容易には近づけない山だったようです。現代のドライブウェイはありがたいですね。空いていれば30分で容易に山上駐車場に着けます。 　大台ケ原の山上台地は、国が土地を買い上げた日本最初の国立公園地域です。昭和48年に買取が始まり、この地特有の原始の森は辛うじて残されました。平成15年ようやく難航した大蛇�ｰの買収を最後に山上台地は国有地になったのです。 　今回、22時40分ドライブウェイに確信を持って入りました。単独なのでカメラを助手席に置きます。駐車場まであと5ｋｍ、急に1頭がライトに浮かぶ。慌てて停車しカメラを取る。太い身体、ビッグな角、こちらに向かってのし、のし、のし、、、車の横を通り闇に消えました。短時間過ぎて撮影できません。これはまずい。 　カメラを太ももの上に置きます。すぐ斜面にいる1頭と出合い電源を入れると駆け上がってもういません。これではいつまでたってもだめです。カメラ電源をオンしたままダッシュボードに置きゆっくりゆっくり走ります。記憶に残るあの広い路肩スペース‥ジャーン！いました、いました。 　残念なことにあの夜のような大軍団ではありません。今夜は斜面に3頭です。1頭は上に駆け上がりましたが、ようやく2頭が記録に残りました。フラッシュはたかず、車のライトのみで撮ったのですが、言わずと知れたピンボケ写真です。

10.10.17（日）23：15